PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33950573/
タイトル:Effect of empagliflozin on cardiorenal outcomes and mortality according to body mass index: A subgroup analysis of the EMPA-REG OUTCOME trial with a focus on Asia
<概要(意訳)>
目的:
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)の心腎保護効果が、アジア人を含む心血管(CV)疾患合併2型糖尿病患者のBMI(ボディマス指数)によって影響を受けるかどうかを調査すること。
方法:
このEMPA-REG OUTCOME試験の探索的分析では、Cox回帰分析を使用して「全ての原因による死亡、心不全(HHF)による入院または心血管死、腎症の発症または悪化」に対するSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)の効果をベースラインのBMI(kg/m2)カテゴリー別[全体とアジア人:BMI<25、25≦BMI<30、BMI≧30およびアジア人とアジア地域:BMI<24、24≦BMI<28、BMI≧28]に評価した。
結果:
7,020例の被験者(1,517例のアジア人[21.6%])におけるBMI別カテゴリーの内訳は、BMI<25は934例(13.3%)、25≦BMI<30は2,465例(35.1%)、BMI≧30は3,621例(51.6%)であった。
「全体」と「アジア人」における「全ての原因による死亡(全死亡)」のプラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
全体:0.68(0.57-0.82)
全体BMI<25:0.70(0.44-1.13)
全体25≦BMI<30:0.61(0.45-0.83)
全体BMI≧30:0.73(0.56-0.96)
となり、交互作用(p=0.6772)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
アジア人全体:0.64(0.40-1.01)
アジア人BMI<25:0.49(0.25-0.97)
アジア人25≦BMI<30:0.84(0.41-1.70)
アジア人BMI≧30:Not calculated
となり、交互作用(p=0.2900)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
「全体」と「アジア人」における「心不全(HHF)による入院または心血管死」のプラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
全体:0.66(0.55-0.79)
全体BMI<25:0.49(0.29-0.84)
全体25≦BMI<30:0.59(0.43-0.82)
全体BMI≧30:0.74(0.58-0.94)
となり、交互作用(p=0.3087)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
アジア人全体:0.57(0.36-0.89)
アジア人BMI<25:0.41(0.19-0.90)
アジア人25≦BMI<30:0.61(0.30-1.23)
アジア人BMI≧30:0.61(0.23-1.65)
となり、交互作用(p=0.7333)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
「全体」と「アジア人」における「腎症の発症または悪化」のプラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
全体:0.61(0.53-0.70)
全体BMI<25:0.69(0.49-0.98)
全体25≦BMI<30:0.63(0.50-0.78)
全体BMI≧30:0.58(0.48-0.69)
となり、交互作用(p=0.6265)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
アジア人全体:0.64(0.49-0.83)
アジア人BMI<25:0.59(0.38-0.91)
アジア人25≦BMI<30:0.59(0.40-0.88)
アジア人BMI≧30:0.70(0.39-1.28)
となり、交互作用(p=0.8735)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
Diabetes Obes Metab. 2021 Aug;23(8):1886-1891.
次に、「アジア人」と「アジア地域」における「全ての原因による死亡(全死亡)」のプラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
アジア人BMI<24:0.37(0.17-0.80)
アジア人24≦BMI<29:0.97(0.46-2.03)
アジア人BMI≧29:0.58(0.22-1.56)
となり、交互作用(p=0.2127)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
アジア地域BMI<24:0.34(0.16-0.76)
アジア地域24≦BMI<29:0.84(0.39-1.80)
アジア地域BMI≧29:0.52(0.19-1.44)
となり、交互作用(p=0.2793)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
「アジア人」と「アジア地域」における「心不全による入院または心血管死」のプラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
アジア人BMI<24:0.37(0.17-0.80)
アジア人24≦BMI<29:0.97(0.46-2.03)
アジア人BMI≧29:0.58(0.22-1.56)
となり、交互作用(p=0.2127)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
アジア地域BMI<24:0.25(0.10-0.64)
アジア地域24≦BMI<29:0.63(0.29-1.36)
アジア地域BMI≧29:0.88(0.35-2.21)
となり、交互作用(p=0.1491)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
「アジア人」と「アジア地域」における「腎症の発症または悪化」のプラセボと比較したSGLT2阻害薬のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
アジア人BMI<24:0.46(0.27-0.76)
アジア人24≦BMI<29:0.70(0.46-1.08)
アジア人BMI≧29:0.64(0.41-0.99)
となり、交互作用(p=0.4335)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
アジア地域BMI<24:0.43(0.26-0.73)
アジア地域24≦BMI<29:0.73(0.46-1.14)
アジア地域BMI≧29:0.79(0.48-1.30)
となり、交互作用(p=0.2008)は認めらせず、BMIカテゴリー間で一貫した効果が示された。
Diabetes Obes Metab. 2021 Aug;23(8):1886-1891.
ゆえに、どのBMIカテゴリー間においても、「アジア人」における心腎保護作用は一貫した効果が示された。
結論:
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)は、ベースラインのBMIに関わらず、低BMIのアジア人を含め、心血管疾患を合併した2型糖尿病患者の心腎疾患および死亡リスクを軽減することが示された。