PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31994353/
タイトル:Osmotic diuresis by SGLT2 inhibition stimulates vasopressin-induced water reabsorption to maintain body fluid volume
<概要(意訳)>
背景:
濾過されたグルコースのほとんどは、ナトリウム-グルコース共輸送体(SGLT)2によって近位尿細管で再吸収される。
SGLT2阻害薬による[Na、浸透圧(水)]利尿作用は、体液量(BFV)を維持する為の代償的な水分と食物摂取を増加させることに関連している。
しかしながら、腎尿細管レベルで活性化される代償メカニズムは未だ明らかになっていない。
方法:
2型糖尿病の後藤・柿崎(GK)ラット[参考:ヒトのインシュリン非依存型糖尿病の病態に近い自然発症糖尿病ラット]をプラセボ、または0.01%(食餌中)のSGLT2阻害薬で治療し、水分と食物は自由に摂取させた。
8週間後、GKラットを24時間代謝ケージに入れて、代謝パラメーターの変化を測定した。
結果:
SGLT2阻害薬は、「体重、血清グルコース、収縮期血圧」を低下させ、「水分と食物摂取、グルコースとNa+の尿中排泄、尿量、浸透圧クリアランス[参考:Cosm=(尿浸透圧Uosm×尿量V)/血漿浸透圧Posm]、尿中バソプレシン(抗利尿ホルモン)、自由水再吸収量(TcH2O)」を増加させた。
Physiol Rep. 2020 Jan; 8(2): e14360.
生体インピーダンス分光法により測定された「BFV(体液量)、体液バランス(細胞内液量、細胞外液量、総体液量)」は、2つのグループ間で類似していた。
Physiol Rep. 2020 Jan; 8(2): e14360.
SGLT2阻害薬で治療したラットの「尿中バソプレシン」は、それぞれ「体液バランス」と「TcH2O(自由水再吸収量)」で「負の相関」と「正の相関」を示した。
Physiol Rep. 2020 Jan; 8(2): e14360.
SGLT2阻害薬は、腎膜に発現した「SGLT2、Ser269がリン酸化されたアクアポリン(AQP)2(参考:S269 がリン酸化されたAQP2は細胞内局在を変化させ尿細管管腔側膜へ集積する)、バソプレシンV2受容体(AVPR2)」のトランスポーターを増加させた。
一方で、腎膜における「SGLT1、GLUT2、AQP1、AQP2」の発現はグループ間で類似していた。
Physiol Rep. 2020 Jan; 8(2): e14360.
結論:
SGLT2阻害薬は、持続的な[Na、浸透圧(水)]利尿作用を誘発する代償として、体液量(BFV)を維持するために、「水分摂取量」とSer269がリン酸化されたAQP2を介してバソプレシン誘発性の自由水再吸量(TcH2O)、つまり、腎臓の「集合管における水再吸収量」を増加させることで体液量(BFV)を維持していることが示された。
【参考情報】
SGLT2阻害薬とは
http://dm-rg.net/1/001/010900/001.html
血漿/尿中バゾプレシン濃度
バゾプレシンと体液量調節
腎臓の体液量を調節する機能
https://www.jiho.co.jp/Portals/0/ec/product/ebooks/book/49978/49978.pdf
浸透圧の生化学的検査
http://uwb01.bml.co.jp/kensa/search/detail/3802282
尿濃縮を担うアクアポリン複合体
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/139/2/139_2_66/_pdf
アクアポリン2の尿中排泄のメカニズムと生理学的役割の解明
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K09301/
細胞膜水チャネル,アクアポリン