COVID-19患者の致死的転帰に対する心血管への影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32219356/ 

タイトル:Cardiovascular Implications of Fatal Outcomes of Patients With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19)

<概要(意訳)>

背景:

COVID-19患者は、多くの国で増加しており、死亡率も増加している。

しかしながら、致死的転帰に対する心血管合併症の影響に関する情報は、ほとんどない。

我々は、基礎疾患の心血管疾患(CVD)と心筋障害の有無が、COVID-19患者の致死的転帰に与える影響を評価した。

方法:

2020年1月23日から2020年2月23日の間に、武漢の第7病院に入院したCOVID-19患者のデータを後ろ向きに分析した。分析は、2020年2月25日に開始した。

人口統計、検査所見、併存症、治療のデータを収集し、心筋トロポニンT(TnT)値の上昇の有無による臨床転帰の影響等も分析した。

結果:

COVID-19患者の187人の内、144人(77%)が退院し、43人(23%)が死亡した。 平均(SD)年齢は、58.50(±14.66)歳であった。

全体として66人(35.3%)は、高血圧(32.6%)、糖尿病(15.0%)、冠動脈心疾患(11.2%)、癌(7.0%)、心筋症(4.3%)、CKD(3.2%)、COPD(2.1%)などの基礎疾患があり、52人(27.8%)は、TnTレベルの上昇を示す心筋障害が認められた。

院内死亡率は、下記の4群で比較検討した。

「CVDの基礎疾患なし&TnT正常」群で、7.62%(8/105人)であった。

「CVDの基礎疾患あり&TnT正常」群で、13.33%(4/30人)であった。

「CVDの基礎疾患なし&TnT高値」群で、37.50%(6/16人)であった。

「CVDの基礎疾患あり&TnT高値」群で、69.44%(25/36人)であった。

基礎疾患のCVDがある患者は、CVDがない患者と比較してTnT高値を示す割合が高かった[36人(54.5%) vs 16人(13.2%)]。

全体における、TnT(ng/mL)と高感度C反応性蛋白(hsCRP、mg/mL)(β= 0.530、P <.001)、およびN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)とTnT(ng/mL)(β= 0.613、P <.001)は、正の強い相関関係が認められた。

致死的転帰となったCOVID-19患者における入院中[中央値:0.307(四分位範囲:0.094-0.600)]と死亡時のTnT[0.141(0.058-0.860)]は、入院時[0.0355(0.015-0.102)]と比較して有意に高かった(それぞれ、p=0.001、p=0.001)。

致死的転帰となったCOVID-19患者における入院中[1902.00 (728.35-8100.00)]と死亡時のNT-proBNP[5375(1179.50-25695.25)]は、入院時[796.90(401.93-1742.25)]比較して有意に高かった(それぞれ、p=.03、p<.001)。

一方で、生存したCOVID-19患者における入院中[中央値:0.013(四分位範囲:0.007-0.022)]と退院時のTnT[0.011(0.007-0.016)]は、入院時[0.010(0.007-0.01)]と比較して有意な差はなかった(それぞれ、p=.81、p=.96)。

また、生存したCOVID-19患者における入院中[中央値:433.80(四分位範囲:155.80-1272.60)]と退院時のNT-proBNP [145.40(63.4-526.50)]は、入院時[352.20(174.70-636.70)]と比較して有意な差はなかった(それぞれ、p=.45、p=.16)。

入院中にTnT高値となった患者は、正常値の患者と比較して、心室細動/心室頻拍(9 [17.3%]vs 2 [1.5%]、p<.001)、急性呼吸窮迫症候群(30 [57.7%]vs 16 [11.9%]、p<.001)、

急性凝固障害(25 [65.8%]vs 17 [20.0%]、p<.001)、急性腎障害(14 [36.8%vs 4 [4.7%]、p<.001)の合併症が多かった。

また、グルココルチコイド療法(37 [71.2%]vs 69 [51.1%]、P=.01)と人工呼吸器(41 [59.6%]vs 14 [10.4%]、p<.001)の使用が多く、院内死亡率が高かった(31 [59.6%]vs 12 [8.9%]、p<.001)。

ACE阻害薬/ARB使用の有無[36.8%(7/19)vs 21.4%(36/168)]における死亡率には、差がなかった(p=.13)。

結論:

心筋障害はCOVID-19患者の致命的転帰と有意な関連があるが、基礎疾患としてCVDを伴うが心筋障害がない患者の予後は比較的良好であった。

心筋障害は、心機能障害と心室頻脈性不整脈に関連しており、炎症が関与している可能性がある。心筋障害リスクが高い患者には、積極的な治療が考慮されるだろう。

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