日本人における新規心房細動の検出方法の比較



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31696252/ 

タイトル:Comparison of continuous 24-h and 14-day monitoring for detection of otherwise unknown atrial fibrillation: a registry to identify Japanese concealed atrial fibrillation (REAL-AF)-based study

<概要(意訳)>

背景:

報告されている日本の心房細動(AF)の有病率は、わずか0.6%であるが、AF患者は増加しており2020年までに約1,000万人に到達する予定である。

AFは脳卒中や心不全の既知の危険因子であるが、AFのほとんどのエピソードは発作性および、または無症候性である為、AFの検出は困難である。

本研究(REAL-AF-based study)では、SpiderFlash-T AFIB recorderのイベントレコーダーを用いて「24時間モニタリング」と「14日間モニタリング」の2群に分けて、新規のAFの検出を比較する前向き観察研究を実施した。

方法:

最初の「24時間」または「14日間」のモニタリング期間中におけるAF検出の有無に関わらず、両群の患者は、3、6、9、12ヶ月の時点で12誘導心電図と身体検査、6、12ヶ月の時点では更に24時間心電図(ホルター心電図)によるフォローアップを受けた。

AFが検出された患者の経口抗凝固療法は、医師の裁量で行われた。

主要評価項目は、「最初のモニタリング期間中またはフォローアップ期間中に検出された新規のAF(定義:AF持続時間≧30秒)」とした。

副次的評価項目は、「経口抗凝固薬(OAC)治療の開始、全死亡、脳卒中、大出血、心不全」等の主要な有害転帰の発症とした。

結果:

適格基準を満たした881例の登録患者の内、868例から研究の参加について同意を得た。

平均年齢 75±6歳、男性 558例(64%)、BMI 24±3kg/m2、CHA2DS2-VAScスコア 4点であった。

868例の被験者の内、645例は「24時間モニタリング群」、223例は「14日間モニタリング群」として構成された。

基本的な患者の臨床的特徴、または他の臨床変数に2群間の違いはなかった。

 

「最初のモニタリング期間中」に検出された2群間のAFは、16例(1.8%)であった。

その内訳は、「24時間モニタリング群」よりも「14日間モニタリング群」の有意に多かった[1.1%(7/645例) vs 4.0%(9/223例)、p=0.005)]。

しかしながら、AFの持続時間、最大/最小の心拍数に2群間の違いはなかった。

「14日間モニタリング群」でAFが検出された9例の内、3例(33%)は「最初の24時間以内」に検出され、6例(67%)は翌日以降の13日間で検出された。

AFが最初に検出されるまでの時間の中央値は、2日であった。

 

「追跡期間中」を含めて検出された2群間のAFは、32例(3.7%)であった。

その内訳は、「24時間モニタリング群」よりも「14日間モニタリング群」の有意に多かった[2.8%(18/645例) vs 6.3%(14/223例)、p=0.007)]。

しかしながら、「最初のモニタリング期間中」に検出後の新規AFの検出は、「24時間モニタリング群」と「14日間モニタリング群」に差はなかった[1.7%(11/645例) vs 2.3%(5/223例)、p=0.007)]。

Heart Vessels. 2020 May; 35(5):689-698.

新規でAFが検出された患者は、検出されなかった患者と比較して、ベースラインの心拍数が低く(67±11 vs 71±12拍/分、p=0.05)、β遮断薬の使用率が低く(16% vs 37%、p= 0.01)、左房径が拡大(LAD≧40mm)しており(52% vs 30%、p=0.05)、NT-proBNPレベル(pg/mL)が高かった(251 vs 148、p=0.007)。

ただし、他の基本的な臨床的特徴(CHA2DS2-VAScスコア、血圧、左心駆出率、血清学的検査等)は、両群間で類似していた。

独立変数(ベースラインの心拍数、β遮断薬の使用、左房拡大、NT-proBNPレベル)をステップワイズ法により投入し、階層的重回帰分析したところ、β遮断薬の使用無[OR 7.71(2.29–25.9)、p=0.001]、NT-proBNPレベル[OR 5.82(2.53–13.4)、p<0.0001]は、新規AFの検出の独立した予測因子であった。

ROC曲線により、独立変数(NT-proBNPレベル)のカットオフ値を求めたところ、≧150pg/ mL(感度80%、特異度51%、AUC 0.66、p=0.02)となった。

 

「追跡期間中」を含めて検出された2群間の32例のAF患者の内、22例(69%)が医師の裁量でOAC療法を受けた。

「最初のモニタリング期間中」にAFが検出された16例のAF患者の内、7例(44%)が1ヶ月以内にOAC療法を受けた。

一方で、「フォローアップ期間中」にAFが検出された16例のAF患者の内、15例(94%)が24時間以内にOAC療法を受けた。

 

全体としての有害転帰は、868例の内、35例(4%)に、「死亡(6例)、大出血(9例)、虚血性脳卒中(2例)、冠動脈造影またはステント留置(8例)、心不全による入院(12例)、肺塞栓症(1例)、心室頻拍(1例)、心ブロック(1例)」が発生した。

また、経口抗凝固(OAC)療法の有無で、有害転帰の発生率に差はなかった。

 

結論:

イベントレコーダーを使用した本研究において、CHADS-VAScスコアから脳卒中リスクが高い日本人患者の心房細動を新規で3.7%検出することができた。

(日本の心房細動の有病率は、わずか0.6%であることを考慮すると)14日間のモニタリングは、心房細動の新規検出に効果的で合理的であることが示された。

今後は、心房細動が検出された患者に対する早期の経口抗凝固療法によって脳卒中一次予防の恩恵を受ける患者特性を明らかにするための大規模研究が必要だろう。

 

【参考情報】

イベントレコーダー

イベントレコーダー of KZ Medical inc. (kz-medical.co.jp)

24 時間ホルター心電図で検出されなかった発作性心房細動が長時間ホルター心電図にて捉えられた2例

24時間ホルター心電図で検出されなかった発作性心房細動が長時間ホルター心電図にて捉えられた2例 (jst.go.jp)

階層的重回帰分析 ステップワイズ法

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ROC曲線でできること

ROC曲線 | 大阪大学腎臓内科 (osaka-u.ac.jp)

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