PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32943280/
タイトル:Bleeding risks associated with anticoagulant therapies after percutaneous coronary intervention in Japanese patients with ischemic heart disease complicated by atrial fibrillation: A comparative study
<概要(意訳)>
背景:
現在のガイドラインは、安全性の観点から、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対して、3剤併用療法(抗血小板薬2剤+抗凝固薬)の早期終了と直接経口抗凝固薬(DOAC)の使用を推奨している。
しかしながら、ステント留置後のNVAF患者における実臨床での安全性(とくに出血)は、未だ十分に評価されていない。
方法:
本研究は、2012年~2017年の間に、虚血性心疾患(IHD)によりPCIを施行したNVAF(非弁膜症性心房細動)患者の医療データベースを用いた後ろ向きコホート研究である。
主要評価項目は、「臨床的に関連する出血」とした。
副次評価項目は、「個々の出血」とした。
結果:
5,695例が分析対象となり、3,530例はDOACで治療され、2,165例はVKA(ビタミンK拮抗薬)で治療された。
主要評価項目の「臨床的に関連する出血」の発生率(100人/年)は、
DOAC群で6.05、VKA群で8.42となり、
そのハザード比[HR(95%CI)]は、0.79(0.60-1.04)となった(p=0.091)。
「輸血を必要とする出血」の発生率(100人/年)は、
DOAC群で2.51、VKA群で3.79となり、
そのハザード比[HR(95%CI)]は、0.76(0.50-1.15)となった(p=0.197)。
「頭蓋内出血」の発生率(100人/年)は、
DOAC群で1.05、VKA群で1.31となり、
そのハザード比[HR(95%CI)]は、0.76(0.39-1.48)となった(p=0.416)。
「眼内出血」の発生率(100人/年)は、
DOAC群で0.72、VKA群で0.77となり、
そのハザード比[HR(95%CI)]は、0.98(0.42-2.31)となった(p=0.964)。
「上部消化管出血」の発生率(100人/年)は、
DOAC群で1.73、VKA群で1.77となり、
そのハザード比[HR(95%CI)]は、1.10(0.63-1.93)となった(p=0.727)。
「下部消化管出血」の発生率(100人/年)は、
DOAC群で1.05、VKA群で1.85となり、
そのハザード比[HR(95%CI)]は、0.66(0.35-1.23)となった(p=0.189)。
「全出血」の発生率(100人/年)は、
DOAC群で25.02、VKA群で34.82となり、
そのハザード比[HR(95%CI)]は、0.73(0.63-0.84)となった(p<0.001)。
J Cardiol. 2021 Feb;77(2):186-194.
また、主要評価項目(臨床的に関連する出血)の多変量解析により、下記項目に該当する患者の出血リスクが有意に増加することが示された。
高齢者(≧75 to <85 vs <65): 1.89(1.14-3.12)、p=0.013
低体重(>40 to ≦50 vs >60): 1.67(1.08-2.57)、p=0.020
腎障害: 2.03(1.53-2.69)、p<0.001
J Cardiol. 2021 Feb;77(2):186-194.
結論:
NVAF(非弁膜症性心房細動)およびPCI(経皮的冠動脈インターベンション)施行したIHD(虚血性心疾患)患者は、VKA(ビタミンK拮抗薬)よりも、DOAC(直接経口抗凝固薬)で治療する方が、「臨床的に関連する出血」のリスクが低いことが示唆された。