PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33934546/
タイトル:Clinical impact of heart rate change in patients with acute heart failure in the early phase
<概要(意訳)>
背景:
急性心不全(AHF)患者は、しばしば心拍数(HR)が上昇し、AHFの初期治療後はHRが劇的に変化する。
しかしながら、「入院後のHR変化、および入院初期のHR変化と予後との関連」は、未だ明らかになっていない。
方法:
AHF多施設登録研究(2012年1月~2019年3月、名古屋大学病院、名古屋掖済会病院、一宮市立市民病院の3施設が参加)から、AHFで入院した連続1,527例の患者を後ろ向きに評価した。
HR変化(%)は、[HR(入院時)-HR(入院後24時間)]×100∕HR(入院時)として計算した。
被験者は、HR変化の四分位数[①<2.0%、②2.0≦HR change<15.1%、③15.1≦HR change <28.4%、④28.4%≦]により、4つのグループに分類された。
主要評価項目は、「1年以内の全死亡と心不全再入院」の複合アウトカムとした。
結果:
最終的に、1,527例(年齢中央値79歳、男性56.7%)が評価対象となり、洞調律(sinus rhythm)群は962例(63.0%)、心房細動(AF)群は565例(37.0%)であった。
HR変化の中央値は、15.1(範囲:2.0-28.4)%であった。
全体(洞調律群+AF群)におけるHRの変化は、入院後24時間で最も減少し、その後、48時間、72時間にかけて徐々に低下した[入院時:98(81-117)bpm、24時間:80(70-92)bpm、48時間:78(68-90)bpm、72時間: 77(67-88)bpm]。
同様の結果が、洞調律群とAF群においても示された。
全体の内、468例(30.6%)に「全死亡と心不全再入院」の複合アウトカムが記録された。
カプランマイヤー分析では、「(全体における)全死亡と心不全再入院の累積イベントフリー割合は、HR変化が大きいほど高い」ことが示された(Log-rank p=0.012)。
この傾向は、「洞調律群(Log-rank p=0.024)とAF群(Log-rank p=0.043)」においても、それぞれ、同様の結果が示された。
また、ベースラインのHRと複合アウトカムにおけるカプランマイヤー分析では、「ベースラインのHRが低いほど複合アウトカムの累積イベントフリー割合が低い」ことが示された。
ESC Heart Fail. 2021 Aug;8(4):2982-2990.
コックス比例ハザード分析(生存分析の多変量解析)では、「(全体における)HR変化は、複合アウトカムの予後因子である」ことが示された[調整HR 0.995(95%CI 0.991-0.998; p=0.006)]。
また、「洞調律群のHR変化は、複合アウトカムの予後因子である」ことが示された[調整HR 0.993(95%CI 0.988-0.999; p=0.015)]が、「AF群」では示されなかった[調整HR 0.996(95%CI 0.990-1.002; p=0.15)]。
ESC Heart Fail. 2021 Aug;8(4):2982-2990.
結論:
急性心不全による入院後24時間における心拍数低下は、洞調律と心房細動の患者間で予後への影響が異なる可能性があるものの、急性心不全患者の予後に好影響を与えることが示された。