PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33043620/
タイトル:Sodium-glucose co-transporter-2 inhibitors with and without metformin: A meta-analysis of cardiovascular, kidney and mortality outcomes
<概要(意訳)>
目的:
SGLT2阻害薬の心血管・腎に対する保護効果、死亡率に対する抑制効果は、メトホルミン併用の有無に関わらず一貫しているかどうかを評価することを目的とした。
方法:
ベースラインのメトホルミン使用有無による少なくとも一つの心血管・腎イベント、死亡を報告したSGLT2阻害薬のイベント主導型プラセボ対照無作為化試験のメタ分析を実施した。
CANVASプログラムとCREDENCE試験のデータは、個々の被験者データにアクセスできる著者によって(探索)分析された。
糖尿病の有無に関わらず被験者を対象としたSGLT2阻害薬の試験については、2型糖尿病患者の被験者データのみを含めた。
治療効果[HR(95%CI)]は、ランダム効果モデル[参考:複数研究のそれぞれに存在する真の効果の平均値および真の効果の間の分散(異質性の合計)を推定すること]を使用してプールされた。
この分析における主要なアウトカムは、(i)主要有害心血管イベント(MACE)、(ii)心不全または心血管死による入院であった。
結果:
4剤のSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エルツグリフロジン)における、6つのイベント主導型プラセボ対照ランダム化比較試験[追跡期間の中央値1.5-4.2年、被験者51,743例]をメタ分析に含めた。
その内、4試験[EMPA-REG OUTCOME(n=7,020)、CANVAS Program(n=10,142)、DECLARE-TIMI 58(n=17,160)、VERTIS-CV(n=8,246)]は心血管リスクの高い2型糖尿病患者を対象にした心血管アウトカム試験、CREDENCE試験(n=4,401)は2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)を対象にした腎アウトカム試験、DAPA-HF試験(n=4,744)は糖尿病状態に関わらずHFrEF患者を対象にした試験である。
メトホルミンを投与された被験者の割合は、試験により異なっていた。
DAPA-HF試験は被験者の約半数が非糖尿病であった為、ベースラインでメトホルミンを投与された被験者の割合が最も低かった(21%)。
CREDENCE試験は腎機能が低下した被験者が多かった為、2型糖尿病患者を対象とした他の試験と比較して、ベースラインでメトホルミンを投与された被験者の割合が低かった(58%)。
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン、カナグリフロジン、ダパグリフロジン、エルツグリフロジン)の心血管アウトカム試験はベースラインでメトホルミンを投与された被験者の割合が高かった(74~82%)。
ベースラインでメトホルミンを投与されていなかった被験者の特徴は、高齢でインスリンを使用の可能性が高く、糖尿病の罹病期間が長く、eGFRが低く、心不全の病歴があった。
「MACE[主要有害心血管イベント:心血管死、非致命的心筋梗塞、非致命的脳卒中、心不全または心血管死による入院]」におけるハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
メトホルミンの使用あり:0.93 (0.87-1.00)
メトホルミンの使用なし:0.82 (0.71-0.96)
となり、ベースラインのメトホルミン使用に関わらず、「MACE」のリスクを一貫して低下させた(異質性p=0.14)。
「心不全による入院または心血管死」におけるハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
メトホルミンの使用あり:0.79(0.73-0.86)
メトホルミンの使用なし:0.74(0.63-0.87)
となり、ベースラインのメトホルミン使用に関わらず、「心不全による入院または心血管死」のリスクを一貫して低下させた(異質性p=0.48)。
Diabetes Obes Metab. 2021 Feb;23(2):382-390.
「心不全による入院」におけるハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
メトホルミンの使用あり:0.70 (0.61-0.80)
メトホルミンの使用なし:0.66 (0.51-0.85)
となり、ベースラインのメトホルミン使用に関わらず、「心不全による入院」のリスクを一貫して低下させた(異質性p=0.42)。
「心血管死」におけるハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
メトホルミンの使用あり:0.84 (0.71-0.98)
メトホルミンの使用なし:0.75 (0.60-0.95)
となり、ベースラインのメトホルミン使用に関わらず、「心血管死」のリスクを一貫して低下させた(異質性p=0.43)。
Diabetes Obes Metab. 2021 Feb;23(2):382-390.
「腎機能の悪化(血清クレアチニンの倍化、顕性蛋白尿への移行、eGFRの40%持続的低下)、末期腎不全(ESKD)、腎死」におけるハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
メトホルミンの使用あり:0.58 (0.48-0.69)
メトホルミンの使用なし:0.63 (0.48-0.83)
となり、ベースラインのメトホルミン使用に関わらず、「腎機能の悪化、ESKD、腎死」のリスクを一貫して低下させた(異質性p=0.62)。
「全ての原因による死亡(全死亡)」におけるハザード比[HR(95%CI)]は、それぞれ、
メトホルミンの使用あり:0.84 (0.75-0.95)
メトホルミンの使用なし:0.79 (0.66-0.94)
となり、ベースラインのメトホルミン使用に関わらず、「全死亡」のリスクを一貫して低下させた(異質性p=0.57)。
Diabetes Obes Metab. 2021 Feb;23(2):382-390.
CANVASプログラムおよびCREDENCE試験における個々の被験者データを使用した探索的分析においても、ベースラインのメトホルミン使用の有無に関わらず、SGLT2阻害薬の心血管・腎イベント、死亡率に対する抑制効果は一貫していた。
結論:
SGLT2阻害薬による治療は、2型糖尿病患者がメトホルミンの投与有無に関わらず、心血管・腎イベントおよび全死亡リスクを一貫して低下させることが示された。
【参考情報】
メタアナリシスのモデル