2型糖尿病患者のライフスタイルと血糖コントロールに対するCOVID-19の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32999133/ 

タイトル:Effect of coronavirus disease 2019 pandemic on the lifestyle and glycemic control in patients with type 2 diabetes: a cross-section and retrospective cohort study

<概要(意訳)>

背景:

糖尿病患者はCOVID-19感染リスクが高く、その後の死亡リスクが高くなる。

COVID-19感染を避ける注意が必要であるが、糖尿病患者に生活を制限させると血糖コントロールが悪化する可能性がある。

しかしながら、コロナ禍の2型糖尿病患者が「メンタルヘルスとライフスタイル」にどのような影響を受けているかは明らかになっていない。

本研究では、コロナ禍における2型糖尿病患者の「ライフスタイルと代謝パラメーター」に対する短期効果を調査した。

方法:

2020年4月16日~5月1日の間に、京都府立医科大学 内分泌・代謝内科学を受診した2型糖尿病患者に「ストレスレベルとライフスタイル」に関するアンケートを実施した。

アンケートでは「ストレスレベル、睡眠時間、運動、総食事摂取量、間食(スナック消費量)、惣菜摂取量」に関する203例分のデータを取得した。

体重またはHbA1cの変化は、アンケート実施時の値と3ヵ月前に記録された値を比較した。

6つの質問で構成されたアンケートは、視覚的アナログ尺度(VASスコア; 0 =大幅に減少、5 =変化なし、10 =大幅に増加)を使用し、各質問のVASスコアがどのように変化したかをスコア化した。

また、患者のVASスコアに基づいて、さらに次のカテゴリ[ストレスの増加(VAS≥6)、睡眠時間の短縮(VAS≤4)、運動の減少(VAS≤4)、総食事摂取量の増加(VAS≥6)、スナック消費量の増加(VAS≥6)、惣菜摂取量の増加(VAS≥6)]を満たしているかを分類した。

結果:

当科を訪問予定の患者564例の内、87例が遠隔医療を受け、127例は未受診であった。

受診した患者350例の内、1例はデータ使用の拒否、121例は2型糖尿病ではなく、4例は過去3ヶ月以内に入院し、22例はアンケート回答が不完全であった。

ゆれに、本研究の適格者は203例であったが、投薬が過去3ヶ月以内に変更された20例を除外し、最終的に183例が本研究の分析対象となった。

なお、これらの患者はCOVID-19に感染はしなかった。

 

被験者の平均年齢は67.4(±11.3)歳であり、62.1%(126/203例)は男性であった。

「ストレスレベルの上昇」は約40%、「運動レベルの低下」は>50%、「総食事摂取量、間食、総菜摂取量の増加」は20%に観察された。

 

「ストレスと運動レベル」の間には「負の相関」があり、「ストレスと総菜摂取量」の間には「正の相関」があった。

「睡眠時間と運動レベル」の間には、「正の相関」があった。

「運動レベルと間食量」の間には、「負の相関」があった。

「総食事摂取量と間食量・総菜摂取量」の間には、「正の相関」があった。

「間食量と総菜摂取量」の間には、「正の相関」があった。

Endocr J. 2021 Feb 28;68(2):201-210.

183例の内、24例の体重データと7例のHbA1cデータは記録されなかった。

全体として、3ヶ月後の体重(n=159)は65.6(±15.3)kgから65.8(±15.2)kg(p=0.126)に増加し、HbA1c(n=176)は7.5(±1.0)%から7.6(±1.1)%(p=0.001)へ増加していた。

「体重の増加」は「運動レベルの低下」と「総食事摂取量または間食量の増加」と関連していた。

「HbA1cの増加」は「総食事摂取量」と関連していた。

Endocr J. 2021 Feb 28;68(2):201-210.

「体重の変化」は、

「運動レベルの低下[0.60(±2.11)vs –0.16(±1.72); p<0.001]」

「総食事量の増加[0.80(±2.06)vs 0.13(±1.93); p=0.010]」

「間食量の増加[0.70(±1.76)vs 0.13(±2.00); p=0.017]」

を報告した人の方が、そうでない人と比較して有意に大きかった。

Endocr J. 2021 Feb 28;68(2):201-210.

「HbA1cの変化」は、

「睡眠時間の短縮[0.34(±0.52)vs 0.13(±0.70); p=0.034]」

「総食事量の増加[0.38(±0.88)vs 0.11(±0.61)]; p=0.038」

を報告した人の方が、そうでない人と比較して有意に大きかった。

Endocr J. 2021 Feb 28;68(2):201-210.

結論:

コロナ禍において、2型糖尿病の多くの患者は「ストレスレベルの増加」と「ライフスタイル要因の変化」を報告した。

これらの「ライフスタイルの変化」は、短期間(3ヶ月)でも「体重とHbA1cレベル」の変化に関連していた。

現状を鑑みると、2型糖尿病患者の血糖コントロールの悪化を防ぐために、ストレスとライフスタイル要因の管理にもっと注意を払うべきである。

また、密の接触を回避した、運動療法または食事療法の更なる研究が必要だろう。

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