PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33459776/
タイトル:Influence of neprilysin inhibition on the efficacy and safety of empagliflozin in patients with chronic heart failure and a reduced ejection fraction: the EMPEROR-Reduced trial
<概要(意訳)>
目的:
駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者を対象に、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)の心血管・腎アウトカムの効果に対するサクビトリル/バルサルタン(ARNI)の影響を評価した。
方法:
EMPEROR-Reduced試験(追跡期間中央値16ヶ月)では、心不全のガイドライン推奨治療に加えて、駆出率が40%以下の心不全(HFrEF)患者3,730例をSGLT2阻害薬群(エンパグリフロジン10㎎/日)またはプラセボ群に無作為に割り付けた。
ベースラインでは、727例(19.5%)の被験者がアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)を投与されていた。
エンパグリフロジンの心血管・腎アウトカムの効果に対するANRIの影響を評価する本研究は、事前に規定した12のサブグループ解析の一つである。
結果:
ARNIを投与されている被験者は、その未投与の被験者と比較して、「収縮期血圧(p<0.0001)、心拍数(p<0.0001)、NT-proBNP(p=0.0001)」がよりコントロールされ、「植込み型除細動器、心臓再同期療法」の心臓デバイス治療(p<0.0001)がより施行されていた。
「心血管死または心不全による入院」における、ARNI投与SGLT2阻害薬群とARNI未投与SGLT2阻害薬群のプラセボ群と比較した、各々のハザード比[HR(95%CI)]と交互p値は、
ARNI+SGLT2阻害薬群:0.64(95%CI 0.45-0.89)、p=0.0094
SGLT2阻害薬群:0.77(95%CI 0.66-0.90)、p=0.0008
となり、ARNIの有無に関わらず、SGLT2阻害薬の効果は一貫していることが示された(交互p=0.31)。
「初発または再発の心不全による入院」における、ARNI投与SGLT2阻害薬群とARNI未投与SGLT2阻害薬群のプラセボ群と比較した、各々のハザード比[HR(95%CI)]と交互p値は、
ARNI+SGLT2阻害薬群:0.65(95%CI 0.42-1.00)、p=0.052
SGLT2阻害薬群:0.71(95%CI 0.58-0.88)、p=0.002
となり、ARNIの有無に関わらず、SGLT2阻害薬の効果は一貫していることが示された(交互p=0.72)。
「eGFRの平均低下率(mL/min/1.73m2/年)」における、ARNI投与SGLT2阻害薬群とARNI未投与SGLT2阻害薬群のプラセボ群と比較した、各々のハザード比[HR(95%CI)]と交互p値は、
ARNI+SGLT2阻害薬群:+1.92 ± 0.80、p=0.016
SGLT2阻害薬群:+1.71 ± 0.35、p<0.0001
となり、ARNIの有無に関わらず、SGLT2阻害薬の効果は一貫していることが示された(交互p=0.81)。
「陽性変力作用(心筋収縮力を上昇させる)または昇圧薬または機械的または外科的介入を必要とする心不全入院までの期間」に関しては、交互作用が認められ(交互p=0.049)、ARNI投与SGLT2阻害薬群[HR 0.45 (0.25–0.80)、p=0.007]の方が、ARNI未投与SGLT2阻害薬群[HR 0.84 (0.66–1.08)、p=0.18]よりも、有意な効果を示した。
Eur Heart J. 2021 Feb 11;42(6):671-680.
バイタルサインとバイオマーカー(血圧、体重、血糖値、尿酸値、NT-proBNP値、ヘマトクリット値)に与える影響は、ARNI投与SGLT2阻害薬群とARNI未投与SGLT2阻害薬群の間に交互作用は認められなかった。
「高カリウム血症、低カリウム血症、低血圧、低血糖」に関連する有害事象は、プラセボ群とSGLT2阻害薬群で類似しており、ARNI有無の影響を受けていなかった。
また、ARNIによる治療の交互作用を分析すると、ARNI投与SGLT2阻害薬群の「体液量減少」の頻度は数値的に高かった(15.0% vs 9.6%)が、「腎機能悪化」の頻度は数値的に変わらなかった(9.4% vs 9.4%)。
Eur Heart J. 2021 Feb 11;42(6):671-680.
結論:
心不全および腎イベントリスクを低減するSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)の効果は、サクビトリル/バルサルタン(ARNI)の治療を受けていても影響を受けないことが示された。
ゆえに、SGLT2阻害薬とネプライシン阻害薬の併用治療は、実質的なベネフィットの増加が期待できる可能性があるだろう。
【参考情報】
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)の解説
アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)の解説|日経メディカル処方薬事典 (nikkeibp.co.jp)
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