PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33822030/
タイトル:Two-year outcomes of more than 30 000 elderly patients with atrial fibrillation: results from the All Nippon AF In the Elderly (ANAFIE) Registry
<概要(意訳)>
目的:
実臨床における高齢および超高齢の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の現状と予後を明らかにするために、75歳以上の日本人NVAF患者3万例以上をANAFIEレジストリに登録した。
方法:
この多施設共同前向き観察研究では、日本人高齢NVAF患者を約2年間追跡した。
結果:
32,275例(平均年齢81.5歳、男性57.3%、平均CHA2DS2-VAScスコア4.5点)の内、2,445例(7.6%)は、経口抗凝固薬(OAC)は投与されておらず、29,830例(92.4%)は、OACが投与されていた。
2年間の全体におけるイベント発症率は、それぞれ、
心血管イベント:10.59%
脳卒中/全身性塞栓症(SEE):3.01%
大出血:2.00%
頭蓋内出血:1.40%
全ての原因による死亡(全死亡):6.95%
心血管死:2.03%
であった。
Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes. 2021 Apr 2; qcab025.
また、年齢(<85歳、≧85歳)別による2年間のイベント発症率は、それぞれ、
心血管イベント:8.91%、15.35%
脳卒中/全身性塞栓症(SEE):2.69%、3.91%
大出血:1.80%、2.55%
頭蓋内出血(ICH):1.28%、1.76%
全ての原因による死亡(全死亡):4.89%、12.77%
心血管死:1.39%、3.85%
であった。
Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes. 2021 Apr 2; qcab025.
ワルファリン(n=8,233)と比較した、DOAC(n=21,585)の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
脳卒中/全身性塞栓症(SEE):0.82(0.71-0.95);p<0.001
脳卒中:0.83(0.72-0.96);p=0.01
虚血性脳卒中:0.82(0.70-0.97);p=0.02
出血性脳卒中:0.85(0.62-1.17);p=0.31
全身性塞栓症(SEE):0.53(0.24-1.17);p=0.11
大出血:0.73(0.62-0.87);p<0.001
全出血:0.92(0.84-1.01);p=0.07
頭蓋内出血(ICH):0.68(0.55-0.83);p<0.001
消化管出血:1.00(0.87-1.14);p=0.98
心血管イベント:0.83(0.77-0.89);p<0.001
心血管死:0.81(0.68-0.96);p=0.01
全死亡:0.85(0.77-0.93);p<0.001
ネットクリニカルアウトカム(脳卒中/SEE/大出血/全死亡):0.85 (0.77–0.93);p<0.001
となり、大半のイベント発症リスクはDOACの方が有意に低かった。
ワルファリンと比較した、OAC未投与(n=2,445)の調整ハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
脳卒中/全身性塞栓症(SEE):1.31 (1.02–1.68);p=0.03
脳卒中:1.32 (1.03–1.70) ;p=0.03
虚血性脳卒中:1.62 (1.24–2.13);p<0.001
出血性脳卒中:0.59 (0.29–1.17) ;p=0.13
全身性塞栓症(SEE):0.77 (0.16–3.58);p=0.74
大出血:0.67 (0.48–0.95) ;p=0.03
全出血:0.53 (0.43–0.65) ;p<0.001
頭蓋内出血(ICH):0.62 (0.40–0.94);p=0.02
消化管出血:0.65 (0.49–0.86) ;p=0.003
心血管イベント:0.95 (0.83–1.10);p=0.50
心血管死:1.41 (1.07–1.86) ;p=0.01
全死亡:1.29 (1.11–1.51) ;p=0.001
ネットクリニカルアウトカム(脳卒中/SEE/大出血/全死亡):1.24 (1.09–1.42);p=0.001
となり、虚血イベントや全死亡リスクが高く、出血リスクが低かった。
Eur Heart J Qual Care Clin Outcomes. 2021 Apr 2; qcab025.
また、多変量解析における「脳卒中/SEE、大出血、全死亡」のハザード比は、それぞれ、
登録時1年以内の転倒:
1.38 (1.12–1.69) ;p=0.002、1.94 (1.54–2.44);p<0.001、1.47 (1.29–1.67);p<0.001
カテーテルアブレーション施行:
0.58 (0.42–0.79);p<0.001、0.66 (0.47–0.94);p=0.02、0.55 (0.44–0.69);p<0.001
となり、前者はイベント発症の増加リスク、後者はイベント発症の減少リスクであった。
結論:
日本では、高齢および超高齢の非弁膜症性心房細動患者の大部分がDOACで治療されていた。
十分にコントロールされたワルファリンと比較して、「脳卒中/全身性塞栓症、大出血、全死亡リスク」は、DOACの方が有意に低かった。
また、「転倒とカテーテルアブレーション」は、これらのイベント発症リスクと独立した関連性が示された。