2型糖尿病合併心疾患患者のインスリン治療におけるSGLT2阻害薬の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34463409/  

タイトル:Effects of empagliflozin on insulin initiation or intensification in patients with type 2 diabetes and cardiovascular disease: Findings from the EMPA-REG OUTCOME trial

<概要(意訳)>

目的:

大規模な心血管アウトカム試験において、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)とプラセボ治療がインスリン治療の開始または投与量変更に与える影響を評価する。

方法:

EMPA-REG OUTCOME試験では、2 型糖尿病合併心血管疾患患者7,020例が、エンパグリフロジン10 mg、25 mg、またはプラセボの投与を受けた。

追跡期間の中央値は、3.1 年であった。

治験薬による治療12週間後は、バックグラウンドの血糖降下薬の変更が可能であった。

インスリン未使用患者において、エンパグリフロジン群とプラセボ群のインスリン開始までの時間に対する効果を評価した。

インスリン治療患者において、20% を超えるインスリン投与量の増加または減少までの時間に対する効果を評価した。

 

インスリン治療の開始は、最低 13 週間の間隔で少なくとも2回連続して受診した場合の最初のインスリン治療の開始(任意の用量)までの時間として定義した。

この受診間隔は、EMPA-REG OUTCOME試験の被験者における定期的な訪問スケジュールの頻度として設定され、14±1週であった。

結果:

ベースラインでは、3,387例(48%)の患者がインスリンで治療されていた。

インスリン治療を受けた患者は、インスリン単剤療法の割合は28.1%、他の血糖降下薬との併用療法の割合は71.9%であった。

1日の総インスリン平均投与量は65±49 IUであり、患者によって1日インスリン投与量はかなりのばらつきがあった(10 IU未満から250 IU以上の範囲)。

各群におけるインスリン治療患者の用量は、同程度に分布していた。

 

ベースラインでインスリン治療の有無に関わらず、エンパグリフロジン群とプラセボ群の間における臨床プロファイル、ベースラインHbA1c、併用療法は、バランスがとれていた。

 

ベースラインでインスリン治療を受けていなかった3,633例(52%)において、エンパグリフロジン群はプラセボ群と比較して、「インスリン治療開始の相対的な必要性」を60%減少させた[7.1% vs 16.4%;aHR 0.40(95%CI 0.32-0.49); p<0.0001]。

 

ベースラインの「血糖値別」における「インスリン治療開始の相対的な必要性」は、それぞれ、

HbA1c<8%で、52%減少[aHR 0.48(95%CI 0.33-0.69)]、

8%≦HbA1c<9%:72%減少[aHR 0.28(95%CI 0.20-0.39)]、

HbA1c≧9%:51%減少[aHR 0.49(95%CI 0.34-0.71)]、

となり、HbA1cが8%以上から9%未満の患者で、エンパグリフロジン群におけるインスリン治療開始の相対的な必要性が顕著に減少した(交互p=0.037)。

 

ベースラインの「糖尿病罹病期間別」における「インスリン治療開始の相対的な必要性」は、それぞれ、

5年以下で、73%減少[aHR 0.27(95%CI 0.17-0.44)]、

5-10年以下で:60%減少[aHR 0.40(95%CI 0.27-0.60)]、

10年以上で:55%減少[aHR 0.45(95%CI 0.34-0.60)]、

となり、2型糖尿病の罹患期間に関わらず、エンパグリフロジン群で一貫したインスリン治療開始の相対的な必要性の減少が示された(交互p=0.18)。

Diabetes Obes Metab. 2021 Dec;23(12):2775-2784.

ベースラインでインスリン治療を受けていた3,387例(48%)において、エンパグリフロジン群はプラセボ群と比較して、「20%を超える持続的なインスリン投与量の増加の必要性」を58%減少させた[14.4% vs 29.3%;aHR 0.42(95%CI 0.36-0.49); p<0.0001]。

この結果は、ベースラインのHbA1cおよび 2型糖尿病罹病期間に関わらず、一貫していた (交互p>0.05)。

Diabetes Obes Metab. 2021 Dec;23(12):2775-2784.

ベースラインでインスリン治療を受けていた 3,387例(48%) において、少数の患者 (エンパグリフロジン群で3例、プラセボ群では0例) ではインスリン治療を中止しても、残りの研究期間中は持続的な血糖コントロールが維持されていた。

また、エンパグリフロジン群は、プラセボ群と比較して、「20%を超える持続的なインスリン投与量の減少」を達成した患者の割合を増加させた[9.2% vs 4.9%;aHR 1.87(95% CI 1.39-2.51); p<0.0001]。

Diabetes Obes Metab. 2021 Dec;23(12):2775-2784.

結論:

EMPA-REG OUTCOME試験において、エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬)は、2 型糖尿病合併心血管疾患患者の新規インスリン治療の開始または治療強化を必要とする患者割合を大幅に低下させることが示された。

インスリン治療の必要量と投与量の減少は、心血管疾患を合併している患者で特に問題となる体重増加や低血糖などの副作用を軽減できるベネフィットを享受できる。

Sponsored Link




この記事を書いた人