PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32684540/
タイトル:Impact of the Temporal Relationship Between Atrial Fibrillation and Heart Failure on Prognosis After Ablation
<概要(意訳)>
背景:
本研究は、心房細動(AF)と心不全(HF)の発症タイミングがアブレーション治療後の予後に与える影響を解明することを目的とした。
方法:
2014年12月~2017年9月の間に、病院で心房細動カテーテルアブレーションを施行したAFとHFを罹患した連続129例の患者を調査対象とした。
これらの患者は、HF発症後にAFを発症した患者、AF発症後にHFを発症した患者、最初の医師の診察時に両疾患を発症していた患者で構成されていた。
分析対象の患者をグループ①「HF発症後にAFを発症した患者42例」とグループ②「AF発症後にHFを発症した患者87例」の2グループに分けた。
主要評価項目は、2年のフォローアップ期間における「死亡とHFによる入院」の複合エンドポイントとした。
結果:
患者背景において、グループ(HF発症後にAFを発症)①は、グループ(AF発症後にHFを発症)②と比較して、左房サイズは同等であったが、「男性、発作性AF、虚血性心不全、NYHAⅢまたはⅣ、LVEF<40%等」の割合が有意に高く、血中BNP値も有意に高く、左室リモデリングもより高度であった。
カプラン・マイヤー分析における「死亡の発症率」は、グループ(HF発症後にAFを発症)①の方が、グループ(AF発症後にHFを発症)②よりも有意に高かった(p<0.0001)。
「心不全による入院の発症率」は、グループ(HF発症後にAFを発症)①の方が、グループ(AF発症後にHFを発症)②よりも有意に高かった(p<0.0001)。
「死亡と心不全による入院の発症率」は、グループ(HF発症後にAFを発症)①の方が、グループ(AF発症後にHFを発症)②よりも有意に高かった(p<0.0001)。
アブレーション治療後2年以内における「AFの再発有無」で「死亡と心不全による入院の発症率」をグループ①と②で検討したところ、グループ②はAFの再発有無で差はなかった(p=0.55)が、グループ①はAFの再発有無で有意な差が認められた(p=0.001)。
Cir J.2020 Jul 17. doi:10.1253/circj.CJ-20-0191.
また、「心房細動の再発」に関しては、アブレーション施行回数、抗不整脈治療薬の服用有無に関わらず、グループ(HF発症後にAFを発症)①の方が、グループ(AF発症後にHFを発症)②よりも有意に高かった。
Cir J.2020 Jul 17. doi:10.1253/circj.CJ-20-0191.
結論:
共変量を調整後のCox比例ハザードモデルより、グループ(HF発症後にAFを発症)①の患者は、単変量解析[オッズ比 8.28 (95%CI 3.30–20.8)、p<0.0001]と多変量解析[オッズ比 9.42 (95%CI 2.55–34.7)、p<0.0001]においてもアブレーション後の死亡、または心不全による入院の予後因子であった。
Cir J.2020 Jul 17. doi:10.1253/circj.CJ-20-0191.
「死亡、心不全による入院、心房細動の再発」の有害転帰リスクは、AF発症後にHFを発症した患者(グループ②)よりも、HF発症後にAFを発症した患者(グループ①)の方が有意に高かった。
カテーテルアブレーションの適応は、心房細動と心不全の発症タイミングを考慮して慎重に決定する必要があるだろう。
【参考情報】 生存時間解析