PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33186500/
タイトル;Effect of Empagliflozin on Left Ventricular Volumes in Patients with Type 2 Diabetes, or Prediabetes, and Heart Failure with Reduced Ejection Fraction (SUGAR-DM-HF)
<概要(意訳)>
背景:
SGLT2阻害薬は、HFrEF患者の「心不全入院および心血管死」のリスクを減少させる。
しかしながら、HFrEF患者における心臓の構造と機能に対する影響は未だ分かっていない。
方法:
2型糖尿病または糖尿病境界型(糖尿病前症)のHFrEF(LVEF≦40%、NYHA分類:Ⅱ~Ⅳ度)患者におけるSGLT2阻害薬の心臓への影響を調査する為に、多施設無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験(SUGAR-DM-HF試験)を実施した。
被験者は、SGLT2阻害薬群(エンパグリフロジン10㎎/日)、またはプラセボ群に1:1で無作為化され、年齢(65歳未満および65歳以上)、および血糖状態(糖尿病または糖尿病境界型)によって層別化された。
主要評価項目は、「心血管核磁気共鳴法(CMR)により測定した、ベースラインから36週の左室収縮末期容積係数(LV ESVI)と左室長軸方向ストレイン(LV GLS)の変化」とした。
副次評価項目は、「他のCMR測定値[LV EDVI(左室拡張末期容積係数)、LVEF(左室駆出率)]、利尿薬の追加、カンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)で測定されたQOL、6分間歩行試験(6MWD)、Bラインを用いた肺超音波(心原性肺水腫の評価)およびバイオマーカー(NT-proBNPを含む)」とした。
結果:
2018年4月~2019年8月の間に105例の被験者が無作為に割り付けられた。
ベースライン特性は、「男性77例(73.3%)、平均年齢68.7歳、2型糖尿病82例(78.1%)、糖尿病境界型23例(21.9%)、平均LVEF 32.5%(9.8%)、NYHAⅡ度81例(77.1%)、NYHA Ⅲ度24例(22.9%)」であった。
被験者は、HFrEFの標準的な治療を受けた。
プラセボ群と比較して、SGLT2阻害薬群(エンパグリフロジン)は、左室収縮末期容積係数(LV ESVI)を有意に減少させた[-6.0 ml/m2(95%CI -10.8〜-1.2)、p=0.015]。
一方で、左室長軸方向ストレイン(LV GLS)は、有意な差がなかった(p=0.25)。
また、プラセボ群と比較して、SGLT2阻害薬群(エンパグリフロジン)は、左室拡張末期容積係数(LV EDVI)[-8.2 ml/m2(95%CI -13.7〜-2.6)、p=0.0042]とNT-proBNP[28%(95%CI 2〜47)、p=0.038]を有意に減少された。
Circulation.2020 Nov13. doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.120.052186.
結論:
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)は、2型糖尿病または糖尿病境界型(糖尿病前症)のHFrEF(LVEF≦40%、NYHA分類:Ⅱ~Ⅳ度)患者の左心容積を減少させた。
この左室リバースリモデリング(心機能の改善と左室容積の縮小)は、SGLT2阻害薬が心不全入院と死亡リスクを減少させる機序の一つであることが示された。
【参考情報】
心機能指標の標準的計測法とその解説
https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/JVM00002.PDF
B ラインを用いた point-of-care 超音波による心原性肺水腫の評価
https://www.jsum.or.jp/info/online_pdf/20180216_kameda.pdf
左室拡張末期容積係数(LVEDVI)の正常上限値に異論
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/cvdprem/mpt/200907/511553.html