在宅療養患者の退院前または退院時における支援と診療・介護報酬



退院前に行われるカンファレンスでは、入院先の医療機関と自宅療養生活を支援する在宅医療・介護側が一堂に集まるため、多職種間の初顔合わせの場にもなる。

このカンファレンスは、単なる申し送りの場をいうだけではなく、利用者の自宅療養の不安を解消するためのものである。

退院前に行うカンファレンスには、多職種の参加を促すための診療・介護報酬が設けられている。

<入院医療機関の場合>

退院時共同指導料2 400点

利用者の入院先医療機関の医師または医師の指示を受けた看護師等が、退院後の療養生活を支援する医療機関などに対して、在宅療養上必要な説明や指導を行って、その内容を文書にして提供した場合に算定できる報酬である。

1人につき1回算定可能であるが、厚生労働大臣が定める疾病等(特掲診療科の施設基準等別表第3の1の3, p.60参照)

に該当する利用者の場合、カンファレンスを2回以上行った場合は2回まで算定できる。

2回のうち1回は、入院医療機関・在宅側それぞれの医師・看護師・准看護師が共同して指導を行う必要がある。

医療機関や訪問看護ステーションの入院医療機関で行われるカンファレンスに参加できない場合には、ビデオ通話が可能な機器を用いて参加しても、退院時共同指導料を算定できる。

 

医師共同指導加算 300点

カンファレンスに入院医療機関と在宅療養を支援する医師が参加し、共同で指導した場合に加算される報酬である。

 

多機関共同指導加算 2,000点

入院医療機関の医師または看護師等が、退院後の在宅療養を支援する在宅側の医師・看護師等、訪問看護ステーションの看護師等(准看護士な除く)・理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)、薬局の薬剤師、ケアマネージャー、相談支援専門員、歯科医師または歯科衛生士のいずれか3者以上が参加して、共同で指導を行った場合に算定できる。

 

退院前訪問指導料 580点

入院期間が1月を超えると見込まれる患者の円滑な退院のため、家族を訪問し、当該患者は又はその家族等に対して、退院後の在宅での療養上の指導を行った場合に、当該入院中1回(入院後早期に退院前訪問指導の必要があると認められる場合は、2回)に限り算定する。算定の対象は、退院して家庭に復帰する患者であり、特別養護老人ホーム等医師又は看護師等が配置されている施設に入所予定の患者は対象とならない。

医師の指示を受けて保険医療機関の保健師、看護師、理学療法士、作業療法士等が訪問し、指導を行った場合にも算定できる。

 

入退院支援加算

患者が安心・納得して退院し、早期に住み慣れた地域で療養や生活を継続できるように、施設間の連携を推進した上で、入院早期より退院困難な要因を有する患者を抽出し、入退院支援を実施することを評価するものである。

入退院支援加算1

入退院支援加算2

入退院支援加算3

一般病棟入院基本料等

の場合、700点

一般病棟入院基本料等

の場合、190点

1,200点

療養病棟入院基本料等

の場合、1,300点

療養病棟入院基本料等

の場合、635点

 

診療情報提供料Ⅰ 250点

患者の同意を得たうえで、診療状況を示す文書を添え、別の医療機関や市町村、施設等に患者を紹介(診療情報を提供)した場合に、紹介先・情報提供先ごとに患者1人につき月1回算定する。

紹介先・情報提供を特定せず文書のみを交付しただけの場合、紹介先・情報提供先が特別の関係等にある場合は算定できない。

 

退院時リハビリテーション指導料 300点

患者の退院時に当該患者又はその家族等に対して、退院後の在宅での基本的動作能力若しくは応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るための訓練等について必要な指導を行った場合に算定する。

この場合において、同一日に、退院時共同指導料2は、別に算定できない。

退院時リハビリテーション指導料は、指導を行った者及び指導を受けたものが患者又はその家族等であるかの如何を問わず、退院日に1回に限り算定する。

当該患者の入院中主として医学的管理を行った医師又はリハビリテーションを担当した医師が、患者の退院に際し、指導を行った場合に算定できる。

なお、医師の指示を受けて、保険医療機関の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が保健師、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士とともに指導を行った場合にも算定できる。

 

<在宅医の場合>

退院時共同指導料1 1,500点  or  900点

退院後の自宅療養を支援する医療機関が算定する。

在宅療養支援診療所とそれ以外の場合で報酬が異なる。

・在宅療養支援診療所の場合 1,500点

・在宅療養支援診療所以外の場合 900点

 

~算定ポイント~

・入院中1回に限り算定。

・厚生労働大臣が定める疾病等(特掲診療科の施設基準等別表第3の1の3, p.60参照)。

・厚生労働大臣が定める状態等別表第8に該当する利用者の場合は、特別管理指導加算の算定が可能。

・往診料、在宅患者訪問診療科との同日算定は不可。

・利用者の看護を担当する者(家族や看護を担当する者など)に対して指導を行った場合も算定可。

・カルテには要点を記載、または文書の写しを添付する。

・他の医療機関や社会福祉施設、介護老人保健施設に入院、入所する利用者、死亡退院した利用者の場合は算定不可。

・指導した内容等を利用者に文書で渡す。

 

特別管理指導加算 200点

厚生労働大臣が定める状態等別表第8に該当する利用者の場合に加算する。

 

<訪問看護ステーションの場合>

退院時共同指導加算 8,000円  or  600単位

医療保険・介護保険それぞれにある。

 

[医療保険]

訪問介護管理療養費の加算(8,000円)として算定する。

医療機関や介護医療院、介護老人保健施設からの退院・退所の際に看護師等(准看護師が行った場合は算定不可)が、主治医や医療機関などの職員とともに利用者や介護をする家族などに対して、在宅療養に必要な指導を行った場合に算定できる。

指導した内容を文書にして、利用者に提供する必要がある。

算定するのは、初回の訪問看護実施日となる。

 

通常、2回以上行っても、1利用者に対して1回しか算定できないが、厚生労働大臣が定める疾病等別表第7と厚生労働大臣が定める状態等別表第8に該当する利用者に対して、2回以上行った場合(同日2回は不可)には2回まで算定できる。

 

[介護保険]

訪問看護の加算として算定(1回600単位)する。

医療保険の場合と同じように、医療機関や介護医療院、介護老人保健施設からの退院・退所の際に看護師等(准看護師が行った場合は算定不可)が、主治医や医療機関などの職員とともに利用者や介護をする家族などに対して、在宅療養に必要な指導を行った場合に算定できる。

指導した内容を文書にして、利用者に提供する必要がある。

厚生労働大臣が定める状態等別表第8の利用者に2回以上(同日2回は不可)行った場合は2回まで算定できる。

算定するのは、初回の訪問看護実施日であるが、初回加算を算定する場合は、退院時共同指導加算は算定できない。

 

特別管理指導加算 200点

厚生労働大臣が定める状態等別表第8に該当する利用者に対して、指導を行った場合に加算できる。

この加算は、医療保険のみで、介護保険にはない。

 

~算定ポイント~

・医療機関だけでなく、介護医療院・介護老人保健施設からの退院・退所の際にも算定可能。

・准看護師が行った場合は、算定不可。

・算定するのは初回の訪問看護時。

・指導内容を文書にして、利用者に提供する必要がある。

・厚生労働大臣が定める「疾病等別表第7」と「状態等別表第8」に該当する利用者に対して複数日に指導した場合、2回まで算定可能。

・厚生労働大臣が定める「状態等別表第8」に該当する利用者には、特別管理指導加算も算定可能。

補足)厚生労働大臣が定める疾病等別表第7を下記に示す

補足)厚生労働大臣が定める状態等別表第8を下記に示す

 

<居宅介護支援事業所の場合>

ケアマネージャーが退院前カンファレンスに参加した場合、退院・退所加算が算定できる。

カンファレンスに参加せず、医療機関から情報提供を受けただけでも算定可能である。

情報提供の回数やカンファレンスに参加した場合によって報酬が異なる。

【ケアマネージャーが退院前カンファレンスに参加した場合の退院・退所加算】

(Ⅰ)イ

医療機関・介護施設の職員から利用者に関する必要な情報提供を1回受けた場合に算定

カンファレンスに参加した場合はロを算定

450単位/1回

(Ⅰ)ロ

600単位/1回

(Ⅱ)イ

医療機関・介護施設の職員から利用者に関する必要な情報提供を2回受けた場合に算定

1回はカンファレンスに参加した場合はロを算定

600単位/1回

(Ⅱ)ロ

750単位/1回

(Ⅲ)

医療機関・介護施設の職員から利用者に関する必要な情報提供を3回受け、うち1回はカンファレンスに参加した場合に算定

900単位/1回

 

【在宅療養患者の退院前または退院時における診療報酬と介護報酬】

入院医療機関

 

□退院時共同指導料2 400点(1~2回)

□医師共同指導加算 300点

□多機関共同指導加算 2,000点

□退院前訪問指導料 580点(1~2回)

□入退院支援加算 190~1,200点

□診療情報提供料Ⅰ 250点

□退院時リハビリテーション指導料 300点

在宅医者

 

□退院時共同指導料1 1,500点 or 900点

□条件により、特別管理指導加算 2,000円

訪問看護ステーション

 

□退院時共同指導加算 8,000円 or 600単位(1~2回)

□条件により、特別管理指導加算 2,000円

居宅介護支援事業所

(ケアマネージャー)

□退院・退所加算 450~900単位/回

※退院前のカンファレンスの算定要件等においては、

入院側、在宅側、訪問看護ステーションが同法人、開設者や代表者が同一などの特別な関係でも算定可能である。

 

【参考情報】

別表第三の一の三 退院時共同指導料1及び退院時共同指導料2を2回算定できる疾病等の患者並びに頻回訪問加算に規定する状態等にある患者

https://recenavi.net/2020/stokkei/tobe03-1-3.html 

訪問看護における別表7、別表8とは?

https://ewellibow.jp/useful/useful_20180921/ 

訪問看護における退院時共同指導加算、特別管理指導加算、退院支援指導加算とは?

https://ads.kaipoke.biz/basic_knowledge/care_insurance_and_law/addition_subtraction/visit_nursing/joint_guidance_at_discharge.html 

入退院支援加算

https://recenavi.net/2022/A/A246.html 

入退院支援加算の施設基準

https://recenavi.net/2022/skihon/ki0835-6.html 

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