PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34246607/
タイトル:NT-proBNP for Risk Prediction in Heart Failure: Identification of Optimal Cutoffs Across Body Mass Index Categories
<概要(意訳)>
目的:
NT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド)値は、心不全患者の予後予測指標として有用である。
本研究では、まだ明らかになっていない、「心不全(HF)患者のBMI(ボディマス指数)カテゴリー」における「予後とNT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド)値のカットオフ値」を評価することを目的とした。
方法:
BIOS研究(心不全外来におけるバイオマーカー研究)の被験者データを分析した。
慢性心不全患者をBMI別に、「低体重(BMI <18.5 kg/m2)、正常体重(BMI 18.5-24.9 kg/m2)、過体重(BMI 25-29.9 kg/m2)、軽度肥満(BMI 30-34.9 kg/m2)、中等度肥満(BMI 35-39.9 kg/m2)、高度肥満(BMI ≧40 kg/m2)」の6つのグループに分類した。
BMIカテゴリー別におけるNT-proBNP値のカットオフ値と「全死亡(全ての原因による死亡)、心臓死」の予後を評価した。
結果:
被験者12,763例(平均年齢 66±12歳、女性 25%、平均LVEF 33%±13%)の内、過体重(BMI 25-29.9 kg/m2)は5,176例、正常体重(BMI 18.5-24.9 kg/m2)は4,299例、軽度肥満(BMI 30-34.9 kg/m2)は2,157例、中等度肥満(BMI 35-39.9 kg/m2)は612例、
高度肥満(BMI ≧40 kg/m2)は314例、低体重(BMI <18.5 kg/m2)は205例であった。
NT-proBNPレベルは、BMIと逆相関(1 kg/m2でβ= -0.174; p<0.001)の関係が示された。
「BMIカテゴリー別」の「全死亡」におけるハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
低体重(<18.5 kg/m2):1.28(1.05-1.58)、p=0.017
正常体重(18.5-24.9 kg/m2):1.49(1.39-1.58)、p<0.001
過体重(25-29.9 kg/m2):1.49(1.40-1.58)、p<0.001
軽度肥満(30-34.9 kg/m2):1.40(1.26-1.54)、p<0.001
中等度肥満(35-39.9 kg/m2):1.58(1.29-1.94)、p<0.001
高度肥満(≧40 kg/m2):1.09(0.86-1.39)、p=0.474
となり、高度肥満(BMI≧40 kg/m2)を除き、NT-proBNP は、独立した「全死亡」の予測因子であった。
JACC Heart Fail. 2021 Jun 29;S2213-1779(21)00271-7.
「5年間の全死亡」予測に対する「BMIカテゴリー別」の「全体と性別」におけるNT-proBNP値のカットオフ値(ng/L)は、それぞれ、
低体重(<18.5 kg/m2):全体 3,785、女性 3,385、男性 2,953
正常体重(18.5-24.9 kg/m2):全体 2,193、女性 2,728、男性 2,196
過体重(25-29.9 kg/m2):全体 1,554、女性 2,021、男性 1,529
軽度肥満(30-34.9 kg/m2):全体 1,045、女性 1,591、男性 1,045
中等度肥満(35-39.9 kg/m2):全体 755、女性 1,049、男性 864
高度肥満(≧40 kg/m2):全体 879、女性 889、男性 631
となり、「BMIの増加に伴い、NT-proBNP値のカットオフ値が低下し、男性よりも女性の方が高い」ことが示された。
JACC Heart Fail. 2021 Jun 29;S2213-1779(21)00271-7.
「BMIカテゴリー別」の「全死亡」におけるハザード比[HR(95%CI)]が1となる、NT-proBNP値(ng/L)は、それぞれ、
低体重(<18.5 kg/m2):4,083
正常体重(18.5-24.9 kg/m2):1,820
過体重(25-29.9 kg/m2):1,032
軽度肥満(30-34.9 kg/m2):824
中等度肥満(35-39.9 kg/m2):653
高度肥満(≧40 kg/m2):833
となることが示された。
JACC Heart Fail. 2021 Jun 29;S2213-1779(21)00271-7.
結論:
心不全患者のNT-proBNPとBMIには「負の相関関係」が示された。
高度肥満者(BMI≧40 kg/m2)を除く、低体重から中等度肥満の心不全患者における各NT-proBNPのカットオフ値は、独立した予後予測因子であることが示された。
【参考情報】
カットオフ値とは