高齢2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の骨折リスク



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34705014/ 

タイトル:Association of Sodium-Glucose Cotransporter-2 Inhibitors With Fracture Risk in Older Adults With Type 2 Diabetes

<概要(意訳)>

背景:

SGLT2阻害薬が、臨床試験以外の高齢2型糖尿病患者の骨折リスクの増加と関連しているかどうかは不明である。

本研究では、高齢2型糖尿病患者の新規治療を「DPP-4阻害薬またはGLP-1 受容体作動薬」で開始するグループと「SGLT2阻害薬」で開始するグループの「偶発的な骨折リスク」を比較した。

方法:

2013年4月~2017年12月まで、メディケア(補足:高齢者および障害者向け公的医療保険制度であり、連邦政府が管轄している社会保障プログラム。原則として、アメリカ合衆国に合法的に5年以上居住している65歳以上のすべての人が給付の対象となる。)に登録された65歳以上の高齢2型糖尿病患者を含む人口ベースの新規ユーザーコホート研究である。

データ分析は、2020年10月~2021年4月まで実施した。

骨折の既往のない高齢2型糖尿病患者の新規治療を開始したSGLT2阻害薬[カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エンパグリフロジン]、DPP-4阻害薬[アログリプチン、リナグリプチン、サクサグリプチン、シタグリプチン]、GLP-1 受容体作動薬[アルビグルチド(日本未発売)、デュラグルチド(トルリシティ®)、エキセナチド(バイエッタ®/ビデュリオン®)、リラグルチド(ビクトーザ®)、リキシセナチド(リキスミア®)、またはセマグルチド(オゼンピック®)]の各グループを傾向スコアマッチング法により、1:1:1にマッチングした。

主要評価項目は、「30日以内の介助が必要な非外傷性骨盤骨折、手術を必要とする股関節骨折、または上腕骨、橈骨、尺骨骨折の複合」とした。

副次評価項目は、「転倒、低血糖、失神」とした。

その他評価項目は、「糖尿病性ケトアシドーシス、心不全による入院」とした。

結果:

1:1:1の傾向スコアマッチングの後、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬による新規治療を開始した各45,889例を特定し、合計137,667例(平均年齢72歳、男性47%)になった。

SGLT2阻害薬群では、29,396例(64%)がカナグリフロジンを服用していた。

マッチング後、すべての共変量はバランスがとれており、標準化差は0.1未満であった。

骨折転帰の追跡期間の中央値は、SGLT2阻害薬群で262日、DPP-4阻害薬群で278日、GLP-1受容体作動薬群で249日であった。

 

マッチング後、合計501件の骨折イベントが観察された。

 SGLT2阻害薬群では158件(4.69/1,000人/年)、DPP-4阻害薬群では195件(5.26/1,000人/年)、GLP-1受容体作動薬群では148件(4.715.26/1,000人/年)。

 

DPP-4阻害薬群とGLP-1 受容体作動薬群と比較したSGLT2阻害薬群の「骨折リスク」は、それぞれ、

HR 0.90(95%CI 0.73-1.11)

HR 1.00(95%CI 0.80-1.25)

となり、「骨折リスク」には差がないことが示された。

JAMA Netw Open. 2021 Oct 1;4(10):e2130762.

DPP-4阻害薬群とGLP-1 受容体作動薬群と比較したSGLT2阻害薬群の「転倒リスク」は、それぞれ、

HR 0.82(95%CI 0.77-0.87)

HR 0.96(95%CI 0.90-1.03)

となり、「転倒リスク」は、DPP-4阻害薬より低く、GLP-1 受容体作動薬とは差がないことが示された。

 

DPP-4阻害薬群とGLP-1 受容体作動薬群と比較したSGLT2阻害薬群の「低血糖リスク」は、それぞれ、

HR 0.75(95%CI 0.67-0.84)

HR 0.90(95%CI 0.79-1.01)

となり、「低血糖リスク」は、DPP-4阻害薬より低く、GLP-1 受容体作動薬とは差がないことが示された。

 

DPP-4阻害薬群とGLP-1 受容体作動薬群と比較したSGLT2阻害薬群の「失神リスク」は、それぞれ、

HR 0.95(95%CI 0.83-1.09)

HR 0.89(95%CI 0.78-1.03)

となり、「失神リスク」には差がないことが示された。

 

DPP-4阻害薬群とGLP-1 受容体作動薬群と比較したSGLT2阻害薬群の「糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)リスク」は、それぞれ、

HR 1.29(95%CI 0.96-1.74)

HR 1.58(95%CI 1.14-2.18)

となり、「DKAリスク」は、DPP-4阻害薬と同等、GLP-1 受容体作動薬より高いことが示された。

 

DPP-4阻害薬群とGLP-1 受容体作動薬群と比較したSGLT2阻害薬群の「心不全による入院リスク」は、それぞれ、

HR 0.42(95%CI 0.37-0.48)0.42 (0.37-0.48)

HR 0.69(95%CI 0.59-0.80)0.69 (0.59-0.80)

となり、「心不全による入院リスク」はSGLT2阻害薬群の方が低いことが示された。

 

また、DPP-4阻害薬群とGLP-1 受容体作動薬群と比較したSGLT2阻害薬群の「骨折リスク」を「性別(男/女)、虚弱性(非虚弱/前虚弱/虚弱)、年齢(75歳未満/以上)、インスリン使用(有/無)」のカテゴリー別にサブ解析したところ、一貫した(差がない)結果が示された。

JAMA Netw Open. 2021 Oct 1;4(10):e2130762.

結論:

メディケアに登録された高齢2型糖尿病患者の新規治療において、SGLT2阻害薬の使用は、DPP-4阻害薬またはGLP-1 受容体作動薬と比較して、非外傷性骨折のリスク増加とは関連していないことが示された。

また、この結果は、性別、虚弱性、年齢、インスリン使用に関わらず一貫していた。

本研究は、ランダム化比較試験以外の高齢2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の安全性プロファイルを評価する追加エビデンスとなり、臨床診療におけるSGLT2阻害薬のリスクベネフィットバランスを更に特徴づけるだろう。

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