SGLT2阻害薬における急性腎障害の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31050116/

タイトル:Acute kidney injury with sodium-glucose co-transporter-2 inhibitors: A meta-analysis of cardiovascular outcome trials

<概要(意訳)>

背景:

2016年6月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、SGLT2阻害薬で治療されている糖尿病患者の急性腎障害(AKI)リスクに関する警告を強化した。

これは、SGLT2阻害薬として最初に承認されたカナグリフロジンの2013年3月~2015年10月までにFDAに報告された101症例のAKIが端を発している。

SGLT2阻害薬による治療が開始された最初の数年間は、安全性に関する懸念が議論の中心であったが、3つの大規模な心血管アウトカム試験(CVOT)で実証されたプラスの効果が大きく注目されるようになった。

しかしながら、注目されることが少なくなったものの、AKIの発症は珍しくなく、しばしば致命的になることに注意が必要である。

方法:

本研究では、システマティックレビューおよびメタ分析のPRISMA声明に従い、2019年2月までに実施されたSGLT2阻害薬の全てのCVOTにおけるAKIの報告に焦点を当てた。

その結果、2018年9月までに発表された3つのCVOTである、EMPA-REG 試験、CANVAS試験、DECLARE-TIMI 58試験が分析対象となった。

各試験におけるAKI発症の報告方法の違いを考慮して、治療効果の最も適切な推定値としてハザード比(HR)を選択した。

結果:

分析対象の大規模臨床試験によって、AKI発症の報告方法(発症率、発症数/1,000人/年 )は異なるが、AKIおよびCKD進行イベントの発症頻度は類似しており、SGLT2阻害薬群とプラセボ群との差の大きさも同様であった。

Diabetes Obes Metab. 2019 Aug: 21(8): 1996-2000.

本研究のメタ解析における全体のハザード比(HR)は、[HR 0.66(95%CI 0.54-0.80)]となり、AKIの発症リスクは、プラセボ群よりもSGLT2阻害薬群で有意に低下していることが示された。

DECLARE-TIMI 58試験とEMPA-REG試験のハザード比は、それぞれ、

[HR 0.69(95%CI 0.55-0.87)]、[HR 0.54(95%CI 0.35-0.82)]となり、

95%信頼区間の上限は1未満となった。

しかし、3つの試験の間に異質性は認められなかった。

Diabetes Obes Metab. 2019 Aug: 21(8): 1996-2000.

結論:

本研究におけるSGLT2阻害薬の心血管アウトカム試験のメタ解析では、SGLT2阻害薬の治療によって急性腎障害(AKI)の発症リスクは増加するのではなく、むしろ、AKI発症リスクの低下が示された。

したがって、SGLT2阻害薬のAKIに対する懸念は和らぐ可能性があるだろう。

 

【参考情報】

PRISMA声明

http://jspt.japanpt.or.jp/ebpt_glossary/prisma.html

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