フロセミド・トルバプタンと比較したSGLT2阻害薬の体液分布への影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30578654/ 

タイトル:Effects of the sodium-glucose cotransporter 2 inhibitor dapagliflozin on fluid distribution: A comparison study with furosemide and tolvaptan

<概要(意訳)>

背景:

SGLT2阻害薬は、利尿作用を持つ経口血糖降下薬である。

最近、我々はSGLT2阻害薬が細胞外液(組織間液+血漿:循環血液量)を減少させ、尿中Na+排泄が一時的に増加することを報告した。

しかしながら、従来の利尿薬と比較したSGLT2阻害薬の体液分布に対する影響は未だ分かっていない。

方法:

体液貯留をきたした慢性腎臓病患者(平均eGFR 29.2±3.2 mL/min/1.73m2)40人を、「SGLT2阻害薬(N=14)、ループ利尿薬のフロセミド(N=14、54.6±13.1mg/day)、バソプレシン受容体拮抗薬のトルバプタン(N=12、6.8±0.4mg/day)」の3群に分けた。

生体インピーダンス分析装置を使用して、0日目と7日目の体液量を測定した。

結果:

3群ともに、体重はベースラインから有意に減少し、尿量は7日間に渡り増加した。

生体インピーダンス分析において、細胞内液量(ICW)の変化は3群間で差はなかったが、細胞外液量(ECW)の変化には有意な違いが示された[SGLT2阻害薬群:-8.4±1.7%、FR(フロセミド)群:-12.5±1.3%、TLV(トルバプタン)群:-7.4±1.5%、p=0.048]。

 

その結果、SGLT2阻害薬群の総体液量(TBW)に対する細胞外液量(ECW)の比率[参考:浮腫値(ECW/TCW)の標準値は、0.36~0.40 で、0.40 より高ければむくみがあることを意味する]の変化は、FR(プロセミド)群より有意に小さかったが、TLV(トルバプタン)群よりは大きかった[SGLT2阻害薬群:-1.5±0.5%、FR(フロセミド)群:-3.6±0.5%、 TLV(トルバプタン)群:-0.5±0.4%、p<0.001)。

また、この傾向は、糖尿病患者に限定しても一貫していた(p<0.005)。

Nephrology(Carlton). 2019 Sep; 24(9): 904-911.

結論:

SGLT2阻害薬は、尿量をわずかに増加させ、主に細胞外液量(ECW)を減少させたが、

相対的に細胞外液量を減少させる効果(細胞外水分率に対する影響)はループ利尿薬とトルバプタンの中間であることが明らかになった。

ゆえに、SGLT2阻害薬の体液分布に対する影響は、従来の利尿薬とは異なる可能性があるだろう。

 

【参考情報】

BIA(生体電気インピーダンス)法の原理と体組成評価

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssmn/53/4/53_123/_pdf 

生体電気インピーダンス(BIA)法による DW 設定基準

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/41/10/41_10_723/_pdf

体成分分析 インボディ測定検査

https://www.wakayamah.johas.go.jp/wp-content/themes/wakayama/pdf/topics04_02.pdf 

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