異なる臨床表現型におけるSGLT2阻害薬の心血管保護効果



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34325887/ 

タイトル:Patient Phenotypes and SGLT-2 Inhibition in Type 2 Diabetes: Insights From the EMPA-REG OUTCOME Trial

<概要(意訳)>

背景:

EMPA-REG OUTCOME試験において、エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬)は心血管疾患(CV)合併2型糖尿病患者の「心血管死および心不全による入院リスク」を34%減少させた。

しかしながら、臨床表現型における治療効果の評価データは限られている。

本研究では、潜在クラス分析(LCA)を使用して、CV合併2型糖尿病患者の異なる臨床表現型を特定し、その治療効果を調査した。

方法:

全体として7,020例の被験者がエンパグリフロジン25㎎、10㎎、プラセボで治療された。

今回の事後分析では、被験者を訓練データセット(被験者の3分の2)と評価データセット(被験者の3分の1)に分類した。

LCA分析では、3つの臨床表現型グループ(n=6,639)を特定した。

臨床表現グループ全体の「心血管死(致死的脳卒中を除く)または心不全入院」における、エンパグリフロジンの治療効果をCox回帰分析によって調査した(訓練および評価データセット)。

結果:

表現型グループ1(n=1,463;33.1%)は、「若い、アジア人が多い、現喫煙者が多い、2型糖尿病の罹病期間が短い、高血圧が少ない、eGFRが高い、心筋梗塞の既往が多い」の特徴があった。

表現型グループ2(n=1,172;26.5%)は、「女性が多い、ヒスパニックが多い、冠動脈疾患が少ない、脳血管疾患および末梢動脈疾患(PAD)が多い」の特徴があった。

表現型グループ3(n=1,785;40.4%)は、「進行した冠動脈疾患を有する高齢者、冠動脈バイパス術(CABG)の既往が多い、eGFRが低い、ヘマトクリット値が低い、尿酸値が高い」の特徴があった。

 

「心血管死または心不全入院」のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

表現型グループ1:1.00(ref.)

表現型グループ2:1.66(1.19-2.32)

表現型グループ3:2.25(1.68-3.01)

となり、グループ間で異なるリスクが示された(p<0.0001)。

 

「心血管死」のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

表現型グループ1:1.00(ref.)

表現型グループ2:1.83(1.23-2.71)

表現型グループ3:1.86(1.30-2.67)

となり、グループ間で異なるリスクが示された(p=0.0018)。

(評価データセットの結果は、この訓練データセットの結果と同様であった。)

JACC Heart Fail. 2021 Aug;9(8):568-577.

また、プラセボと比較した、「心血管死または心不全入院」のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

表現型グループ1:0.47(0.29-0.78)

表現型グループ2:0.76(0.48-1.20)

表現型グループ3:0.65(0.48-0.89)

となり、グループ間で一貫した結果が示された(p=0.37)。

 

プラセボと比較した、「心血管死」のハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、

表現型グループ1:0.42(0.23-0.77)

表現型グループ2:0.70(0.42-1.19)

表現型グループ3:0.55(0.37-0.83)

となり、グループ間で一貫した結果が示された(p=0.46)。

JACC Heart Fail. 2021 Aug;9(8):568-577.

エンパグリフロジンの一貫した治療効果は、訓練および検証データセットの臨床表現型全体で示された(交互p>0.30)。

結論:

EMPA-REG OUTCOME試験の潜在クラス分析(LCA)において、心血管疾患(CV)リスクが異なる3つの臨床表現型を有する2型糖尿病患者が特定された。

これら表現型全体におけるSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)の「心血管死または心不全入院リスクの低下効果」には頑健性があることが示された。

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