HFrEF患者におけるMRAとSGLT2阻害薬の心血管アウトカムに対する相互作用



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33736821/ 

タイトル:Interplay of Mineralocorticoid Receptor Antagonists and Empagliflozin in Heart Failure: EMPEROR-Reduced

<概要(意訳)>

背景:

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)とSGLT2阻害薬は、駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者の臨床経過に好影響を与えることが知られている。

本研究では、EMPEROR-Reduced試験におけるSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)とMRAの相互作用の影響を評価した。

方法:

HFrEF患者3,730例を対象にエンパグリフロジン10㎎/日とプラセボの心血管アウトカムの効果を比較したEMPEROR-Reduced試験の2次分析を実施した。

結果:

EMPEROR-Reduced試験では、無作為化時に71%の患者がMRAで治療されていた。

MRAで治療された患者は、その未治療患者と比較して、より若く、腎機能良好であったが、左室駆出率、収縮期血圧、NT-proBNPは低値であった。

しかしながら、心不全に対するデバイス治療は少なかった。

MRAで治療された患者は、2,091例(78.6%)がスピロノラクトン、570例(21.4%)がエプレレノンを処方されていた。

MRAで治療された患者の内、1,355例がプラセボ、1,306例がSGLT2阻害薬に無作為化された。

MRAで治療されない患者の内、512例がプラセボ、557例がSGLT2阻害薬に無作為化された。

「心血管死または心不全による入院」リスクは、プラセボと比較して、

MRA治療ありのSGLT2阻害薬で、24%低下[HR 0.76(95%CI 0.59-0.97)]、

MRA治療なしのSGLT2阻害薬で、25%低下[HR 0.75(95%CI 0.63-0.88)]、

となり、ベースラインでのMRA治療の有無に関わらず、エンパグリフロジンの効果は一貫していた(交互p=0.93)。

「心不全による総入院」リスクは、プラセボと比較して、

MRA治療ありのSGLT2阻害薬で、29%低下[HR 0.71(95%CI 0.56-0.89)]、

MRA治療なしのSGLT2阻害薬で、31%低下[HR 0.69(95%CI 0.48-0.97)]、

となり、ベースラインでのMRA治療の有無に関わらず、エンパグリフロジンの効果は一貫していた(交互p=0.88)。

J Am Coll Cardiol. 2021 Mar 23;77(11):1397-1407.

「腎機能低下を遅らせる効果(ml/min/1.73m/年)は、プラセボと比較して、

MRA治療ありのSGLT2阻害薬で、+1.55±0.39、

MRA治療なしのSGLT2阻害薬で、+2.19±0.59、

となり、ベースラインでのMRA治療の有無に関わらず、エンパグリフロジンの効果は一貫していた(交互p=0.36)。

さらに、「腎複合エンドポイント」、「心不全による初発の入院」、「52週時の健康状態(KCCQスコアでQOLを評価)」、「心不全重症度(NYHA分類)の改善/悪化」においても、プラセボと比較したエンパグリフロジンの効果は、ベースラインでのMRA治療の有無に関わらず、一貫していることが示された。

一方で、「心血管死」リスクは、プラセボと比較して、

MRA治療ありのSGLT2阻害薬で、18%低下[HR 0.82(95%CI 0.65-1.05)]、

MRA治療なしのSGLT2阻害薬で、19%増加[HR 1.19(95%CI 0.82-1.71)]、

となり、交互p=0.10となった。

「全死亡」リスクは、プラセボと比較して、

MRA治療ありのSGLT2阻害薬で、16%低下[HR 0.84(95%CI 0.68-1.03)]、

MRA治療なしのSGLT2阻害薬で、15%増加[HR 1.15(95%CI 0.84-1.59)]、

となり、交互p=0.098となった。

ゆえに、「心血管死」と「全死亡」リスクは、ベースラインでのMRA治療の有無に関わらず、エンパグリフロジンの効果は一貫していることが示されたが、ハザード比はMRA治療あり(左側)となし(右側)で方向的に異なる傾向(但し、ともにHR1をまたぐ)が見られた。

ベースライン時に、「MRA治療なし」の患者1,069例(SGLT2阻害薬:557例、プラセボ:512例)の内、SGLT2阻害薬に無作為化された患者は、フォローアップ期間にMRA治療(SGLT2阻害薬:90例、プラセボ:122例)の開始率が35%低かった[HR 0.65(95%CI 0.49-0.85)、p=0.0019]。

一方で、ベースライン時に、「MRA治療あり」の患者2,661例(SGLT2阻害薬:1,306例、プラセボ:1,355例)の内、SGLT2阻害薬に無作為化された患者は、MRA治療(SGLT2阻害薬:164例、プラセボ:210例)の中止率が低かった[HR 0.78(95%CI 0.64-0.96)、p=0.018]。

重度の高カリウム血症(>6.0 mmol/l)のリスクは、プラセボと比較して、SGLT2阻害薬の方が30%低く[HR 0.81(95%CI 0.42-1.58)]、MRA治療の有[HR 0.64(95%CI 0.38-1.05)]/無[HR 0.70(95%CI 0.47-1.04)]に関わらず、一貫していることが示された(交互p=0.56)。

また、他の全ての評価項目においても、ベースライン時のMRA治療は、SGLT2阻害薬の安全性プロファイルに影響を与えていなかった。

J Am Coll Cardiol. 2021 Mar 23;77(11):1397-1407.

結論:

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)の使用は、駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者の心血管アウトカムにおけるSGLT2阻害薬の効果に影響を与えなかった。

この結果は、MRAとSGLT2阻害薬を併用することで、HFrEF患者の予後、心不全重症度、QOLを改善できることを示した。

また、SGLT2阻害薬の使用によりMRA治療の継続率が向上する可能性がある為、HFrEF患者の転帰を改善する為に、これらの薬剤を併用する価値はさらに高まるだろう。

 

【参考情報】

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)一覧・作用機序・服薬指導のポイント

https://pharmacista.jp/contents/skillup/academic_info/hypotensive/3669/ 

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬の違い や特徴~スピロノラクトン・エプレレノン・エサキセレン~

https://mibyou-pharmacist.com/2020/11/09/mineralocorticoid-receptor-antagonist-mra/ 

高カリウム血症

高カリウム血症 – 10. 内分泌疾患と代謝性疾患 – MSDマニュアル プロフェッショナル版 (msdmanuals.com)

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