PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33095032/
タイトル:Cardiac and Kidney Benefits of Empagliflozin in Heart Failure Across the Spectrum of Kidney Function: Insights From EMPEROR-Reduced
<概要(意訳)>
背景:
EMPEROR-Reduced(対象:駆出率が低下した慢性心不全患者、追跡期間中央値:16ヶ月)試験では、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)は、糖尿病の有無に関わらず、「心血管死、心不全による(総)入院」を減少させ、腎機能の低下を遅らせた。
本研究では、エンパグリフロジンの心血管・腎アウトカムに対する腎機能の影響を調査した。
方法:
この事前に指定された分析では、被験者はベースラインの腎機能でCKDの有無によって分類された。
CKDの定義は、「eGFR<60 ml/min/1.73m2または尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)>300 mg/g」とした。
非CKDの定義は、「eGFR≧60 ml/min/1.73m2またはUACR≦300 mg/g」とした。
臨床アウトカム[心血管死または心不全による入院、初発および再発の心不全による入院、腎複合転帰(慢性透析、腎移植、40%以上のeGFRの持続的低下:但し、ベースラインのeGFR>30の場合はeGFR<15の持続的低下、eGFR≦30の場合はeGFR<10の持続的低下)]は、ベースラインの「CKD有無、eGFRカテゴリー(<30、30–44、45–59、60–89、≧90 ml/min/1.73m2)、UACRカテゴリー(<30、30–300、>300mg g)」で評価した。
また、付加的臨床アウトカム(全ての原因による入院、心血管死、全ての原因による死亡、腎複合転帰または心血管死または心不全による入院、腎複合転帰または全ての原因による死亡、急性腎障害)をベースラインの「CKD有無」で評価した。
結果:
「臨床アウトカム」に対する全体アウトカムのハザード比[HR(95%CI)]とベースラインの腎機能カテゴリー別における全体アウトカムに対する交互p値は、それぞれ、
心血管死または心不全による入院:0.75(0.65-0.86)
CKD有無(交互p=0.63)
eGFRカテゴリー(交互p=0.12)
UACRカテゴリー(交互p=0.27)
初発および再発の心不全による入院:0.70(0.58-0.85)
CKD有無(交互p=0.78)
eGFRカテゴリー(交互p=0.06)
UACRカテゴリー(交互p=0.32)
腎複合転帰:0.50(0.32-0.77)
CKD有無(交互p=0.78)
eGFRカテゴリー(交互p=0.74)
UACRカテゴリー(交互p=0.16)
となり、ベースラインの広範囲における腎機能に関わらず、SGLT2阻害薬の一貫した効果が示された。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):310-321.
また、「付加的臨床アウトカム」に対する全体アウトカムのハザード比[HR(95%CI)]とベースラインのCKD有無における全体アウトカムに対する交互p値は、それぞれ、
全ての原因による入院:0.81(0.73-0.90)、交互p=0.14
心血管死:0.92(0.75-1.12)、交互p=0.53
全ての原因による死亡:0.92(0.77-1.10)、交互p=0.76
腎複合転帰または心血管死または心不全による入院:0.71(0.62 -0.82)、交互p=0.69
腎複合転帰または全ての原因による死亡:0.84(0.71-0.99)、交互p=0.80
急性腎障害:0.66(0.45-0.96)、交互p=0.53
となり、ベースラインのCKD有無に関わらず、SGLT2阻害薬の一貫した効果が示された。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):310-321.
124週における全体の「eGFR変化/年」の平均絶対差(95%CI)は、1.73 (1.10–2.37) ml/min/1.73m2となり、SGLT2阻害薬群の方が有意にeGFRの低下を抑制していた(p<0.001)。
ベースラインの「CKD有無、eGFRカテゴリー(<30、30–44、45–59、60–89、≧90 ml/min/1.73m2)、UACRカテゴリー(<30、30–300、>300mg g)」において、交互作用はCKD有無(交互p=0.045)とeGFRカテゴリー(交互p=0.033)で認められ、「非CKDとeGFR≧45」の被験者において、SGLT2阻害薬群の方がよりeGFRの低下を抑制することが示された。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):310-321.
全ての有害事象発生率は、CKDの有無に関わらず、SGLT2阻害薬群(非CKD:71.9%、CKD:80.2%)とプラセボ群(非CKD:73.5%、CKD:82.9%)で同程度あり、エンパグリフロジンの忍容性は高かった。
結論:
EMPEROR-Reduced試験において、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)は、ベースラインのCKD有無、腎機能障害の重症度に関わらず、主要な有効性アウトカムに有益な効果をもたらし、腎機能の低下速度を遅らせることが示された。