PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36264574/
タイトル:Comparative Effectiveness of Empagliflozin vs Liraglutide or Sitagliptin in Older Adults With Diverse Patient Characteristics
<概要(意訳)>
目的:
様々な心腎リスクを有する2 型糖尿病患者における、エンパグリフロジンと代替の血糖降下薬の有効性を比較したデータは限られている。
本研究では、エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬)とリラグルチド(GLP-1受容体作動薬)およびシタグリプチン(DPP-4阻害薬)との有効性をベースラインの年齢、性別、アテローム性動脈硬化性心血管疾患 (ASCVD)、心不全 (HF)、慢性腎臓病 (CKD) で層別化して評価することを目的とした。
方法:
この後ろ向き観察研究では、2014年8月1日から2018年9月30日までの匿名化されたメディケア請求データを使用して、薬剤間の有効性比較を行った。
データ分析は、2021年10月1日から2022年4月30日まで実施した。
2 型糖尿病で65 歳以上のメディケア有料サービス受給者が対象となった。
比較コホート1(合計45,788例)は、エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬:22,894例)またはリラグルチド(GLP-1受容体作動薬:22,894例)のいずれかによる治療を開始する傾向スコアが一致した集団とした。
比較コホート2(合計45,624例)は、エンパグリフロジン(SGLT2阻害薬:22,812例)またはシタグリプチン(DPP-4阻害薬:22,812例)のいずれかによる治療を開始する傾向スコアが一致した集団とした。
主要評価項目は、(1)主要有害心血管イベント(MACE:心筋梗塞、脳卒中、全死亡)、(2)心不全による入院(HHF)とした。
ベースラインにおける143の共変量を調整し、1:1の傾向スコアマッチングにより、ハザード比(HR)とイベント発生率の差(RD)を推定した。
結果:
コホート1(合計45,788例:SGLT2阻害薬 vs GLP-1受容体作動薬)における平均年齢は 71.9歳、女性は23,396例(51.1%)、男性は22,392例(48.9%)、白人は38,049例(83.1%)であった。
コホート2(合計45,624例:SGLT2阻害薬 vs DPP-4阻害薬)における平均年齢は 72.1歳、女性は21,418例(46.9%)、男性は24,206例(53.1%)、白人は37,814例(82.9%)であった。
GLP-1受容体作動薬(リラグリチド)で治療を開始した患者と比較して、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)で治療を開始した患者では、主要有害心血管イベント(MACE)のリスク[HR 0.90(95%CI 0.79-1.03)]では有意な差はなかったが、心不全による入院(HHF)のリスク[HR 0.66(95%CI 0.52-0.82)]では有意な低下が示された。
GLP-1受容体作動薬(リラグリチド)と比較したSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)のMACEのサブ解析(年齢、性別、ASCVD、HHF、CKDで層別化)では、ASCVD [HR 0.83(95%CI 0.71-0.98)]および HF[HR 0.77(95%CI 0.60-1.00)] を有する患者のリスク低下が示された。
また、不均一性は、性別[男性: HR 0.85(95% CI、0.71-1.01)、女性: HR 1.16(95% CI 0.94-1.42); p=0.02]で観察された。
とくに、アテローム性動脈硬化性心血管疾患 (ASCVD)、心不全の既往のある患者で、主要評価項目の「(1)MACE(心筋梗塞、脳卒中、全死亡)、(2)心不全による入院(HHF)」における絶対的ベネフィット(RD)の有意な差があることが示された。
DPP-4阻害薬(シタグリプチン)と比較したSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)のMACE[HR 0.68(95%CI 0.60-0.77)]とHHF[HR 0.45(95%CI 0.36-0.56)]のリスクでは、有意な低下が示され、全てのサブグループ解析においても一貫した結果が示された。
また、不均一性が観察された層別化の項目はなかった。
とくに、アテローム性動脈硬化性心血管疾患 (ASCVD)、心不全、CKDの既往のある患者で、主要評価項目の「(1)MACE(心筋梗塞、脳卒中、全死亡)、(2)心不全による入院(HHF)」における絶対的ベネフィット(RD)の有意な差があることが示された。
JAMA Netw Open. 2022 Oct 3;5(10):e2237606.
結論:
65歳以上の高齢2型糖尿病患者を対象とした有効性比較研究では、GLP-1受容体作動薬(リラグリチド)およびDPP-4阻害薬(シタグリプチン)と比較して、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)による治療は、心不全による入院(HHF)のリスク低下と関連することが示された。
主要な有害心血管イベント(MACE)は、SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)による治療は、DPP-4阻害薬(シタグリプチン)と比較して、心腎疾患を有する患者でより大きなベネフィットが得られることが示された。
GLP-1受容体作動薬(リラグリチド)と比較した場合は、心血管疾患[アテローム性動脈硬化性心血管疾患 (ASCVD)、心不全]の既往のある患者で大きなベネフィットが得られることが示された。