メトホルミンに併用するSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬のベースラインHbA1cにおける血糖低下作用の比較



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32007623/

タイトル:Reduction in HbA1c with SGLT2 inhibitors vs. DPP-4 inhibitors as add-ons to metformin monotherapy according to baseline HbA1c: A systematic review of randomized controlled trials

<概要(意訳)>

背景:

メトホルミン単剤療法で効果不十分な場合、特に心血管疾患、心不全、慢性腎臓病などの併存症がない2型糖尿病(T2DM)患者に次に併用する薬剤の選択に悩まされる医師は多い。

本研究では、T2DM患者のメトホルミンへ上乗せするDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬のベースラインHBA1cにおけるHBA1c低下作用を比較検討した。

方法:

最終的に、SGLT2阻害薬群で29RCT[15RCTは低用量、高用量を比較、44のデータセット、n=9,321(ベースライン平均HbA1c<8%のn=5,460、≧8%のn=3,861)]、DPP-4阻害薬群で59RCT[1RCTは低用量、高用量を比較、1RCTは2つのDPP-4阻害薬を比較、61のデータセット、n=17,914(ベースライン平均HbA1c<8%のn=11,982、≧8%のn=5,932)]が分析対象となり、その内、7RCTがSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の直接比較試験であった。

選定RCTの条件は、「主要評価項目:ベースラインからのHbA1c低下作用、対象:eGFR>60かつメトホルミン単剤療法で効果不十分な2型糖尿病患者≧50例、ベースラインのHbA1c>7%、期間:12~52週」等である。

結果:

ベースラインのHbA1cレベルは、SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬のRCT全体で統計的に有意な差はなかった[8.03±0.35% vs 8.05±0.43%(p=0.8645)]。

また、ベースラインHbA1c<8%のサブグループ[7.79±0.15% vs 7.71±0.23%(p= 0.1486)]とベースラインHbA1c≧8%のサブグループ[8.27±0.32% vs 8.35±0.33%(p=0.3853)]においても、有意な差はなかった。

RCT全体におけるHbA1c低下作用は、DPP-4阻害薬(-0.71±0.23%)と比較して、SGLT2阻害薬(-0.80±0.20%)の方が有意に大きかった(p=0.0354)。

ベースラインHbA1c<8%のサブグループにおけるHbA1c低下作用は、DPP-4阻害薬(7.71±0.23%から−0.62±0.16%の低下)と比較して、SGLT2阻害薬(7.91±0.15%から−0.735±0.17%の低下)の方が有意に大きかった(p=0.0117)。

一方で、ベースラインHbA1c≧8%のサブグループにおけるHbA1c低下作用は、DPP-4阻害薬(8.35±0.33%から−0.80±0.25%の低下)とSGLT2阻害薬(8.27±0.32%から−0.87 ±0.22%の低下)で、有意な差はなかった(p=0.2756)。

ただし、両群において、ベースラインHbA1c<8%のRCTよりも、ベースラインHbA1c≧8%のRCTの方がHbA1cの低下作用が有意に大きかった。

SGLT2阻害薬の場合、-0.87±0.22% vs -0.735±0.17%(p=0.0299)。

DPP-4阻害薬の場合、-0.80±0.24% vs -0.62±0.16%(p=0.0013)。

よって、この2群間のHbA1c低下作用に差は認められなかったが、ベースラインHbA1c≧8%と<8%におけるHbA1cの低下差は、SGLT2阻害薬よりもDPP-4阻害薬の方が大きかった。

しかしながら、RCT全体におけるベースラインのHbA1cとHbA1c低下作用の相関分析では、DPP-4阻害薬(勾配:- 0.26、r2= −0.25、p<0.0001)よりもSGLT2阻害薬(勾配:-0.39、r2 = -0.43、p<0.0001)の方が負の相関を示した。

Diabetes Metab.2020 Jun;46(3):186-196.

SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の7つの直接比較試験(高用量DPP-4阻害薬のシタグリプチン100㎎は5RCT、サキサグリプチン5mgとリナグリプチン5mgは各1RCT)において、

低用量(通常用量)のSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬のHbA1c低下作用は同等であった(-0.75±0.15% vs -0.78±0.20%、p=0.7697)。

高用量のSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬のHbA1c低下作用に有意な差はなかった(-0.86±0.24% vs -0.78±0.20%、p=0.5341)。

結論:

メトホルミン単剤療法で効果不十分なT2DM患者に対するHbA1c低下作用は、SGLT2阻害薬の方がDPP-4阻害薬よりも、若干大きかった。

ベースラインのHbA1cとHbA1c低下作用の関係は、SGLT2阻害薬の方がDPP-4阻害薬よりも若干強い負の相関を示した為、メトホルミンに追加する2nd療法ではSGLT2阻害薬を優先することを後押しするかもしれない。

ただし、実臨床における2nd療法の薬剤選択は、ベースラインのHbA1cではなく、体重、血圧、心血管および/または腎保護への影響、安全性プロファイル等を含めた有用性を考慮すべきである。

 

【参考情報】相関と線形回帰分析

http://ronbun.jp/column/column06.html

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