メトホルミンにSGLT2阻害薬を追加したベースライン心代謝因子に対する治療効果



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33084149/ 

タイトル:Empagliflozin treatment effects across categories of baseline HbA1c, body weight and blood pressure as an add-on to metformin in patients with type 2 diabetes

<概要(意訳)>

背景:

我々は、以前、EMPA-REG MET試験[2型糖尿病の管理が不十分な患者にメトホルミンの追加治療としてSGLT2阻害薬を投与することで24週間と76週間における血糖コントロール、体重、収縮期血圧をプラセボと比較して大幅に改善した]の結果を報告した。

本研究では、ベースラインの異なる心代謝リスク因子カテゴリー(HbA1c、体重、血圧)におけるSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日、25㎎/日)の治療効果を調査した。

方法:

18歳以上でHbA1cが7.0〜10.0%[食事療法、運動療法、メトホルミン治療(1500㎎/日以上)にも関わらず血糖コントロール不良]の2型糖尿病患者に、エンパグリフロジン10mg/日、エンパグリフロジン25 mg/日、またはプラセボのいずれかをランダム(1:1:1)に割り付けた。

共分散分析を使用して、ベースラインから24週目と76週目におけるHbA1c、体重(BW)、収縮期血圧(SBP)の変化を、それぞれ、ベースラインのカテゴリー別(HbA1c<8.5/≥8.5%、BW<80/80-90/>90 kg、SBP<130/130-140/>140mmHg)に比較した。

また、心代謝因子の連続共変量を使用したモデルの分析も実施した。

結果:

合計637例の患者(男性56.7%、年齢55.7±9.9歳、HbA1c 7.9±0.9%、BW 81.2±18.8 kg、SBP 129.4±14.6mmHg)は、エンパグリフロジン10mg(n=217)、25 mg(n=213)、プラセボ(n=207)に割り付けられた。

「ベースラインHbA1c 8.5%未満」の場合、プラセボと比較した「24週目」におけるHbA1cの調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=160):-0.51[0.08]%

エンパグリフロジン25㎎(n=165):-0.52[0.08]%

となり、有意なHbA1cの低下が示された。

「ベースラインHbA1c 8.5%以上」の場合、プラセボと比較した「24週目」におけるHbA1cの調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=57):-0.73[0.14]%

エンパグリフロジン25㎎(n=48):-0.97[0.15]%

となり、有意なHbA1cの低下が示された。

また、HbA1cカテゴリー(<8.5/≥8.5%)間の交互P値=0.0290となり、調整平均差はHbA1c8.5以上の方が大きかったが、一貫した結果が示された。

「ベースラインHbA1c 8.5%未満」の場合、プラセボと比較した「76週目」におけるHbA1cの調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=160):-0.55[0.09]%

エンパグリフロジン25㎎(n=165):-0.64[0.09]%

となり、有意なHbA1cの低下が示された。

「ベースラインHbA1c 8.5%以上」の場合、プラセボと比較した「76週目」におけるHbA1cの調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=57):-0.78[0.15]%

エンパグリフロジン25㎎(n=48):-0.99[0.16]%

となり、有意なHbA1cの低下が示された。

また、HbA1cカテゴリー(<8.5/≥8.5%)間の交互P値=0.1431となり、調整平均差はHbA1c 8.5%以上の方が大きかったが、一貫した結果が示された。

「ベースライン体重80kg未満」の場合、プラセボと比較した「24週目」における体重(BW)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=116):-1.37[0.33]kg

エンパグリフロジン25㎎(n=101):-1.41[0.34]kg

となり、有意なBWの低下が示された。

「ベースライン体重80-90kg」の場合、プラセボと比較した「24週目」における体重(BW)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=34):-1.81[0.59]kg

エンパグリフロジン25㎎(n=48):-2.54[0.54]kg

となり、有意なBWの低下が示された。

「ベースライン体重90kg超」の場合、プラセボと比較した「24週目」における体重(BW)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=67):-2.11[0.46]kg

エンパグリフロジン25㎎(n=64):-2.93[0.47]kg

となり、有意なBWの低下が示された。

また、体重カテゴリー(<80/80-90/>90 kg)間の交互P値=0.1340となり、調整平均差はベースラインの体重に比例したが、一貫した結果が示された。

「ベースライン体重80kg未満」の場合、プラセボと比較した「76週目」における体重(BW)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=116):-1.29[0.40]kg

エンパグリフロジン25㎎(n=101):-1.27[0.42]kg

となり、有意なBWの低下が示された。

「ベースライン体重80-90kg」の場合、プラセボと比較した「76週目」における体重(BW)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=34):-1.88[0.72]kg

エンパグリフロジン25㎎(n=48):-1.83[0.66]kg

となり、有意なBWの低下が示された。

「ベースライン体重90kg超」の場合、プラセボと比較した「76週目」における体重(BW)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=67):-3.35[0.57]kg

エンパグリフロジン25㎎(n=64):-4.23[0.58]kg

となり、有意なBWの低下が示された。

また、体重カテゴリー(<80/80-90/>90 kg)間の交互P値=0.0012となり、有意な交互作用が認められた

「ベースライン収縮期血圧130mmHg未満」の場合、プラセボと比較した「24週目」における収縮期血圧(SBP)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=119):-3.68[1.45]mmHg

エンパグリフロジン25㎎(n=108):-3.49[1.48]mmHg

となり、有意なSBPの低下が示された。

「ベースライン収縮期血圧130-140mmHg」の場合、プラセボと比較した「24週目」における収縮期血圧(SBP)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=55):-5.36[2.07]mmHg

エンパグリフロジン25㎎(n=62):-6.10[2.00]mmHg

となり、有意なSBPの低下が示された。

「ベースライン収縮期血圧140mmHg超」の場合、プラセボと比較した「24週目」における収縮期血圧(SBP)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=43):-5.42[2.44]mmHg

エンパグリフロジン25㎎(n=43):-7.48[2.45]mmHg

となり、有意なSBPの低下が示された。

また、SBPカテゴリー(<130/130-140/>140mmHg)間の交互P値=0.1340となり、調整平均差はベースラインのSBPに比例したが、一貫した結果が示された。

「ベースライン収縮期血圧130mmHg未満」の場合、プラセボと比較した「76週目」における収縮期血圧(SBP)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=119):-3.66[1.55]mmHg

エンパグリフロジン25㎎(n=108):-3.09[1.59]mmHg

となり、有意なSBPの低下が示された。

「ベースライン収縮期血圧130-140mmHg」の場合、プラセボと比較した「76週目」における収縮期血圧(SBP)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=55):-6.21[2.22]mmHg

エンパグリフロジン25㎎(n=62):-4.65[2.14]mmHg

となり、有意なSBPの低下が示された。

「ベースライン収縮期血圧140mmHg超」の場合、プラセボと比較した「76週目」における収縮期血圧(SBP)の調整平均差[SE]は、それぞれ、

エンパグリフロジン10㎎(n=43):-6.10[2.61]mmHg

エンパグリフロジン25㎎(n=43):-5.52[2.62]mmHg

となり、有意なSBPの低下が示された。

また、SBPカテゴリー(<130/130-140/>140mmHg)間の交互P値=0.8491となり、調整平均差はベースラインのSBPに比例したが、一貫した結果が示された。

Diabetes Obes Metab. 2021 Feb;23(2):425-433.

次に、「HbA1c、BW、SBP」のベースラインからの変化を連続変数として分析した。

HbA1cは、24週目(p=0.0004)と76週目(p=0.0042)において、ベースラインの値が高いほど、有意に大きな減少を示した。

BWも、24週目(p=0.0202)と76週目(p<0.0001)において、ベースラインの値が高いほど、有意に大きな減少を示した。

SBPに関しては、24週目(p=0.7792)と76週目(p=0.5750)において、有意な減少は示さなかった。

 

有害事象(AE)は、ベースラインのHbA1c、体重、収縮期血圧に関わらず、全体の安全性プロファイルと同様であった。

Diabetes Obes Metab. 2021 Feb;23(2):425-433.

結論:

SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/25㎎)をメトホルミンの追加治療として使用した場合、特に、HbA1cと体重のベースライン値が高い患者で、HbA1cと体重を有意に減少させ、収縮期血圧を効果的に低下させることが示された。

 

SGLT2阻害薬は、心血管疾患および/またはCKD合併2型糖尿病患者に推奨される血糖降下薬であることに加えて、本研究結果は、心代謝因子を考慮した治療の調整に役立つ可能性があるだろう。

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