心不全患者におけるSGLT2阻害薬の血清カリウムへの影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35687107/ 

タイトル:Empagliflozin and serum potassium in heart failure: an analysis from EMPEROR-Pooled

<概要(意訳)>

背景:

高カリウム血症は、しばしば神経ホルモン拮抗薬の中断と中止につながり、心不全の予後を悪化させる可能性がある。

いくつかの研究は、SGLT2阻害薬が高カリウム血症を軽減することを示唆しており、臨床的に意義がある可能性がある。

本研究では、心不全患者に対するSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)の高カリウム血症および低カリウム血症への影響を評価した。

方法:

EMPEROR-Pooled分析 (HFrEF患者を対象としたEMPEROR-Reduced試験とHFpEF患者を対象としたEMPEROR-Preserved試験を組み合わせた分析:n=9,718) には、ベースラインで利用可能な血清カリウム値を有する9,583 例(98.6%)の被験者が含まれていた。

高カリウム血症は、「治験責任医師による有害事象の報告」、および「血清カリウム値>5.5 mmol/Lおよび>6.0 mmol/L」によって特定された。

主要評価項目は、研究者が報告した「高カリウム血症または高カリウム血症改善薬の開始の複合イベント」であった。

結果:

ベースラインで血清カリウム値が高い患者は、「糖尿病、虚血性心不全の罹患率が高く、

左室駆出率(LVEF)と推定糸球体濾過率(eGFR)が低く、サクビトリル・バルサルタン(エンレスト)、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)での治療頻度が高い等」の臨床的特徴があった。

 

SGLT2阻害薬群は、主要評価項目である「高カリウム血症改善薬の開始の複合イベント」をプラセボ群と比較して有意に減少させることが示された

[6.5% vs 7.7%, ハザード比[HR(95%CI)]: 0.82(0.71-0.95 ), p=0.01]。

 

SGLT2阻害薬群は、使用される定義に関わらず、「高カリウム血症のイベント」をプラセボ群と比較して有意に減少させることが示された

[血清カリウム値>5.5 mmol/lの場合:8.6% vs 9.9%, 0.85(0.74-0.97), p=0.017

血清カリウム値>6.0 mmol/lの場合:1.9% vs 2.9%, 0.62(0.48-0.81), p<0.001)]。

 

また、低カリウム血症(治験責任医師の報告または血清カリウム値<3.0 mmol/l)の発生率は、SGLT2阻害薬群で有意な増加は示されなかった。

Eur Heart J. 2022 Aug 14;43(31):2984-2993.

結論:

SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10mg/日)は、左室駆出率(LVEF)に関わらず、心不全患者の低カリウム血症を有意に増加させることなく、高カリウム血症を軽減することが示された。

 

【参考情報】

高カリウム血症治療薬一覧・作用機序(ケイキサレート・カリメート・アーガメイト・ロケルマ)

https://pharmacista.jp/contents/skillup/academic_info/nephrology_diabetes/2613/ 

高カリウム血症の治療

https://medley.life/diseases/54f02ad86ef4584e3685cde2/details/knowledge/treatments/

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