心房細動患者の予後に対する認知機能の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32800908/ 

タイトル:Cognitive impairment in patients with atrial fibrillation: Implications for outcome in a cohort study

<概要(意訳)>

背景:

心房細動(AF)患者の臨床転帰に対する認知機能の影響は十分に調査されていない。

本研究では、AF患者の認知機能障害の有病率と「①全ての原因による死亡、② 死亡、脳卒中/全身性塞栓症、出血、急性冠症候群、肺塞栓症、心不全の新規発症/悪化の複合エンドポイント」との関連を調査した。

方法:

ベースラインの認知機能は、年齢と教育を調整したミニメンタルステート検査(aMMSE)によって評価した。

この検査は、「時間に対する見当識(5点)、場所に対する見当識(5点)、登録(3点)、注意と計算(5点)、想起(3点)、命名と繰り返し(3点)、理解(3点)、読解力(1点)、作文力(1点)、デザインコピー(1点)」の10領域から構成されており、aMMSE <24点を認知機能障害(CImp)と定義した。

結果:

本研究には437例(男性61.3%、平均年齢73.4±11.7歳)の患者が含まれていた。

その内、63例(14.4%)の患者は、認知機能障害を有していた。

永続性心房細動[OR 1.750(95%CI 1.012-3.025)、p=0.045)]、ヘモグロビンレベル(貧血の定義は、Hb <10 g/dL)[OR 0.827(95%CI 0.707-0.967]、p=0.017]、経口抗凝固薬での治療がない抗血小板薬のみの治療[OR 4.352(95%CI 1.583-11.963)、p= 0.004]は、ベースラインの認知機能障害と独立した関連が認められた。

Int J Cardiol. 2021 Jan 15; 323: 83-89.

追跡期間[中央値887日(四分位範囲731-958)]の間に、全死亡は30例(7.1%)、複合エンドポイント(死亡、脳卒中/全身性塞栓症、出血、急性冠症候群、肺塞栓症、心不全の新規発症/悪化)は97例(22.9%)に発症した。

併存疾患、冠動脈疾患、左房拡大(>48ml/m)、登録時に心電図で確認されたAFで調整したaMMSE≧24点群と比較した<24点群の「全死亡」のハザード比は、[HR 3.057(95%CI 1.464-6.682、p=0.003]であった。

併存疾患、冠動脈疾患、左房拡大(>48ml/m)、登録時に心電図で確認されたAF、最初に検出されたAFで調整したaMMSE≧24点群と比較した<24点群の「複合エンドポイント(死亡、脳卒中/全身性塞栓症、出血、急性冠症候群、肺塞栓症、心不全の新規発症/悪化)」のハザード比は、[HR 2.185(95%CI 1.387-3.444、p=0.001]であった。

Int J Cardiol. 2021 Jan 15; 323: 83-89.

結論:

ミニメンタルステート検査で認知機能障害(aMMSE<24点)が認められた心房細動(AF)患者の予後はより不良となることが示された。

また、抗血小板療法のみで抗凝固療法を実施しないことはAF患者の認知機能障害と独立した関連があることから、適切な抗血栓療法は予後の改善に重要であることが明らかになった。

 

【参考情報】

認知症の診断と認知機能検査

第3章 認知症の診断 4.認知機能検査 | 公益財団法人 長寿科学振興財団 (tyojyu.or.jp) 

MMSE-J(認知症スクリーニング検査)とは

【専門家が解説】MMSE(認知症スクリーニング検査) | こころみ医学元住吉こころみクリニック (cocoromi-cl.jp) 

発作性・持続性・永続性心房細動の分類定義とは

発作性・持続性・永続性心房細動の分類定義とは?|Web医事新報|日本医事新報社 (jmedj.co.jp) 

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