PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33484562/
タイトル:Adipose Insulin Resistance and Decreased Adiponectin Are Correlated With Metabolic Abnormalities in Nonobese Men
<概要(意訳)>
背景:
脂肪組織の機能障害は、「アディポネクチン(AN)レベルの低下」と「脂肪組織のインスリン感受性(ATIS)の障害」を特徴とし、代謝障害と関連している。
アジア人は、非肥満でも代謝性疾患を発症発症しやすいが、ANレベルの低下とATISの障害が非肥満アジア人の代謝異常にどのように影響するかは未だ分かっていない。
方法:
ANレベルの低下、ATISの障害、代謝異常における関係を調査するために、ボディマス指数(BMI)が25 kg/m2未満の日本人男性94例を調査した。
被験者を「脂肪貯蔵機能」の指標となる「脂肪組織インスリン感受性(ATIS)」と「血中アディポネクチン濃度(AN)」における各々の中央値の高低で4つのグループ[①High-ATIS / High-ANグループ(n=29)、②High-ATIS / Low-ANグループ(n=18)、③Low-ATIS / High-ANグループ(n=18)、④Low-ATIS / Low-ANグループ(n=29)]に分けて、代謝的特徴[骨格筋インスリン感受性、肝脂肪、空腹時トリグリセリド(中性脂肪)、HDLコレステロール等]を比較した。
前者は2-ステップ高インスリン正常血糖クランプ法(肝臓、骨格筋のインスリン抵抗性をそれぞれ精密に計測する方法)で測定した。
結果:
「脂肪組織インスリン感受性(ATIS)」が高い2つのグループ(①High-ATIS / High-AN、②High-ATIS / Low-AN)では、「血中アディポネクチン濃度(AN)」の高低に関わらず、代謝異常は認められなかった。
一方で、「脂肪組織インスリン感受性(ATIS)」が低い2つのグループ(③Low-ATIS / High-ANグループ、④Low-ATIS / Low-AN)では、「血中アディポネクチン濃度(AN)」の高低に関わらず、「骨格筋インスリン感受性」の有意な低下が認められた。
また、「脂肪組織インスリン感受性(ATIS)」と「血中アディポネクチン濃度(AN)」が共に低いグループ(④Low-ATIS / Low-AN)では、「脂肪組織インスリン感受性(ATIS)」が高い2つのグループ(①High-ATIS / High-AN、②High-ATIS / Low-AN)よりも、「肝脂肪」の有意な増加が認められた。
さらに、ATISとANが共に低いグループ④は、他の3つのグループよりも、「空腹時血清トリグリセリド(中性脂肪)」の有意な増加、「HDLコレステロール」の有意な低下が認められた。
J Clin Endocrinol Metab. 2021 Jan 23;dgab037.
結論:
非肥満の日本人男性において、脂肪インスリン感受性(脂肪貯蔵機能)が低く、アディポネクチン濃度が低い場合は、骨格筋インスリン感受性、高中性脂肪血症、肝脂肪蓄積といった代謝異常が顕著になっていることが示された。
一方で、脂肪インスリン感受性が高い場合は、アディポネクチン濃度に関わらず代謝異常との関連は示されなかった。
【参考情報】
2-ステップ高インスリン正常血糖クランプ法
https://www.juntendo.ac.jp/news/20190305-01.html
日本人は太っていなくても代謝異常のある人が多い
https://news.mynavi.jp/article/20210224-1752729/
正常体重でも代謝異常となる原因に脂肪の「質」が関連
https://www.sankei.com/economy/news/210222/prl2102220784-n1.html
なぜ体重は正常なのに「代謝異常」に? 体脂肪の「質」が糖尿病や肥満・メタボに影響
https://dm-net.co.jp/calendar/2021/035622.php
脂肪細胞によるインスリン抵抗性の 分子機構