PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31938043/
タイトル:Impact of sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors on renal function in participants with type 2 diabetes and chronic kidney disease with normoalbuminuria
<概要(意訳)>
背景:
CKD合併2型糖尿病患者の推算糸球体濾過量(eGFR)低下に対するSGLT2阻害薬の有効性は示されているが、その腎保護効果がアルブミン尿の程度によって異なるかどうかは未だ分かっていない。
本研究では、CKD合併2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬の腎保護効果を「正常アルブミン尿、微量アルブミン尿、蛋白尿」の3群に分類して比較した。
方法:
日本人2型糖尿病(年齢> 20歳、SGLT2阻害薬の治療期間> 2年、eGFR<60 mL/min/ 1.73m2)の医療記録を後ろ向きに調査した。
SGLT2阻害薬の投与開始時の尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)、または尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)に基づいて、下記の3群に分類した。
正常アルブミン尿[A1; UACR <30 mg/gCr、またはUPCR <0.15 g/gCr]、微量アルブミン尿[A2; UACR 30〜<300 mg/gCr、またはUPCR 0.15〜<0.50 g/gCr]、蛋白尿[A3; UACR≥300mg/ gCrまたはUPCR≥0.50g/ gCr]。
この3群間における「SGLT2阻害薬の治療開始2年後のeGFRの変化率」を比較検討した。
CKD診療ガイドライン2018
結果:
合計87名の患者(女性40例、男性47例)は、A1(n=46)、A2(n=25)、A3(n=16)の3群に分類された。
3群間の患者背景では、性別、年齢、BMI、糖尿病の罹病期間、eGFR、血圧等の大半では有意な差はなかったが、HbA1cは正常アルブミン尿(A1)群より尿蛋白(A3)群の方が有意に高かった。
SGLT2阻害薬の投与開始2年前のeGFR変化率(%∆eGFR−2y)は、それぞれ、
正常アルブミン尿群(A1)群:−10.8±13.5%
微量アルブミン尿(A2)群:−5.1±12.6%
蛋白尿(A3)群:−12.8±14.7%
となり、全ての群でeGFRは低下していた(p=0.135)。
しかしながら、SGLT2阻害薬の投与開始2年後のeGFR変化率(%∆eGFR+2y)は、A1群とA2群で改善(eGFRが上昇)した。
興味深いことに、A3(尿蛋白)群と比較して、A1群(正常アルブミン尿)のeGFR変化(改善)率は有意に高かった(p<0.05)。
また、SGLT2阻害薬の投与開始2年後のeGFR変化率(%∆eGFR +2y)は、ベースラインのHbA1c(相関係数:0.068、p=0.532)、またはHbA1cの変化(相関係数:− 0.101、p= 0.353)とは関連していなかった。
Diabetol Metab Syndr. 2020 Jan 10; 12: 4.
結論:
CKD合併2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の腎保護効果(投与2年後のeGFR変化率)は、正常アルブミン尿(A1)群の方が蛋白尿(A3)群よりも優れていた。
ゆえに、CKD合併2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の腎保護効果は、アルブミン尿の程度によって異なる可能性があることが示唆された。
【参考情報】
相関係数とは