PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32070335/
タイトル:Increased Risk of Cardiovascular Mortality by Strict Glycemic Control (Pre-Procedural HbA1c < 6.5%) in Japanese Medically-Treated Diabetic Patients Following Percutaneous Coronary Intervention: A 10-year Follow-Up Study
<概要(意訳)>
背景:
心血管(CV)疾患の既往がある糖尿病患者における2次予防の最適なHbA1cレベルは、まだ確立されていない。
我々のJ-PACT研究では、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した日本人糖尿病患者における術前のHbA1cレベルと心血管死との関連を評価した。
方法:
本研究は、2000年~2016年の間に単施設(順天堂大学)でPCIを施行された連続4,542症例の後ろ向き観察研究(PCIレジストリー)である。
インスリンを含めた抗糖尿病治療薬で治療されたPCI施行患者1,328例が分析対象となった。
HbA1cレベルに応じて、5群[<6.5%(n=267)、6.5-7.0%(n=268)、7.0-7.5%(n=262)、7.5-8.5%(n=287)、≥8.5%(n=244)]と2群[≤7.0%、>7.0%>]に分けた。
主要評価項目は、突然死を含む心血管死とした。追跡期間の中央値は、6.2年であった。
結果:
追跡期間中の心血管死の発症は81例(内訳:突然死23例、急性心筋梗塞8例、心不全と心原性ショック26例、脳血管イベント16例、その他8例)であった。
未調整のカプランマイヤー分析による累積心血管死亡率は、2群の間では差がなかった[HbA1c ≦7.0%(10%)vs >7.0%(9.7%)、p=0.41]が、5群の間ではHbA1c 7.0-7.5%と比較して、HbA1c <6.5%で有意に高い累積心血管死亡率を示した[7.6%vs 13.0%、p=0.042]。
年齢、性別、血糖値、糖尿病罹病期間、病変枝数、LDL-C、HDL-C、収縮期血圧で調整した多変量Coxハザード分析(Model1)により、術前のHbA1cレベルと心血管死のリスクはU字型の関係となることが明らかになり、術前のHbA1c 7.0-7.5%は、心血管死のリスクが最小であった[HbA1c 7.0-7.5%のリスクを基準とした場合、<6.5%のハザード比(HR):2.97、6.5~7.0%のHR:1.77、7.5~8.5%のHR:1.62、8.5%以上のHR:1.93]。
特に、HbA1c<6.5%は有意な心血管死のリスク上昇を示した(p=0.007)。
また、Model1に左室駆出率、eGFR、ヘモグロビン、β遮断薬、インスリンの使用などの調整因子を加えたModel2においても、HbA1c<6.5%の心血管死の有意なリスク上昇が示された(HR:2.85、p=0.015)。
結論:
PCI施行した日本人糖尿病患者の2次予防において、術前のHbA1c <6.5%(厳密な血糖管理)は心血管死のリスクを上昇させることが示唆された。