URL:https://www.thelancet.com/journals/landia/article/PIIS2213-8587(21)00050-4/fulltext
タイトル:Prescription of glucose-lowering therapies and risk of COVID-19 mortality in people with type 2 diabetes: a nationwide observational study in England
<概要(意訳)>
背景:
2型糖尿病患者の高血糖はCOVID-19関連死の独立した危険因子である。
COVID-19 感染前における血糖降下薬の処方と2型糖尿病患者のCOVID-19関連死との関連性が報告されているが、研究規模が小さく、少数の薬剤に限定されている。
本研究では、「異なるクラスの血糖降下薬の処方」と「2型糖尿病患者のCOVID-19関連死リスク」の間に関連があるかどうかを調査した。
方法:
本研究は、イギリス全土の2型糖尿病患者を対象とした糖尿病データベース(2003年~)を使用した観察コホート研究である。
人口統計学的、社会経済的、臨床的要因の共変量を調節したCox回帰モデルを使用して、各血糖降下薬を処方された患者のCOVID-19関連死のハザード比(HR)を推定した。
結果:
分析対象には2,851,465例が含まれ、その内、男性は1,593,730例(55.9%)、白人は1, 884 ,675例(66.1%)、アジア人は399,540例(14.0%)、黒人は135, 860(4.8%)、年齢の中央値は67歳(IQR 57–77)であった。
最も一般的に処方された血糖降下薬は、メトホルミン(1,800,005例 [63.1%])、SU薬(561,290例 [19.7%])、DPP-4阻害薬(479,555例 [16.8%])、インスリン(350,960例 [12.3%])、SGLT2阻害薬(266,505例 [9.3%])、GLP-1受容体作動薬(110,820例 [3.9%])、チアゾリジンジオン(TZD; 60,085例 [2.1%])、メグリチニド(速効型インスリン分泌促進; 4,440例 [0.2%])、α-グルコシダーゼ阻害剤(1,665例 [0.2%])の順であった。
1,517,762人/年の追跡期間中に、全体コホート2,851,465例の内、13,479例(0.5%)のCOVID-19関連死があった。
これは年間1000人あたり8.9(95%CI 8.7–9.0)の粗死亡率に相当する。
SGLT2阻害薬を処方された患者の粗死亡率は、3.2(95%CI 2.9–3.5)、α-グルコシダーゼ阻害薬を処方された患者の粗死亡率は、17.0(95%CI 8.4–25.5)であった。
患者特性の違いを考慮した各血糖降下薬におけるCOVID-19 関連死の調整ハザード比(各血糖降下薬を処方されていない患者と比較して)は、それぞれ、
メトホルミン:HR 0.77(95%CI 0.73–0.81)
メグリチニド:HR 0.75(95%CI 0.48–1.17)
SGLT2阻害剤:HR 0.82(95%CI 0.74–0.91)
チアゾリジンジオン:HR 0.94(95%CI 0.82–1.07)
SU薬:HR 0.94(95%CI 0.89–0.99)
GLP-1受容体作動薬:HR 0.94(95%CI 0.83–1.07)
DPP-4阻害剤:HR 1.07(95%CI 1.01–1.13)
α-グルコシダーゼ阻害剤:HR 1.26(95%CI 0.76–2.09)
インスリン:HR 1.42(95%CI 1.35–1.49)となった。
Published online March 30, 2021 https://doi.org/10.1016/S2213-8587(21)00050-4
「年齢、性別、心血管疾患の既往、eGFR」による探索的サブグループ分析では、COVID-19 関連死のリスクが低いメトホルミンとリスクが高いインスリンを除いて、わずかな傾向の違いはあったが、ほとんどは一貫した結果であった。
Published online March 30, 2021 https://doi.org/10.1016/S2213-8587(21)00050-4
結論:
本研究より、いくつかの血糖降下薬はCOVID-19 関連死リスクとの関連が示唆されたが、2型糖尿病の様々な進行ステージで使用する薬剤クラスを考慮すると、そのリスクの差は小さく、適応症の交絡による影響が考えられる。
ゆえに、コロナ禍の2型糖尿病患者の血糖降下薬において、処方の変更を支持する明確な理由はないだろう。