LDL・HDLコレステロールに対するSGLT2阻害薬の影響



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28086872/ 

タイトル:Dapagliflozin decreases small dense low-density lipoprotein-cholesterol and increases high-density lipoprotein 2-cholesterol in patients with type 2 diabetes: comparison with sitagliptin

<概要(意訳)>

背景:

SGLT2阻害薬は、低密度リポタンパク質(LDL)と高密度リポタンパク質(HDL)の両方を増加させることが報告されている。

本研究では、SGLT2阻害薬がLDLおよびHDLコレステロールの亜分画にどのような影響を与えるかを調査した。

方法:

この単施設、非盲検、無作為化、前向き研究には、経口血糖降下薬(SU薬、メトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬)を服用している2型糖尿病患者(年齢 20~65歳、HbA1c 6.5~9.4%、罹病期間 3ヶ月以上)80例(男性62例、女性18例)が含まれていた。

これらの患者は、追加治療としてSGLT2阻害薬(ダパグリフロジン5㎎/日、n=40)、またはDPP-4阻害薬(シタグリプチン50㎎/日、n=40)の2つのグループに割り付けられた。

ただし、「脳卒中、虚血性心疾患の既往、インスリン治療、妊娠(可能性)、eGFR<60 mL/min/1.73 m、トリグリセリド600mg/dL、オメガ-3脂肪酸の使用」患者は、除外した。

空腹時の血液サンプルは、追加治療の介入前と12週間後に採取し、「LDL、sd LDL(small dense LDL:超悪玉コレステロール)、lb LDL(large buoyant LDL)、HDL、HDL2、HDL3」等の血液パラメーターを対応のあるt検定を使用して追加治療の介入前後で比較した。

結果:

ベースラインの血液生化学データ、脂質プロファイル等の特性は、グループ間で差はなかった。また、高血糖、軽度肥満(BMI  28 kg/m2)、軽度肝障害の患者が両グループに含まれていた。

 

SGLT2阻害薬は、体重(-2.2 kg、p<0.001)と収縮期血圧(-4mmHg、p=0.022)を有意に低下させたが、これらの変化はDPP-4阻害薬では観察されなかった。

 

HbA1cは、SGLT2阻害薬で0.75%減少し、DPP-4阻害薬では0.63%減少した。

空腹時血糖値は、それぞれ、23.5と18.7 mg/dL減少した。

 

肝機能のAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は、SGLT2阻害薬で有意に(p <0.001)減少したが、DPP-4阻害薬では変化しなかった。

 

ヘモグロビン、ヘマトクリット、血中尿素窒素(BUN)は、SGLT2阻害薬で有意に増加したが(p <0.001)、DPP-4阻害薬では変化しなかった。

 

SGLT2阻害薬は、アディポネクチンを6.0±3.4~7.6±4.2 ng/mL(p <0.001)に有意に増加させたが、DPP-4阻害薬では変化がなかった。

 

2つのグループ間では、体重と収縮期血圧に加えて、「ALT、AST、ヘモグロビン、ヘマトクリット、アディポネクチン」の変化に有意な差があった(p <0.01)。

Cardiovasc Diabetol. 2017 Jan 13;16(1):8.

SGLT2阻害薬では、sd LDL(超悪玉コレステロール:小型LDL)が有意に減少した(-20%、p <0.01)のに対し、lb LDL(大型LDL)は有意に増加した(18%、p <0.05)が、これらの変化はDPP-4阻害薬では観察されなかった。

 

HDL、HDL2(主にアポリポ蛋白AIより成る)とアポリポ蛋白のapo AI、apo AIIは、SGLT2阻害薬で有意に増加した(p <0.05)が、これらの変化はDPP-4阻害薬では観察されなかった。

 

2つのグループ間では、「sd LDL、lb LDL、HDL、HDL2、apo AI」の変化に有意な差があった(p <0.05)。

Cardiovasc Diabetol. 2017 Jan 13;16(1):8.

ベースラインからLDLが14%増加したサブグループ(n=20)では、sd LDLが20%減少し(p <0.05)、lb LDLが53%増加した(p <0.001)。

また、LDLが14%低下したサブグループ(n=20)では、sd LDLで19%、lb LDLで10%減少した(p <0.05)。

Cardiovasc Diabetol. 2017 Jan 13;16(1):8.

結論:

SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン5㎎/日)は、強力に動脈硬化を惹起するスモールデンスLDLコレステロール(sd LDL)を抑制し、抗動脈硬化作用が強いHDL2コレステロールを増加させた。

LDLは、SGLT2阻害薬の治療によって上昇するが、これは、動脈硬化リスクの少ない大型LDLコレステロール(lb LDL)の増加によるものであった。

しかしながら、これらの所見は、DPP-4阻害薬(シタグリプチン50㎎/日)の治療では観察されなかった。

 

【参考情報】

超悪玉コレステロール(small-dense LDL)の最新データ

https://alzhacker.com/small-dense-ldl-an-update/ 

Small dense LDL

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shinzo/43/4/43_444/_pdf 

CM、VLDL、IDL、LDL、HDLの特徴の説明

リポタンパク質の種類について(CM、VLDL、IDL、LDL、HDL) – 栄養関連知識ねっと (eiyo-chishiki.com)

HDL2,3コレステロール

http://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/001119402 

心臓リハビリテーションによりコレステロールリッチなHDL2が増加する可能性

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jas2012/201207/525988.html

アポリポ蛋白

http://www.kensin-kensa.com/archives/cat17/post_64/ 

脂質異常症(高脂血症)

https://polaris.hoshi.ac.jp/kyoshitsu/keitai/open%20resarch%20HP%20%E6%9C%80%E6%96%B0%20-%20%E3%82%B3%E3%83%94%E3%83%BC/huyperdipidemia.html

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