日本人心房細動患者の虚血性脳卒中リスクを予測するHELT-E2S2スコア



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33762526/

タイトル:A Novel Risk Stratification System for Ischemic Stroke in Japanese Patients With Non-Valvular Atrial Fibrillation

<概要(意訳)>

背景:

日本の主要な5つの心房細動レジストリ(伏見AFレジストリ、心研データベース、慶應大学心血管研究、北陸Plus心房細動レジストリ)を分析することによって、日本の非弁膜性心房細動(NVAF)患者における虚血性脳卒中の独立した危険因子を特定した。

方法:

日本人NVAF患者における虚血性脳卒中リスクスキームの予測値を評価した。

16,918例の内、12,289例(年齢 70.2±11歳、女性 31%、CHADSスコア 1.7±1.3点、CHADS-VAScスコア 2.9±1.7点、高血圧 73%、脳卒中の既往 14%; 永続性/持続性AF 55%、ワルファリン 64%、直接経口抗凝固薬(OAC) 10%)のNVAF患者が分析された(追跡期間 649±181日)。

 

各危険因子のハザード比(HR)は、調整されたCoxハザード比例分析を使用して決定された。

虚血性脳卒中のスコアリングシステムは、HRを対数変換することによって作成され、C統計量(ROC曲線の曲線下面積 AUC)によって推定された。

結果:

虚血性脳卒中の重要な6つの危険因子は、高齢者(75〜84歳[E]、HR=1.74)、超高齢者(85歳以上[EE]、HR=2.41)、高血圧([H]、HR=1.60)、低BMI<18.5 kg m([L]、HR=1.55)、持続性/永続性AF([T]、HR=1.59)、脳卒中の既往(虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作[S]、HR=2.75)となった。

 

各危険因子におけるスコアの割り当ては、2点は「超高齢者(85歳以上[EE])、脳卒中の既往(虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作[S])」、1点は「その他危険因子」となった。

Circ J. 2021 Mar 25. doi: 10.1253/circj.CJ-20-1075.

このHELT-ESスコアを使用して、追跡期間中の虚血性脳卒中発症率を層別化すると

0点 [6/1,077(0.6%)]

1点 [35/3,301(1.1%)]

2点 [55/3,983(1.4%)]

3点 [57/ 2,190(2.6%)]

≧4点 [88 / 1,738(5.1%)]となった。

 

HELT-ESスコア0点を参照とした場合のハザード比は、それぞれ、

1点 [HR 1.82(95%CI 0.76–4.32); p=0.18)]

2点 [HR 2.34(95%CI 1.01–5.43); p=0.04)]

3点 [HR 4.51(95%CI 1.95–10.46); p<0.001)]

≧4点 [HR 9.23(95%CI 4.04–21.11); p<0.001)]

となり、一致した結果が示された。

 

また、OAC未服用患者(n=3,197)とOAC服用患者(n=9,092)におけるハザード比も全体と一貫した結果が示された。

 

全体(n=12,289)におけるHELT-ESスコアのC統計量は、0.681(95%CI  0.647–0.714)であり、

CHADSスコア 0.647(95%CI  0.614–0.681);p=0.027

およびCHADS-VAScスコア 0.641(95%CI  0.608–0.673);p=0.008

を使用した場合よりも有意に高かった。

Circ J. 2021 Mar 25. doi: 10.1253/circj.CJ-20-1075.

OAC未服用患者(n=3,197)と比較した、OAC服用患者(n=9,092)のHELT-ESスコア別のハザード比は、それぞれ、

0点: [HR 0.19(95%CI 0.02–1.59); p=0.08)]

1点: [HR 0.73(95%CI 0.37–1.43); p=0.35)]

2点: [HR 0.46(95%CI 0.26–0.80); p=0.005)]

3点: [HR 0.49(95%CI 0.27–0.87); p=0.01)]

≧4点: [HR 0.58(95%CI 0.37–0.93); p=0.02)]となった。

 

人年法(年間100人当たり)による虚血性脳卒中のイベント発症も同様の結果が示された。

OAC未服用のHELT-ESスコア:

0点(0.57)、1点(0.73)、2点(1.37)、3点(2.59)、4点(3.96)、≧5点(5.82)

OAC服用のHELT-ESスコア:

0点(0.10)、1点(0.52)、2点(0.62)、3点(1.26)、4点(2.45)、≧5点(3.01)

Circ J. 2021 Mar 25. doi: 10.1253/circj.CJ-20-1075.

結論:

日本人の非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中の発症率を予測する為に、新しいリスク層別化システムのHELT-ESスコアを開発した。

このスコアは、CHADSおよびCHADS-VAScスコアよりも有用であることが示唆された。

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