PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28753486/
タイトル:Efficacy and safety of empagliflozin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus: A sub-analysis by body mass index and age of pooled data from three clinical trials
<概要(意訳)>
背景:
SGLT2阻害薬の単剤使用、経口抗糖尿病薬(OAD)またはインスリン療法の追加療法として使用した有効性と安全性は、主に日本人よりもBMIが高い西洋人で実証されている為、日本人のBMI別サブグループでの有効性と安全性の評価は重要である。
本研究では、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)で治療された日本人2型糖尿病患者のプールデータを使用して、BMIと年齢に基づいた有効性と安全性を調査した。
方法:
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日または25㎎/日、52週間以上)を単剤治療[研究1(n=218)、研究2(n=88)]、または他の一つのOAD療法[研究3(n=1,097)]の追加療法として使用した、日本人2型糖尿病患者の3つの研究のプールデータ(合計1,403例)を事後分析した。
これら3つの研究における選択基準は、ベースラインの年齢≧20歳、HbA1c 7.0-10.0%、BMI≦40 kg/m2(研究1)、BMI≦45 kg/m2(研究2、3)であった。
有効性は、SGLT2阻害薬の治療完了時における「HbA1c、空腹時血糖値(FPG)、体重」の調整されたベースラインからの平均変化とした。
SGLT2阻害薬の効果は、ベースラインのHbA1cと推定糸球体濾過量(eGFR)レベルに依存するため、「HbA1c、FPG、体重」の平均変化は、ベースラインのHbA1cとeGFRに合わせて調整した。
安全性では、有害事象(AE)の発生率を収集し評価した。
「低血糖、尿路感染症(UTI)、生殖器感染症、体液量減少」は、特に関心のあるAEとして評価した。
結果:
3つの臨床試験でエンパグリフロジン(10mg/日または25mg/日)を投与された患者(n= 1,403)のプールデータは、BMI(<22、22~<25、≧25kg/m2)と年齢(<50、50〜<65、≧65歳)別のサブグループに層別化された。
10 mg/日群(n=700)の治験薬曝露期間(平均)は、371.5±115.1日であった。
25 mg/日群(n=703)の治験薬曝露期間(平均)は、366.3±117.3日であった。
また、75歳以上の患者数は限られていた為、個別の分析は実施しなかった。
「HbA1c」は、BMIサブグループ全体(<22、22~<25、≧25kg/m2)で、エンパグリフロジン10㎎/日と25㎎/日で、それぞれ、0.77~0.87%と0.76~0.94%の臨床的に意味のある減少を示し、サブグループ間での差は示されなかった。
「FPG」は、BMIサブグループ全体で、エンパグリフロジン10 mg /日と25mg /日で、それぞれ、23.73〜24.84 mg/dLと26.21〜29.02 mg/dLの減少を示した。
「体重」は、BMIサブグループ全体で、エンパグリフロジン10 mg /日と25mg /日で、それぞれ、3.9~4.4%と3.7〜4.5%の減少を示した。
具体的には、エンパグリフロジン10㎎/日群において、
BMI<22:ベースライン平均体重(53.8kg)から3.9%(2.1kg)
BMI 22~<25:ベースライン平均体重(63.0kg)から4.0%(2.5kg)
BMI≧25:ベースライン平均体重(76.7kg)から4.4%(3.4kg)
の減少が示された。
エンパグリフロジン25㎎/日群において、
BMI<22:ベースライン平均体重(55.0kg)から3.7%(2.0kg)
BMI 22~<25:ベースライン平均体重(63.7kg)から4.4%(2.8kg)
BMI≧25:ベースライン平均体重(78.2kg)から4.5%(3.5kg)
の減少が示された。
「HbA1c」は、年齢サブグループ全体(<50、50〜<65、≧65歳)で、エンパグリフロジン10㎎/日と25㎎/日で、それぞれ、0.82~0.86%と0.85~0.97%の臨床的に意味のある減少を示し、サブグループ間での差は示されなかった。
「FPG」は、年齢サブグループ全体で、エンパグリフロジン10㎎/日と25㎎/日で、それぞれ、20.79〜27.06 mg/dLと26.08〜29.60 mg/dLの減少を示した。
「体重」は、年齢サブグループ全体で、エンパグリフロジン10 mg /日と25mg /日で、それぞれ、3.4~4.7%と4.2〜4.7%の減少を示した。
具体的には、エンパグリフロジン10㎎/日群において、
年齢<50:ベースライン平均体重(79.7kg)から3.4%(2.7kg)
年齢 50~<65:ベースライン平均体重(69.0kg)から4.0%(2.8kg)
年齢≧65:ベースライン平均体重(62.4kg)から4.7%(2.9kg)
の減少が示された。
エンパグリフロジン25㎎/日群において、
年齢<50:ベースライン平均体重(80.7kg)から4.3%(3.5kg)
年齢 50~<65:ベースライン平均体重(69.6kg)から4.2%(2.9kg)
年齢≧65:ベースライン平均体重(63.8kg)から4.7%(3.0kg)
の減少が示された。
Diabetes Res Clin Pract. 2017 Sep;131:169-178.
SGLT2阻害薬に関連したAEは、エンパグリフロジン10㎎/日で103/700例(14.7%)、25㎎/日で113/703例(16.1%)に報告された。
特に関心のあるAEにおいて、低血糖の発生率はエンパグリフロジン25 mg/日群(2.3%)の方が10mg/日群(1.1%)よりも高かったが、援助介助を必要とする低血糖は報告されなかった。
尿路感染症、生殖器感染症、体液量減少に関しては、SGLT2阻害薬の用量に伴う増加は観察されなかった。
低血糖、尿路感染症、生殖器感染症の発生率は、BMIと年齢のサブグループで差はなかったが、体液量減少の発生率は65歳以上の患者で増加傾向があった。
Diabetes Res Clin Pract. 2017 Sep;131:169-178.
結論:
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)は忍容性が高く、年齢やBMIに関係なく、日本人2型糖尿病患者の全ての年齢とBMIサブグループでHbA1c、空腹時血糖値、体重を改善した。
この薬剤は、日本人2型糖尿病患者を幅広く、効果的で忍容性高く治療できることが示唆された。
【参考情報】
共分散分析(ANCOVA)とは?
https://best-biostatistics.com/correlation_regression/ancova.html