PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34047459/
タイトル:Impact of the initial decline in estimated glomerular filtration rate on the risk of new-onset atrial fibrillation and adverse cardiovascular and renal events in patients with type 2 diabetes treated with sodium-glucose co-transporter-2 inhibitors
<概要(意訳)>
目的:
SGLT2阻害薬治療後の2型糖尿病患者における推定糸球体濾過量(eGFR)の初期低下(イニシャルディップ)の影響を調査する。
方法:
台湾の多施設における医療データを使用し、2016年6月1日から 2018年12月31日の間
、SGLT2阻害薬治療の1~3ヶ月後のベースライン/フォローアップeGFRデータが利用可能な2型糖尿病患者11,769例を対象とした。
SGLT2阻害薬による治療開始日から、「有害事象の発生、SGLT2阻害薬の服用中止、研究期間の終了」のいずれか早い方を患者の追跡期間とした。
結果:
全体における平均追跡期間は13.9±9.1ヶ月、平均年齢は59.0±11.7歳、ベースラインの平均eGFRは88.3±29.2 mL/分/1.73m2であった。
SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジンで治療された患者は、それぞれ、6,513例(55.3%)、5,147例(43.7%)、109例(0.9%)であった。
eGFRのカットオフ値は、CREDENCE試験とEMPA-REG OUTCOME 試験の事後分析で報告された値に基づき、eGFR 低下なし群(G1: n=4,371)、初期eGFRの低下割合が0-10%低下群 (G2: n=3,593)、10-20%低下群(G3: n=2,376)、20-30%低下群 (G4: n=999)、30%超低下群(G5: n=430)に分類した。
一般に、初期eGFR 低下が大きい患者は、「高齢、主に女性、複数の併存疾患、HbA1cレベルが高値」であった。
また、「抗血小板薬、β遮断薬、レニン-アンギオテンシン系阻害薬、ループ利尿薬、インスリン」を投与された患者は、初期eGFR低下の割合が高かった。
一方で、「スタチンとメトホルミン」を投与された患者は、初期eGFR低下の割合が低かった(p<0.05)。
10週間(中央値)におけるSGLT2阻害薬による治療は、全体として3.5%±14.0%の初期 eGFR低下と関連していた。
また、5群における初期eGFRの平均変化は、それぞれ、
G1(eGFR低下なし群):10.6 mL/分/1.73m2
G2(初期eGFR 0-10%低下群):-4.3 mL/分/1.73m2
G3(初期eGFR 10-20%低下群):-13.8 mL/分/1.73m2
G4(初期eGFR 20-30%低下群):-23.6 mL/分/1.73m2
G5(初期eGFR >30%低下群):-35.8 mL/分/1.73m2
となった。
また、各群における平均eGFRの変化は、一般的に、24週以降は安定していることが示された。
SGLT2阻害薬による治療24週からeGFRの最終測定値までのeGFRの平均勾配は、それぞれ、
G1(eGFR低下なし群):-1.84 mL/分/1.73m2
G2(初期eGFR 0-10%低下群):-2.12 mL/分/1.73m2
G3(初期eGFR 10-20%低下群):-1.87 mL/分/1.73m2
G4(初期eGFR 20-30%低下群):-0.84 mL/分/1.73m2
G5(初期eGFR >30%低下群):1.02 mL/分/1.73m2
となり、5群間で有意な差は示されなかった(p=0.516)。
Diabetes Obes Metab. 2021 Sep;23(9):2077-2089.
多変量解析の結果、初期eGFR>30%低下に関連する独立した要因は、「利尿薬またはインスリンの使用、脳卒中、高齢、女性、HbA1c高値、BMI<25 kg/m2」であることが示された。
一方で、「スタチン」の使用は、初期eGFR>30%低下のリスクを低下させる独立した要因であることが示された。
Diabetes Obes Metab. 2021 Sep;23(9):2077-2089.
全体におけるフォローアップ期間中の「心房細動の新規発症、主要心血管イベント(MACE:虚血性脳卒中、全身塞栓症および急性心筋梗塞)または心不全、複合腎アウトカム[血清クレアチニンの倍化、末期腎不全(eGFR<15 mL/min/1.73m2)]」のイベントは、それぞれ、263 (1.93/100人/年)、126 (0.92/100/年)、293 (1.85/100人/年)であった。
SGLT2阻害薬治療後の初期eGFR低下のない患者と比較して、eGFRが30%超の低下を示した患者は、「心房細動の新規発症[aHR 2.20(95%CI 1.40-3.47)]、主要心血管イベント/心不全[aHR 2.09(95%CI 1.04-4.17)]、複合腎アウトカム[aHR 1.82(95%CI 1.18-2.83)]」の累積リスクが有意に高くなった。
しかしながら、これらの累積リスクは、初期eGFRの低下0%~10%、10%~20%、20%~30%の3群間で有意な差はなかった。
SGLT2阻害薬治療後の初期eGFR低下のない患者と比較して、初期eGFR 低下が0%~ 10%、10%~20%、20%~30%の患者は、「心房細動の新規発症、主要心血管イベント/心不全、複合腎アウトカム」の累積リスクに有意な差はなかった。
Diabetes Obes Metab. 2021 Sep;23(9):2077-2089.
結論:
SGLT2阻害薬による治療で初期eGFR低下がない場合と比較して、初期eGFR 低下が0% ~10%、10%~20%、20%~30%であっても、一般に許容可能であり、2型糖尿病患者における心房細動の新規発症、主要な心血管イベント、複合腎アウトカムに影響を与えないことが示された。
しかしながら、初期eGFRが30%を超える低下がある場合は、心房細動の新規発症、主要な心血管イベント、複合腎アウトカムに影響を及ぼすことが示された。