PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33812494/
タイトル:Association between pre-existing respiratory disease and its treatment, and severe COVID-19: a population cohort study
<概要(意訳)>
背景:
以前の研究では、COVID-19で入院した患者における慢性呼吸器疾患の有病率は、一般的な疾患で入院した患者の有病率よりも低いことが示唆されている。
本研究では、慢性肺疾患またはICS(吸入コルチコステロイド)の使用が、重症COVID-19リスクに影響するかどうかを調査した。
方法:
このコホート研究では、イギリスのQResearchデータベースに登録されている1,205施設の一般診療の記録として、SARS-CoV-2検査、入院、ICU(集中治療室)、COVID-19関連死のデータが含まれていた。
2020年1月24日に20歳以上の全ての患者(呼吸器疾患はCOPD、喘息、アクティブ喘息、重症喘息、気管支拡張症、嚢胞性線維症、サルコイドーシス、外因性アレルギー性肺胞炎、特発性肺線維症、その他の間質性肺疾患、肺癌を含む)が登録され、2020年4月30日に本研究は終了した。
Cox比例ハザード回帰モデルを使用して、呼吸器疾患とICSの使用による「COVID-19関連の入院、ICU入院、死亡」リスクを調査した。
結果:
2020年1月24日~4月30日の間に、8,256,161例が研究コホートに含まれ、観察された。その内、14,479例(0.2%)はCOVID-19で入院し、1,542例(<0.1%)はICU入院、5,956例(0.1%)は死亡した。
各呼吸器疾患とCOVID-19 関連の「入院」リスクは、それぞれ、
COPD(慢性閉塞性肺疾患):HR 1.54(95%CI 1.45-1.63)
喘息:HR 1.18(95%CI 1.13-1.24)
アクティブ喘息:HR 1.26(95%CI 1.20-1.33)
重症喘息(3剤以上の喘息薬を使用):HR 1.29(95%CI 1.22-1.37)
気管支拡張症:HR 1.34(95%CI 1.20-1.50)
サルコイドーシス:HR 1.55(95%CI 0.65-3.73)
外因性アレルギー性肺胞炎:HR 1.35(95%CI 0.82-2.21)
特発性肺線維症:HR 1.59(95%CI 1.30-1.95)
その他の間質性肺疾患:HR 1.66(95%CI 1.30-2.12)
肺癌:HR 2.24(95%CI 1.89-2.65)
となり、一部の呼吸器疾患のあるCOVID-19患者の「入院」リスクは高かった。
各呼吸器疾患とCOVID-19 関連の「死亡」リスクは、それぞれ、
COPD(慢性閉塞性肺疾患):HR 1.54(95%CI 1.42-1.67)
喘息:HR 0.99(95%CI 0.91-1.07)
アクティブ喘息:HR 1.05(95%CI 0.96-1.15)
重症喘息(3剤以上の喘息薬を使用):HR 1.08(95%CI 0.98-1.19)
気管支拡張症:HR 1.12(95%CI 0.94-1.33)
サルコイドーシス:HR 1.41(95%CI 0.99-1.99)
外因性アレルギー性肺胞炎:HR 1.56(95%CI 0.78-3.13)
特発性肺線維症:HR 1.47(95%CI 1.12-1.92)
その他の間質性肺疾患:HR 2.05(95%CI 1.49-2.81)
肺癌:HR 1.77(95%CI 1.37-2.29)
となり、一部の呼吸器疾患のあるCOVID-19患者の「死亡」リスクは高かった。
各呼吸器疾患とCOVID-19 関連の「ICU入院」リスクは、それぞれ、
COPD(慢性閉塞性肺疾患):HR 0.89(95%CI 0.68-1.17)
喘息:HR 1.08(95%CI 0.93-1.25)
アクティブ喘息:HR 1.34(95%CI 1.14-1.58)
重症喘息(3剤以上の喘息薬を使用):HR 1.30(95%CI 1.08-1.58)
気管支拡張症:HR 1.47(95%CI 0.91-2.36)
サルコイドーシス:HR 1.51(95%CI 0.81-2.81)
特発性肺線維症:HR 1.97(95%CI 0.85-4.55)
となり、一部の呼吸器疾患のある患者の「ICU入院」リスクは高かった。
Lancet Respir Med. 2021 Apr 1; S2213-2600(21)00095-3.
「COPD」を罹患した重症COVID-19患者の「入院、ICU入院、死亡」のリスクをそれぞれ、年齢(40-59歳、60-79歳、80歳以上)、性別(女性、男性)、人種(白人、アジア人、黒人、中国人、その他)、喫煙状況(非喫煙、過去喫煙、現喫煙)で、サブ解析したところ、交互作用が認められたのは、下記項目であった。
<入院リスク>
年齢:交互p<0.0001、年齢が若い方が高リスクであった
人種:交互p=0.0002、白人とその他人種の方が高リスクであった
喫煙状況:交互p=0.0002、現喫煙者の方が高リスクであった
<ICU入院リスク>
性別:交互p=0.025、女性の方が高リスクであった
<死亡リスク>
年齢:交互p<0.0001、年齢が若い方が高リスクであった
性別:交互p=0.005、女性の方が高リスクであった
人種:交互p=0.009、白人とその他人種の方が高リスクであった
Lancet Respir Med. 2021 Apr 1; S2213-2600(21)00095-3.
「重症喘息」を罹患した重症COVID-19患者の「入院、ICU入院、死亡」のリスクをそれぞれ、年齢(40-59歳、60-79歳、80歳以上)、性別(女性、男性)、人種(白人、アジア人、黒人、中国人、その他)、喫煙状況(非喫煙、過去喫煙、現喫煙)で、サブ解析したところ、交互作用が認められたのは、下記項目であった。
<入院リスク>
年齢:交互p<0.0001、年齢が若い方が高リスクであった
性別:交互p=0.003、女性の方が高リスクであった
喫煙状況:交互p=0.001、現喫煙者の方が高リスクであった
<ICU入院リスク>
性別:交互p=0.004、女性の方が高リスクであった
<死亡リスク>
年齢:交互p=0.001、年齢が若い方が高リスクであった
Lancet Respir Med. 2021 Apr 1; S2213-2600(21)00095-3.
また、事後分析では、呼吸器疾患のある人の重症COVID-19の相対リスク(入院、ICU入院、死亡)は、2020年3月23日にシールディング(重症化しやすい人たちの自宅での隔離生活)とロックダウンが導入される前後でも類似した結果が示された。
別の事後分析では、研究開始の150日前に2剤以上のICSで治療されている重症COVID-19患者は、1剤以下のICSで治療されている患者と比較して、「入院[HR 1.13(95%CI 1.03-1.23)、ICU入院[HR 1.63(95%CI 1.18-2.24)、死亡[HR 1.15(95%CI 1.01-1.31)]のリスクは若干高かった。
Lancet Respir Med. 2021 Apr 1; S2213-2600(21)00095-3.
結論:
喘息患者における重症COVID-19の(入院、ICU入院、死亡)リスクは、比較的小さかった。
COPDと間質性肺疾患のある患者のリスクは、やや高いように見えるが、コロナ禍での死亡リスクは、一般的な疾患の死亡リスクよりもはるかに低かった。