PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32416121/
タイトル:Glycosylated hemoglobin is associated with systemic inflammation, hypercoagulability, and prognosis of COVID-19 patients
<概要(意訳)>
背景:
糖尿病はCOVID-19の重症化と予後不良の危険因子だが、COVID-19患者のHbA1cレベルと炎症、予後との関係は調査されていない。
本研究では、糖代謝異常のCOVID-19患者の死亡率と炎症に対するHbA1cレベルの影響を後ろ向きに調査した。
方法:
患者背景、臨床検査データ、COVID-19の症状、および治療結果を収集し、分析した。
COVID-19患者は、A(糖尿病の既往はなく、HbA1c≦6.0%)、B(糖尿病の既往はなく、HbA1c>6.0%)、C(糖尿病)の3つのグループに分けた。
各グループの患者数は、41人(グループA)、44人(グループB)、47人(グループC)であった。
グループCの31人(66.0%)は、2型糖尿病の既往があり、16人(34.0%)は、新規の糖尿病と診断された。
糖尿病の既往歴のある患者は、入院前に複数の経口血糖降下薬を投与され(主に、メトホルミンとアカルボース)、その内の12人(25.5%)が入院前にインスリン療法を行っていた。
結果:
本研究の対象となったCOVID-19患者は、合計132人(男性68人、女性64人)であり、年齢の中央値は66歳(四分位範囲:56〜72歳)であった。
88人(66.7%)に併存症があり、内訳は、高血圧(50.0%)、糖尿病(35.6%)、心血管または脳血管疾患(24.2%)、慢性腎臓病(7.6%)であった。
7人は、慢性腎不全で入院中に間欠的腎代替療法(IRRT)を受けていた。
COVID-19の発症から入院までの期間は、中央値14(四分位範囲:10.0-17.8)日であった。 入院時のSaO2(動脈血酸素飽和度)は、中央値95%(四分位範囲:90-97%)で、酸素吸入の患者はいなかった。
全体のHbA1cは、中央値6.4%(四分位範囲:5.8-7.2%)であり、3つのグループ間において、SaO2、血清フェリチン、CRP(C反応性蛋白)、ESR(赤血球沈降速度)、Fbg(フィブリノーゲン)、IL-6(インターロイキン6)に有意な差があった(p<0.01)。
ペアワイズ比較により、グループA(糖尿病の既往はなく、HbA1c≦6.0%)とC(糖尿病)における有意な差は、血清フェリチン(p<0.01)、CRP(p<0.01)、Fbg(p<0.01)、IL-6(p=0.03)、ESR(p<0.01)、SaO2(p=0.01)にあった。
グループA(糖尿病の既往はなく、HbA1c≦6.0%)とB(糖尿病の既往はなく、HbA1c>6.0%)における有意な差は、血清フェリチン(p=0.03)、CRP(p=0.01)、Fbg(p=0.02)、IL-6(p=0.02)、ESR(p=0.02)にあった。
グループB(糖尿病の既往はなく、HbA1c>6.0%)とC(糖尿病)における有意な差は、血清フェリチン(p=0.04)にあった。
相関分析により、「SaO2とHbA1c」の間には「負の相関」があり、「血清フェリチン、CRP、Fbg、ESRとHbA1c」の間には「正の相関」があった。
DIABETES RESEARCH AND CLINICAL PRACTICE 164(2020)108214
入院中の死亡は、合計22人(16.7%)であり、グループAで4人(9.8%)、グループBで5人(11.40%)、グループCで13人(27.7%)であった。
グループAとCの死亡率には、有意な差があった(p=0.03)。
DIABETES RESEARCH AND CLINICAL PRACTICE 164(2020)108214
結論:
高いHbA1c値は、COVID-19患者の全身性炎症と凝固能の亢進、およびSaO2の低値に関連しており、糖尿病の患者の死亡率(27.7%)は高かった。
したがって、入院後のHbA1cの測定は、COVID-19患者の全身性炎症と凝固亢進の状態、および予後の評価に役立つだろう。