高齢者糖尿病の死亡と入院リスクにおける血糖コントロールの影響



URL:https://care.diabetesjournals.org/content/early/2021/05/13/dc20-3045 

タイトル:American Diabetes Association Framework for Glycemic Control in Older Adults: Implications for Risk of Hospitalization and Mortality

<概要(意訳)>

目的:

2021年の米国糖尿病学会(ADA)ガイドラインでは、高齢者の併存する健康状態に基づいて、様々なHbA1cの目標値を推奨している。

本研究では、ADAで定義された健康状態[健康、複雑/中程度、非常に複雑/悪い(認知症、フレイル、低身体機能を含む)]と血糖値(HbA1c<7%、7〜 <8%、≥8%)のカテゴリーにおける高齢者糖尿病の死亡および入院のリスクを評価した。

方法:

ARIC研究(アテローム性動脈硬化症のリスクを検討する試験)において、糖尿病と診断された高齢者(66~90歳)の前向きコホート研究を分析した。

併存疾患には、「関節炎、癌、CKD、冠動脈疾患、うつ病、肺気腫またはCOPD、心不全、入院の既往、重症低血糖の既往、高血圧、失禁、脳卒中、認知症、フレイル、低身体機能」が含まれている。

Diabetes Care 2021 May; dc203045.

結果:

1,841例の被験者(女性56%、黒人29%)は、32%が健康、42%が複雑/中程度、27%が非常に複雑/悪い(認知症、フレイル、低身体機能を含む)の健康状態に分類された。

追跡期間の6年間(中央値)では、409例(22%)の死亡と4,130例の入院があった。

健康状態における死亡リスク(年齢、性別、人種、血糖降下薬で調整したハザード比)は、それぞれ、

健康:1 (Ref)

複雑/中程度:1.96 (1.45–2.66)

非常に複雑/悪い:4.22 (3.10–5.76)

となり、健康状態の悪化にともない死亡リスクは有意に増加した。

各健康状態と血糖値レベルの死亡リスク(年齢、性別、人種、血糖降下薬で調整したハザード比)で、有意な増加が示されたのは、「非常に複雑/悪い」の健康状態におけるHbA1c<7%と比較したHbA1c≥8%[HR 1.73 (1.10–2.73)]であった。

Diabetes Care 2021 May; dc203045.

健康状態における入院リスク(年齢、性別、人種、血糖降下薬で調整したハザード比)は、それぞれ、

健康:1 (Ref)

複雑/中程度:2.12 (1.83–2.46)

非常に複雑/悪い:3.41 (2.88–4.03)

となり、健康状態の悪化にともない入院リスクは有意に増加した。

各健康状態と血糖値レベルの入院リスク(年齢、性別、人種、血糖降下薬で調整したハザード比)で、有意な増加が示されたのは、「複雑/中程度」の健康状態におけるHbA1c<7%と比較したHbA1c≥8%[HR 1.64 (1.21–2.24)]であった。

Diabetes Care 2021 May; dc203045.

結論:

米国糖尿病学会で定義された健康状態のカテゴリー間で死亡と入院のリスクに実質的な違いがあったが、健康状態に関わらず、HbA1cが7%未満の高齢者におけるこれらのリスクは高くなかった。

本研究結果は、2021年のADAガイドラインを支持しており、一部の高齢者糖尿病では7%未満のHbA1cが妥当な治療目標であることが示された。

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