【2026年度診療報酬改定】心不全再入院予防継続管理料の算定要件|施設基準・併算定・リレー運用



*ファクト確度の表記:✅=告示・通知・疑義解釈で確定、⚠️=条文上は強固だが疑義解釈での明示確認なし、💭=筆者の運用提案・予測

3月にお届けした「心不全再入院予防継続管理料1,000点の衝撃」([→記事⑥参照])は、おかげさまでシリーズで最も多くの方に読んでいただいた記事になりました。ありがとうございます。

ただ、あの記事には正直に告白すべきことがあります。執筆したのは2026年2月、まだ答申段階でした。点数も施設基準も「⚠️ こうなる見込み」という推測混じり。あれから告示が出て、施設基準通知が出て、疑義解釈がその11(7月30日)まで積み上がりました。

そして6月1日、いよいよ施行です。

今日は、お茶を一杯淹れて、「あのとき推測で書いたことが、実際どうなったのか」を答え合わせします。結論から言うと、私の推測には当たった部分と、はっきり外れた部分がありました。特にかかりつけ医の先生方にとっては、外れた部分のほうが重要です。見落とすと、算定できると思っていたものが算定できない――そんな事態になりかねないからです。

この記事は、急性期病院から心不全患者の逆紹介を受ける(あるいは受けたい)かかりつけ医・内科クリニックの院長先生と、医療事務スタッフの方に向けて書いています。施行直前の今、知っておくべき「確定した正解」を、査定で泣かないための視点で整理しました。

1. なぜ今「答え合わせ」が必要なのか

制度というのは、答申→告示→通知→疑義解釈、と段階を踏んで解像度が上がっていきます。心不全再入院予防継続管理料は、新設項目だけに「告示だけでは読み切れない」部分が多く、現場から疑義解釈を待つ声が相次ぎました。

実際、4月の段階では専門家のブログでも「管理料3を算定している期間中に再入院したら、入院先で改めて管理料1を算定できるのか。再入院予防が目的だから難しそうだが、疑義解釈を待つしかない」といった声が並んでいました。

その「待っていた答え」が、疑義解釈その5(5月8日)で一気に出ました。さらに施設基準通知を精読すると、答申段階では見えなかった「本当のハードル」が浮かび上がってきます。

このシリーズの強みは、一次資料(厚労省の告示・通知・疑義解釈の原文)に直接あたることです。今回も、点数の一桁まで、施設基準の経験年数まで、すべて原文で確認しました。では、確定した正解を見ていきましょう。

2. まず確定した「点数と算定の骨格」

記事⑥で⚠️としていた点数は、すべて✅確定しました。

区分

算定場面

点数

算定回数

管理料1

急性期病院(入院中)

1,000

入院中1回

管理料2

退院後の外来(高度連携施設)

700

1〜6回目(月1回)

管理料2

同上

225

7回目以降

管理料3

かかりつけ医(逆紹介先)

400

1〜6回目(月1回)

管理料3

同上

225

7回目以降

外来の管理料2・3は、いずれも初回算定日の属する月から起算して1年を限度として、月1算定します✅。★告示注2・注3の文言は「初回算定日の属する月から起算して」です。たとえば6月15日が初回なら、起算は6月で、翌年5月まで。「初回算定日から1年」と読むと翌年6月を含めてしまい、最終月で1か月の過大算定になります。⚠️なお、留意事項通知(1)は「初回算定日より1年を限度として」と書いており、告示と文言が一致しません。上位文書である告示に従い、保守的に「属する月から起算」で運用するのが安全です(迷う場合は審査機関に事前確認を)。

ここで早くも、記事⑥では曖昧にしていた重要ポイントが2つ確定します。

ひとつは、管理料2・3の6回目まで」と「7回目以降」で点数が下がること。管理料3でいえば、最初の半年は400点、7か月目からは225点に半減します。この「半減」こそ、後で出てくる主病スイッチ戦略の起点になります。

もうひとつ、この回数は患者単位でカウントされ、医療機関をまたいでも通算されることが疑義解釈その5・問9で確定しました。これは見落とすと痛い。詳しくはセクション6で解説します。

3. 【最重要】かかりつけ医が見落とす管理料3の「本当の施設基準」

ここが、記事⑥で私が最も大きく外した部分です。正直にお伝えします。

記事⑥で私は、管理料3の施設基準について「地域包括診療加算をすでに算定している診療所であれば、追加的な設備投資はほぼ不要で管理料3への移行が可能な構造です」と書きました。しかも、これを(確定)ラベルで書いてしまったのです。内容が誤りだっただけでなく、確度ラベルの貼り間違いでもありました。

公平を期すために補足すると、記事⑥は答申段階で執筆したもので、管理料3の経験年数要件は、その後の施設基準通知で初めて具体化しました。「推測が大外れした」というより「新しい一次情報で、本当の要件が判明した」というのが実態に近い。とはいえ、答申段階の読みを✅確定として書いたのは私の勇み足でした。だからこそ、今回あらためて施設基準通知の原文を確認したのです。

施設基準通知(保医発0305第8号)の原文を読むと、管理料3にはこう書かれています。

✅ 管理料3を算定するには、「心不全指導の経験を5年以上有する専任の医師」と「心不全指導の経験を3年以上有する専任の看護師又は保健師」が必要(施設基準通知 第7の3・2)。

つまり、「地域包括診療加算があればOK」では全くなく、心不全指導の経験年数を満たす医師と看護師が自院にいるかどうかが、最大の関門なのです。

これは、かかりつけ医にとって判断の起点が変わることを意味します。記事⑥のように「地域包括診療加算の有無」から考え始めると、肝心の経験年数要件を見落とします。正しい判断フローはこうです。

心不全指導の経験5年以上の医師が自院にいるか?
 ├→ いいえ → 管理料3の算定は現時点で不可。まずは逆紹介の受け皿として
 │ 地域包括診療加算+BNP測定の体制から
 └→ はい → 心不全指導経験3年以上の看護師(or保健師)がいるか?
   ├→ いいえ → 看護師の経験要件を満たす体制づくりから
   └→ はい → 管理栄養士の体制(自院 or 外部連携)は確保できるか?
      ├→ いいえ → 外部連携で整備(連携先は2類型に限定・後述)
      └→ はい → 管理料3の算定要件をほぼ充足。残るは研修会参加(後述)

一方で、記事⑥の推測が当たっていた部分もあります。管理料3は、管理料1・2のフルチーム(医師・看護師・管理栄養士全員+薬剤師・理学療法士の配置)と比べると要件が緩い。具体的には、

  • ✅ 医師・看護師又は保健師のうち少なくとも1名以上が常勤であればよい(管理料1・2は3職種全員が常勤。管理料3では原典が3職種をまとめて「1名以上」としており、どの職種で満たすかの指定はありません。⚠️自院の構成で判断に迷う場合は届出前に地方厚生局へ確認を)
  • ✅ 管理栄養士は自院に置かなくてもよく、外部連携でも可(ただし連携先は2類型に限定され、経験年数の要件も付きます。後述)
  • ⚠️ 薬剤師・理学療法士の配置は、施設基準通知では「望ましい」止まり(必須とは書かれていない)

★⚠️ここは両論併記します(2026年8月訂正)。公開当初は「必須ではない」を✅としていましたが、上位文書である告示第71号(特掲診療料の施設基準)第五の一の三は、管理料1・2・3を区分せずにこう定めています。

  • 当該体制において、心不全の診療を担当する医師、看護師又は保健師、薬剤師及び管理栄養士が適切に配置されていること。

つまり告示は「体制として薬剤師を配置していること」を求めており、施設基準通知が管理料3のチーム構成について述べる「望ましい」とは読み分かれます。疑義解釈その8・問6は「心不全再入院予防チームに薬剤師及び理学療法士が所属してもよいか」に「そのとおり」と答え、研修修了も「望ましい」としており、チームの必須構成員ではないことを示唆します。「チームの構成員」と「体制としての配置」は別の話と整理するのが原文に忠実ですが、告示が上位である以上、薬剤師不在のまま届け出るのは危険です。届出前に地方厚生局へ確認してください。

管理栄養士の「外部連携でも可」にも、原典に限定が付いています(2026年8月追記)。施設基準通知 第7の3 の2(3)は、外部連携の相手をこう限定しています。

心不全指導の経験を3年以上有する専任の管理栄養士又は心不全指導の経験を3年以上有する当該保険医療機関以外(公益社団法人日本栄養士会若しくは都道府県栄養士会が設置し、運営する「栄養ケア・ステーション」又は他の保険医療機関に限る。)の管理栄養士との連携により、医師が栄養管理の必要性を認めた患者に対して栄養食事指導を行うことが可能な体制を整備すること。

読み取れる条件は3つです。

  • 連携先は2類型に限定——①公益社団法人日本栄養士会又は都道府県栄養士会が設置し、運営する「栄養ケア・ステーション」、②他の保険医療機関。条文は「等」ではなく「限る」と書いています
  • 外部の管理栄養士にも「心不全指導の経験3年以上」が必要(自院に置く場合と同じ年数。経験年数の壁は外部連携でも消えません)
  • 外部の管理栄養士に「専任」要件はない(条文は自院の管理栄養士にだけ「専任の」と付し、外部の管理栄養士には付けていません。この書き分けが根拠です)

⚠️効いてくるのは「設置し、運営する」という主体の条件です。通知が認めているのは、日本栄養士会又は都道府県栄養士会が自ら設置し、運営する「栄養ケア・ステーション」です。同じ名称・類似の名称で運営されていても、この主体条件を満たさない事業所が連携先として認められるかは、条文の文言からは確定できません連携先を決める前に、その事業所の設置・運営主体を確認し、地方厚生局に照会してください。連携先を誤ると施設基準の不充足となり、算定済み分が返戻の対象になり得ます。

したがって、経験年数の壁が最大の関門であることは変わりませんが、体制面を「緩い」と即断しないでください。薬剤師の配置は告示と通知で読み分かれ、管理栄養士の外部連携には連携先と経験年数の限定が付きます。

4. 研修会という「見えない参入条件」

施設基準を読み込むと、もうひとつ記事⑥では描けていなかった構造が見えてきます。研修会です。

立場

研修会での役割

✅ 管理料1・2(急性期病院)

院内研修を年1回以上実施し、さらに地域の管理料3算定機関に向けて研修会を年1回以上「主催」

✅ 管理料3(かかりつけ医)

管理料1・2を届け出ている病院が主催する研修会に「参加」

お気づきでしょうか。急性期病院が「教える側」、かかりつけ医が「教わる側」として、研修を通じた知識移転が施設基準そのものに組み込まれているのです。

これは単なる事務手続きではありません。厚労省は「心不全の地域連携」を、点数だけでなく研修という形で制度に埋め込んだ。Donabedianのモデルで言えば、個々の診療(Process)を評価するだけでなく、地域全体の連携体制(Structure)を作りにいっている。ここに、この管理料の設計思想が透けて見えます。

実務的な朗報もあります。疑義解釈その5・問10で、新規届出時は「届出日から1年以内に研修会の開催が決まっている」ことが書類で示せれば要件を満たすと確定しました(ただし1年以内に必ず参加すること)。「研修会がまだ開かれていないから届出できない」という事態は避けられます。

2026年8月追記(疑義解釈その8・その9)。研修会について、その後2つの実務的な回答が出ました。その8・問7は、地域に管理料3を算定する医療機関が無い場合でも「研修を開催することは必要」とし、二次医療圏の保険医療機関に参加や連携を呼び掛けるよう求めています✅。その9・問4は、管理料1・2の届出医療機関が地域に複数ある場合、研修会を合同で開催することは可能と回答しました(ただし合同開催する医療機関は、心不全治療の地域連携に係る体制をあらかじめ協議し、連携していることが条件)✅。

5. 管理料3の「入口」を間違えると算定できない

ここも査定に直結する重要ポイントです。記事⑥では明確に書けていませんでした。

管理料3は、どんな心不全患者にでも算定できるわけではありません。

✅ 管理料3の対象は、「初回算定日の6月以内に、管理料1又は2を算定していた入院中の患者以外の患者であって、心不全を主病とするもの」(留意事項通知(4))。

★⚠️告示と通知で文言が食い違います(2026年8月追記)。告示 B001-10 注3は「入院中の患者以外の患者であって、1を算定したものに対して」とだけ規定し、「6月以内」という期間制限も「心不全を主病とする」要件も置いていません。上に引いた留意事項通知(4)は、そこに期間と主病を加えています(管理料2側も、告示注2と通知(3)で同じ構図です)。通知のほうが狭いため、通知に従うのが保守的で安全ですが、上位文書は告示です。境界例は地域の審査機関に事前確認してください。

平たく言えば、急性期病院で管理料1(入院中の多職種介入)または管理料2(高度連携施設の外来)を算定された患者が、退院後6か月以内に逆紹介されてきた――この入口を通った患者だけが対象です。病院の外来で管理料2を算定された後に逆紹介されたケースも対象になるので、「管理料1または2」のどちらかを6か月以内に算定済みか、を確認してください。

つまり、自院にもともと通院している心不全患者に、いきなり管理料3を算定することはできません。 必ず「管理料1または2を算定した急性期病院・連携施設からの逆紹介」という入口が要る。ここを誤ると、算定要件を満たさないまま請求してしまい、返戻・査定の対象になります。

この設計は、裏を返せば急性期病院との連携関係そのものが算定の前提だということです。「連携先として選ばれる診療所」であることが、そのまま算定機会につながる。記事⑥で述べた「逆紹介の受け皿になることの戦略的価値」が、算定要件のレベルで裏付けられた格好です。

なお、管理料2には「療養指導等を個別に合計30分以上実施」という時間要件もあります(留意事項通知(3))。逆紹介を受ける側のかかりつけ医が主に使うのは管理料3ですが、連携の全体像として押さえておきましょう。

6. 再入院ループ ― リレーは一方通行ではなく「循環」する

記事⑥で「💭 再増悪時に管理料3へ再スイッチできる見込み」と書いた部分。これは疑義解釈その5・問8で、私の予想を超えて踏み込んだ形で確定しました。

✅ 管理料2又は3を算定していた外来患者が再入院した場合、管理料1を再度算定できる(疑義解釈その5・問8①)。

つまり、外来で管理料3を回している患者が再増悪で入院したら、そこで管理料1(1,000点)をもう一度算定できる。リレーは「病院→外来」の一方通行ではなく、「外来→再入院→また外来」と循環するのです。

ただし、ここに収益面の天井があります。見落とすと収益見込みを誤ります。

✅ 再入院しても、初回算定日が1年以内であれば初回算定日は変わらない(問8②)。

これが意味するのは、外来管理料2・3の「1年限度」は、1年以内の再入院では延長されないということ。1年の時計は、最初に算定した月から暦どおりに進み、止まりません。

ただし、ここには続きがあります。初回算定日が1年を超えていた場合は、再入院からの退院後に初めて算定した日が「新たな初回算定日」となり、再び1年算定できます(問8②の後半)。つまり「1年以内の再入院=窓は延びない」「1年を超えての再入院=新しい1年窓が立つ」という二段構えです。

ただし、ここに疑義解釈がまだ答えていない論点が1つあります。新たな1年窓が立ったとき、回数(イ400点/ロ225点)の起算が1回目(イ)に戻るのか、それとも問9の「患者単位・通算」の考え方でロ(225点)のまま続くのか――これは明示されていません。新窓だからとイ(400点)から算定すると、保守的な読み(通算でロ225点)との差が月175点の過大請求になりかねません。保守的には、残り回数に応じた点数(多くはロ)と見るか、地域の審査機関に事前確認するのが安全です。

再入院で管理料1(1,000点)を取り直せるのは増収ですが、1年以内であれば外来リレーそのものの持続期間は延びない。「再入院ループ=無限に回せる打ち出の小槌」ではない、という点は正確に理解しておきましょう。

なお、再入院時には早期リハビリテーション加算も再起算されます(疑義解釈その6・問16-17、起算日は再入院日)。再入院ループでは管理料1と早期リハ加算が再びセットで動く、と整理できます。

7. 併算定の地雷 ― ここを誤ると返戻・指導の標的に

医療事務の方が最も知りたいのは、おそらくここでしょう。「心不全管理料と、ふだん使っている管理料は同月に併算定できるのか?」

結論を、確度別に3層で整理します。ここは断定できる部分とできない部分を正直に分けます。

明文で「同月併算定できない」もの

  • 特定疾患療養管理料(心不全を主病とする場合)

これは留意事項通知(7)に明記されています。争いの余地はありません。

★その前に ― 「退院した月」は、かかりつけ医なら算定できます(2026年8月追記)

併算定の前に、受け皿側がいちばん取りこぼしやすい論点を1つ。

留意事項通知(6)は「管理料1を算定した同一月に管理料2は算定できない」と定めていますが、これは「入院していた医療機関と同一、または特別の関係にある医療機関の外来」に限った話です。

疑義解釈その5・問7②は、こう答えています。

入院していた保険医療機関以外の保険医療機関で「」を算定することは可能か。(答)可能。✅

つまり――病院を退院したその月に、地域のかかりつけ医が管理料3を算定することは可能です。「退院した月はどこも取れない」と思い込んで翌月まで待つ必要はありません。

★問7の①(管理料2について)には「入院保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関を除く」という括弧がありますが、(管理料3について)にこの括弧はありません。この書き分けの意味を含め、退院月まわりの整理は[記事⑰]で詳しく扱っています。

⚠️ 原則は同月不可、ただし明文の「除外」があるもの ― 地域包括診療料(B001-2-9

ここは注意が必要です。記事⑥の頃から「地域包括診療料とは同月不可」と理解されてきましたが、原文を正確に読むと、重要な但し書きがあります。

留意事項通知(7):「地域包括診療料(慢性心不全以外の慢性疾患等も有する患者について算定する場合を除く。)は同月内に算定できない」

つまり、同月不可になるのは「心不全以外の慢性疾患を持たない患者」について算定する場合。逆に、心不全に加えて他の慢性疾患(糖尿病・高血圧症など)も併せ持つ患者については、この除外に当たり、地域包括診療料の同月算定が認められる場合があります。

そもそも地域包括診療料は、6疾病(脂質異常症・高血圧症・糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病・認知症)を対象疾病とする管理料です。★2026年8月訂正:公開当初は「複数を持つ患者が対象」と書いていましたが、留意事項通知は対象疾病を「6疾病のうち1又は2疾病」としており、複数保有は必須ではありません✅。本記事が想定するCKM患者(心不全+生活習慣病併存)は、まさに「心不全以外の慢性疾患も有する患者」に該当します。この層では、地域包括診療料を一律に取り下げる必要はない――むしろ取り下げると、月1,600点超の大型管理料を取り損ねます。

ただし、除外規定の具体的な射程(どこまで同月算定が認められるか、包括規定との関係)は精査の余地があります。「原文上、多疾患患者では同月算定が認められる場合がある」と理解したうえで、自院の患者像に当てはめて慎重に判断してください。

告示の除外リストを全数確認して確定したもの(★2026年8月・記事⑰で格上げ)

  • 生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)、および連動して充実管理加算

ここは丁寧に説明します。根拠は告示の包括構造です。

2026年8月の訂正です。公開当初、ここでは「主病が排他的だから」という理由も併記していました。しかし記載要領(別添1)は「主傷病については原則として1つ、副傷病については主なものについて記載することとし、主傷病が複数ある場合は、主傷病と副傷病の間を線で区切るなど、主傷病と副傷病とが区別できるようにすること」と定めており、主傷病が複数となる場合の記載方法を明記しています。したがって「同じ月に両方を主病とする設定は成り立たない」を根拠にはできません。以下の包括構造だけで、結論は十分に立ちます。

包括の構造です。ここは告示の除外リストを全数数え直しました✅。

 

包括する範囲

除外項目

B001-10は除外に含まれるか

(Ⅰ)注2

第2章第1部医学管理等(=第1部まるごと)+第3部検査・第6部注射・第13部病理診断

5項目

含まれない

(Ⅱ)注2

第2章第1部1医学管理料等

37項目

含まれない

そして心不全再入院予防継続管理料(B001-10)は「第2章 特掲診療料 → 第1部 → 第1医学管理料等」に属します✅。第1節は(Ⅰ)の範囲にも(Ⅱ)の範囲にも入り、どちらの除外リストにも載っていない。したがって――(Ⅰ)を算定した月も(Ⅱ)を算定した月も、心不全管理料は包括され、別に算定できません。

(Ⅰ)のほうが包括範囲は広いという点に注意してください。「(Ⅱ)は37項目も除外しているのに(Ⅰ)は5項目だけ」という数字を見ると(Ⅰ)のほうが緩そうに見えますが、逆です。

2026年8月の追記です。公開当初は「疑義解釈で確定したとは言えない」として⚠️にしていましたが、除外リストは閉じた列挙であり、そこにB001-10が無いことを全数確認できたため✅へ格上げしました(根拠は告示であり、通知でも疑義解釈でもありません)。なお疑義解釈その1〜その11を横断検索してもこの論点を扱った設問はありませんが、それは格上げの根拠ではなく、反証を探して見つからなかったという結果です。詳しくは[記事⑰]で扱っています。

💭 同月算定できる公算が高いが、議論の余地もあるもの

  • 地域包括診療加算(A001注12)

これは再診料の加算(出来高型)で、医学管理料を包括する構造を持ちません。留意事項通知(7)も”料”だけを名指しし、“加算”には触れていない。だから同月可の公算が高い。

ここまでを、医療事務の方が一目で確認できる早見表にまとめます。

心不全管理料と同月に…

可否

確度

特定疾患療養管理料(心不全主病)

✕ 不可

✅明文

地域包括診療料(B001-2-9)

△ 原則不可・例外あり

⚠️明文に除外規定

生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)

✕ 不可

✅告示の除外リストを全数確認

充実管理加算(生活習慣病管理料の加算)

✕ 連動して不可

✅同上

地域包括診療加算(A001注12)

△ 要確認

💭両論あり

地域包括診療料の△について:原則は同月不可ですが、「心不全以外の慢性疾患等も有する患者」については除外規定により同月算定が認められる場合があります(留意事項通知(7))。CKM患者(心不全+生活習慣病併存)は該当しうるため、一律に取り下げないこと。ただし除外の具体的な射程は精査の余地があるため、同月に両方を算定する場合は地域の審査機関に事前確認するのが安全です。

(地域包括診療加算)について:地域包括診療加算は出来高型で同月可の公算が高いものの、厚労省の明示確認がありません。疑義解釈や施行後の審査事例で確認できるまでは、保守的に運用してください(同月併算定を避ける、または地域の審査機関に事前確認する)。

充実管理加算のティア(加算1=30点/2=20点/3=10点)は、患者ごとの臨床判断で選ぶものではなく、クリニックが疾患別(脂質異常症/高血圧症/糖尿病)に届け出たティアで決まります。相対評価(上位20%/50%)も疾患別に算出されるため、同じクリニックでも患者の主病疾患によって適用される点数が異なりうる点に注意してください(例:糖尿病主病なら加算1で30点、高血圧主病なら加算2で20点、ということが起こりえます)。

8. リレー型運用の「正しい」設計 ― 月単位スイッチと患者通算第7回

さて、ここまでの併算定ルールを踏まえると、記事⑥・記事⑩でお伝えしたリレー型運用は、ある一点を守る限り、制度的にしっかり成立します。その一点とは――

同月併用ではなく、「主病の月単位スイッチ」として運用することです。

対象になるのは、心不全と生活習慣病(糖尿病・高血圧・脂質異常症)を併せ持つCKM患者です。心不全だけで生活習慣病のない患者は、そもそも生活習慣病管理料に切り替えられません(その場合の受け皿は特定疾患療養管理料。本記事の射程外です)。

なぜ「第7回」で切り替えるのか

点数を並べると、切り替えのタイミングは数字がはっきり教えてくれます。

時期

管理料3を続けると

生活習慣病管理料(Ⅱ)+充実管理加算に切り替えると

月1〜6(イ)

400

333点+充実10〜30点=343〜363点

月7〜(ロ)

225点

343〜363

最初の6か月は管理料3イ(400点)が上回るので、管理料3を維持。7回目の算定で管理料3がロ(225点)へ半減した瞬間、生活習慣病管理料側が逆転します。 だから「患者通算で第7回目の算定」を切り替えの合図とするのが合理的。

なお、イ/ロの区分は「回数ベース」(算定した月のみカウントが進む)です。途中に算定しない空白月があれば、6回の消化に6か月以上かかることもあります。さらにこの回数は患者単位で、医療機関をまたいで通算されます(疑義解釈その5・問9)。病院の外来で管理料2を3回消化した患者なら、自院での4回目が患者通算7回目=ロ(225点)です。つまり「7回目」は、暦の7か月目でも、自院での7回目でもありません。逆紹介を受けたら、まず消化回数を確認してください。

しかもこの逆転は、充実管理加算がなくても起こります(333点 > 225点)。つまり自院の充実管理加算のティアが加算1でも3でも、第7回スイッチが最適という結論は変わりません。

臨床と一致しているのが美しいところ

ここで強調したいのは、この第7回という区切りが、臨床的にも理にかなっていることです。

心不全は退院後6か月が再入院リスクの最も高い「集中介入期」であることが広く知られています。管理料3イ(400点)が配点される6回は、ちょうどこの集中期と重なります。7か月目に管理料の主眼が下がるのは、「集中介入期を終え、安定期の慢性疾患管理へ移行する」という臨床の流れと一致しているのです。💭 点数設計が臨床経過とこれほど綺麗に重なるのは、偶然ではないと私は見ています。

だから第7回スイッチは、単なる点数稼ぎではありません。患者の臨床経過(急性期の心不全管理安定期の生活習慣病・CKD重症化予防)に、算定が自然に追随する設計なのです。ここを取り違えないでください。

切り替えず管理料3を続けるべきケース

経済合理性だけで一律に第7回スイッチをすべき、ではありません。心不全が不安定なら、ロ(225点)でも管理料3を続けるのが臨床的にも査定的にも正解です。次のような場合は、主病を心不全に置き続けるべきです。

  • 直近に心不全の増悪や予定外受診、外来での静注利尿薬使用があった
  • NYHA III〜IV度、うっ血所見(体重変動・下腿浮腫・労作時呼吸困難)が残る
  • GDMT(ARNI・β遮断薬・MRA・SGLT2阻害薬)をまだ用量調整中
  • BNP / NT-proBNPが高値、または上昇トレンド
  • 腎機能・電解質が不安定で、心不全主眼のモニタリングが必要
  • 左室駆出率の高度低下が未回復

主病は、収益ではなく臨床的な優位性に従って決める。これが大原則です。

9. 収益シミュレーション ― 3つのシナリオ(誠実版)

「結局いくらになるの?」にお答えします。ただし今回は、記事⑥より保守的かつ正確にします。理由は、疑義解釈その5・問9で判明した通算ルールです。

管理料2・3の「6回目まで/7回目以降」は患者単位でカウントされ、医療機関をまたいでも通算される。つまり、急性期病院の外来(管理料2)で何回か算定された後に逆紹介されてきた患者は、かかりつけ医が受け取った時点ですでに7回目以降(225点)に入っていることがあります。「自院で1回目から400点」を前提にすると、収益を過大に見積もります。

そこで、金額を断定する前に、収益を左右する3つの変数を押さえてください。自院の実際の数字を当てはめて計算するのが、唯一正確なやり方です。

変数

内容

収益への効き方

①引き継ぎ時の消化回数

逆紹介時点で管理料2が何回消化済みか

消化が進むほど、自院が400点(イ)で算定できる月が減る

②患者数

管理料3を算定できる逆紹介患者の実人数

線形に効く

③第7回スイッチ後の上乗せ

生活習慣病管理料(Ⅱ)+充実管理加算へ移行した分

月343〜363点 × 残月数 × 患者数

たとえば「逆紹介時点で既にイ6回を消化済み」の患者なら、自院では最初からロ(225点)。逆に「退院直後に1回目から引き継いだ」患者なら、半年間はイ(400点)を算定できます。同じ患者数でも、の消化回数で年間収益は大きく変わるため、ここを確認せずに「1人あたり年間○万円」と一律計算すると過大評価になります。

そして見落とされがちなのが③です。心不全管理料を単独で見ると「1年で打ち切り」ですが、患者通算第7回で生活習慣病管理料(Ⅱ)+充実管理加算へスイッチすれば、その後も月343〜363点の管理が続きます。CKM患者を「リレーで通年管理する」ことの収益効果は、心不全管理料の点数表だけを眺めていては見えません。この上乗せ分にこそ表れます。

(自院の患者数・引き継ぎ回数を入れて月別に試算する計算ツールは、実装パックでご用意する予定です。)

再入院ループによる管理料1(1,000点)の再算定も増収要因です。ただし1年以内の再入院では外来リレーの1年限度は延長されないため、1年以内なら天井のある増収、1年を超えれば新たな1年窓」として正確に見込むのが安全です。

10. やってはいけない3つの失敗(アンチパターン)

この記事でいちばんお伝えしたいのは、ここかもしれません。

失敗1:経験年数要件を確認せず、管理料3を算定する

「逆紹介を受けたから」と、心不全指導経験5年の医師・3年の看護師がいないまま算定すると、施設基準不適合で返戻・返還の対象になります。算定前に必ず施設基準を自己点検してください。

失敗2:入口要件を無視して、自院通院中の心不全患者にいきなり算定する

管理料3は「6か月以内に管理料1・2を算定した患者」が対象。もともと自院に通っている心不全患者に算定すると、要件を満たしません。

失敗3:主病を「収益目的」で形式的に付け替える

これが最も危険です。第7回スイッチは「臨床的に安定期へ移行したから主病の主眼を移す」運用です。臨床実態を伴わないまま、点数が高いほうへ主病を機械的に付け替えると、個別指導の標的になります。

特に、主病を生活習慣病に移しても、心不全の病名は削除せず「併存病名」として残し、SGLT2阻害薬などの治療継続とBNPモニタリングをカルテに記録し続けること。「心不全を放置して主病だけ付け替えた」のではなく「心不全は安定し、管理の主眼が移った」ことを、客観的な記録で示す。これが査定防御の生命線です。

11. 実務ToDo ― 施行(6月1日)に向けて

かかりつけ医(院長)向け

□ 自院に「心不全指導経験5年以上の医師」がいるか確認
□ 「心不全指導経験3年以上の看護師・保健師」がいるか確認
□ 管理料1・2を届け出ている地域の病院が主催する研修会の予定を確認
□ 逆紹介元の急性期病院との連携ルートを確認(入口要件)
□ 管理栄養士は自院/外部連携のどちらで体制を組むか決定(外部連携なら、連携先が①栄養士会が設置・運営する栄養ケア・ステーション ②他の保険医療機関 のいずれかに該当するか、その管理栄養士が心不全指導の経験3年以上かを、契約前に確認)

医療事務スタッフ向け

□ 逆紹介患者の「管理料1・2の算定歴(6か月以内か、何回消化済みか)」の確認フローを作る
□ 管理料3と生活習慣病管理料・特定疾患療養管理料・地域包括診療料の同月併算定チェック欄をレセプト点検に追加
□ 主病移行月(患者通算第7回の算定月)の判断と記録のルールを院内で統一
□ 1年限度・回数通算の管理台帳を患者ごとに用意

12. ここから先は私見です(💭)

最後に、ラベルを明示したうえで予測を。

厚労省が「研修会の主催・参加」を施設基準に組み込んだことは、💭 2028年度改定で「連携実績の数値評価」へ進む布石だと私は見ています。今は「研修会を実施・参加していること」が要件ですが、次の改定では「逆紹介の件数」「再入院率の改善」といったアウトカム指標が問われる方向へ進むのではないか。Donabedianで言えば、Structure(体制)の評価から、Outcome(結果)の評価へ。心不全再入院予防継続管理料は、その移行の最初の一歩に位置づけられる気がしています。

もしそうなら、今のうちから逆紹介の記録と再入院データを蓄積しておくことが、次の改定で効いてきます。

お茶のおかわりはいかがでしたか。

心不全管理料は、点数だけ見れば「1,000点・400点」とシンプルですが、その裏には「経験年数」「入口要件」「主病スイッチ」「査定防御の記録」という、実務の落とし穴がいくつも隠れています。今日お伝えした「正解」が、施行直後の現場で、先生方とスタッフの方の助けになれば幸いです。

――そして、「自院の数字で、結局いくらになるのか」「主病移行のカルテをどう書けば査定に耐えるのか」。ここから先は、自院の患者数と体制に当てはめた“実装”の話になります。次の準備が整い次第、その道具立てをご用意します。

関連記事:[記事⑥ 心不全再入院予防継続管理料1,000点の衝撃] / [記事⑩ CKMリレー型運用] / [記事⑫ 疑義解釈まとめ(その1〜その4)]

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