PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33175585/
タイトル:Effect of Empagliflozin on Cardiovascular and Renal Outcomes in Patients With Heart Failure by Baseline Diabetes Status: Results From the EMPEROR-Reduced Trial
<概要(意訳)>
背景:
SGLT2阻害薬は、駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の転帰を改善するが、血糖状態(非糖尿病、耐糖能異常、糖尿病)が心不全および腎イベント抑制に影響を与えるかどうかについての追加情報が必要である。
方法:
NYHAクラスⅡ~Ⅳ度で左室駆出率が40%以下の心不全(HFrEF)患者をガイドラインで推奨される治療法に加えて、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)群またはプラセボ群に無作為化した。
事前に規定していた糖尿病の有無別におけるSGLT2阻害薬の効果比較のサブ解析を実施した。
結果:
登録された被験者3,730例(追跡期間の中央値16ヶ月)の内、1,856例(50%)が糖尿病、1,268例(34%)が前糖尿病[HbA1c 5.7-6.4%]、606例(16%)が正常血糖[HbA1c<5.7%]であった。
平均HbA1cは、糖尿病患者で7.4±1.6%、前糖尿病患者で5.9±0.2%、正常血糖患者で5.3±0.3%であった。
全体における、プラセボ群と比較した、SGLT2阻害薬群の評価項目のハザード比[HR(95%CI)]、また全体と糖尿病状態(正常血糖、前糖尿病、糖尿病)間における交互p値は、それぞれ、
主要評価項目(初発の心血管死または心不全入院までの期間):0.75(0.65-0.86)、交互p=0.48
重要な副次評価項目(初発かつ再発の心不全による入院):0.70(0.58-0.85)、交互p=0.28
副次評価項目
(初発の腎複合アウトカム):0.50(0.32-0.77)、交互p=0.73
(初発の心不全による入院):0.69(0.59-0.81)、交互p=0.49
(心血管死までの期間):0.92(0.75-1.12)、交互p=1.00
となり、糖尿病状態に関わらず全体の結果と一貫した「心血管・腎アウトカム」の効果が示された。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):337-349.
また、ベースラインのHbA1c(5%~12%)を連続変数として分析した場合、主要評価項目(初発の心血管死または心不全入院までの期間)に対するSGLT2阻害薬群の効果にも一貫性が示された(交互p=0.40)。
また、SGLT2阻害薬は、前糖尿病または正常血糖の患者のHbA1cを低下させず、低血糖リスクを上昇させなかった。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):337-349.
有害事象による治験薬の投与中止率は、非糖尿病患者ではSGLT2阻害薬群で147例(15.7%)、プラセボ群で152例(16.2%)、糖尿病患者ではSGLT2阻害薬群で175例(18.9%)、プラセボ群で176例(19.0%)であった。
性感染症以外の有害事象において、SGLT2阻害薬群で有意な増加はなく、糖尿病の有無においても同様であった。
低血糖の発生率は、両群において、非糖尿病患者よりも糖尿病患者でより高かった。
また、非糖尿病患者に介助を必要とする重症低血糖は発生しなかった。
結論:
EMPEROR-Reduced試験(駆出率が低下した慢性心不全患者を対象としたエンパグリフロジンの転帰試験)において、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)は、ベースラインの糖尿病状態とHbA1cに関わらず、駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者の心血管および腎転帰を有意に改善することが示された。