PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33663235/
タイトル:Effect of Empagliflozin as an Add-On Therapy on Decongestion and Renal Function in Patients With Diabetes Hospitalized for Acute Decompensated Heart Failure: A Prospective Randomized Controlled Study
<概要(意訳)>
背景:
SGLT2阻害薬は、心血管合併2型糖尿病患者の心不全による入院リスクを減少させる。
本研究では、急性非代償性心不全で入院した2型糖尿病患者にSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)の追加治療による「うっ血解除と腎機能」に対する影響を調査した。
方法:
COVID-19パンデミックにより、本研究は早期に終了した。
2017年1月~2020年2月の間に、62例が登録され、59例が最終分析の対象となった。
2群に割り付けたSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日、n=30)を除いて、他の血糖降下薬(n=29)は医師の裁量に任せられた。
体重、血圧、心拍数などのバイタルサインと血漿量の変化率(%△PV)は、無作為化後のベースライン(0日目)、1日目、2日目、3日目、7日目に測定した。
尿糖排泄量、尿中Na排泄量は、研究期間における最初の24時間に収集した尿サンプルから評価した。
NT-proBNP値(正常範囲:≦125 pg/mL)、BNP(正常範囲:≦18.4 pg/mL)、ノルエピネフリン濃度(正常範囲:150 ~570 pg/mL)は、無作為化後のベースライン(0日目)、3日目、7日目に測定した。
結果:
2群間において、左室駆出率(LVEF)、NT-proBNP値、ヘマトクリット値、血清クレアチニン値などのベースライン特性に差はなかった。
無作為化から7日間における、ループ利尿薬(フロセミド等価換算)の用量(中央値)は、他の血糖降下薬と比べて、SGLT2阻害薬の方が少なかったが、有意な差はなかった[150(四分位範囲 102-207)mg vs 180(四分位範囲 126-241)mg]。
サクビトリル/バルサルタン(エンレスト)は、日本で未承認であった為、使用された患者はいなかった。
無作為化後7日目の体重(p=0.205)、収縮期血圧(p=0.889)、心拍数(p=0.338)は、2群間で有意な差はなかった。
研究期間における最初の24時間に収集した尿サンプルから評価した、尿量(p=0.005)、尿糖排泄量(p<0.001)、尿中Na排泄量(p=0.015)は、他の血糖降下薬と比べて、SGLT2阻害薬の方が有意に多かった。
無作為化後3日目から7日目における、NT-proBNP値(p=0.040)、BNP値(p=0.008)は、他の血糖降下薬と比べて、SGLT2阻害薬の方が有意に低下した。
無作為化後7日目の血漿変化量(%ΔPV:p=0.017)は、他の血糖降下薬と比べて、SGLT2阻害薬の方が有意に低下したが、ベースラインからヘマトクリット値が3%以上増加した割合は、SGLT2阻害薬の方が有意に多かった(p=0.020)[オッズ比 3.84(95%CI 1.24–11.92)]。
無作為化後7日目のWRF(腎機能悪化:ベースラインから0.3mg/dL以上の血清クレアチニンの増加)は、2群間で有意な差はなかったが、SGLT2阻害薬の方が少ない傾向であった(p=0.404)[オッズ比 0.50(95%CI 0.10–2.54)]。
eGFR(推算糸球体濾過量)は、全体59例の内、24例(SGLT2阻害薬11例)で増加が認められた。
eGFRの変化とループ利尿薬用量の間には、相関はなかった。
無作為化後3日目から7日目における、血漿ノルエピネフリン濃度は2群間で有意な差はなかった(p=0.591)た。
一方で、無作為化後7日目の尿酸値は、SGLT2阻害薬の方が有意に低かった(p<0.001)。
Circ Heart Fail. 2021;14:e007048.
結論:
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)は、急性非代償性心不全を伴う2型糖尿病患者の治療に追加することで、腎機能悪化、交感神経の活性化を高めることなく、尿酸値を低下させ、効果的にうっ血を解除することが示された。
【参考情報】
代償性心不全と非代償性心不全