日本における急性心不全発症率の将来推定



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33678754/ 

タイトル:Estimating Incidence of Acute Heart Failure Syndromes in Japan ― An Analysis From the KUNIUMI Registry ―

<概要(意訳)>

背景:

日本で最大の離島の1つである淡路島は、2015年における65歳以上の人口は34.2%を占めていた。

これは、日本人口の2035年における65歳以上の推定割合と同様である。

また、淡路島は半閉鎖地域であり、移住率が低いため、より正確なイベント発生率とフォローアップデータを以前のレジストリデータと比較することが可能である。

本研究(KUNIUMI Registry)では、日本における急性心不全の発症率が将来どのようになるかを予測するために、淡路島における急性心不全の発症率と特徴を調査した。

方法:

2015年1月~2017年12月の間に8病院で入院した患者の主な原因が、「心不全」である患者をスクリーニングした。

結果:

合計1,155例の患者が特定され、最終的に1,089例の急性心不全患者が登録された。

その内、743例(68.2%)は初回入院(de novo)患者であり、346例は再発入院患者であった。

初回入院患者の50.6%は女性で、平均年齢は82.1±11.5歳(平均±SD)、NYHA分類Ⅲ/Ⅳは94.1%であった。

 

初回入院患者(743例)の内、63.8%は女性で、51.3%(381例)は85歳以上、HFpEF(LVEF≧50%)は65.0%であった。

年齢を3区分(64歳以下、65~84歳、85歳以上)に分けた場合、「女性、HFpEF、心房細動、院内死亡率」の割合は加齢とともに有意に高くなり、一方で「糖尿病」の割合は有意に低くなった。

左室駆出率を2区分(HFrEF、HFpEF)に分けた場合、「85歳以上、女性、高血圧、院内死亡率」の割合はHFpEFの方が有意に高くなった。

Circ J. 2021 Mar 5. doi: 10.1253/circj.CJ-20-1154.

「淡路島」における2015~2017年の急性心不全の発症率は、男性と女性で、それぞれ年間10万人当たり、192と177であった。

(年齢と性別で調整した2015年の日本における急性心不全の発症率は、男性と女性で、それぞれ年間10万人当たり、133.8と120.0であった。)

 

「性別」における急性心不全の発症率は、男性では85~89歳の間にピークに達したが、女性では加齢とともに増加し続けた。

 

「年齢」における急性心不全の発症率は、55~59歳の男性と女性で、それぞれ年間10万人当たり、62と30であったが、90歳以上では2,196と1,794と指数関数的に増加した。

HFpEFの発症率は、男女とも、加齢と共に同様に増加した。

Circ J. 2021 Mar 5. doi: 10.1253/circj.CJ-20-1154.

「日本における急性心不全による入院患者」の将来推定患者数は、2015年は約159,702例であったが、2040年には252,153例に増加し、その後はプラトーに達すると推定されている。

また、85歳以上の割合は、2015年は42.6%であったが、2040年には62.5%まで増加すると予測されている。

 

「日本における急性心不全で入院したHFpEF患者」の将来推定患者数は、2015年は急性心不全で入院した患者の52%(約83,000例)であったが、2055年には57.3%(144,000例)まで増加することが予測されている。

また、HFrEF患者の割合も毎年増加することが予測されるが、その増加率はHFpE患者と比べて低くなる傾向があり、より早期にプラトーに達することが予測される。

Circ J. 2021 Mar 5. doi: 10.1253/circj.CJ-20-1154.

結論:

本研究において、日本では加齢とともに急性心不全で入院する患者が劇的に増加することが示唆された。

この結果は、日本および急速に人口が高齢化する他の発展途上国において、心不全の負担を軽減するために必要な公衆衛生対策の重要性を再強調する。

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