はじめに ―― この管理料は、ひとつの病院の中で完結できない
お茶でも淹れて、少しだけお付き合いください。
先に、この記事の答えを3つ。
- 退院した月、自院の外来では管理料2は算定できません。別の医療機関なら、同じ月でも算定できます
- 回数(イ・ロ)は患者単位で数え、医療機関をまたいで通算されます。受け手は「1回目から」ではありません
- 管理料1・2を届け出た医療機関は、管理料3を届け出できません(送り手と受け手は分かれます)
前回の[記事⑯(急性期編)]では患者さんを送り出す側、その前の[記事⑮(正解編)]では受け取る側を扱いました。今日はそのあいだ――外来で算定する「心不全再入院予防継続管理料2」です。
この管理料には、他の2つにはない性質があります。制約がいちばん多い。通知が「算定できない」と名指しする場面が、「2」にだけ集中しているのです。
そして調べていくうちに、その理由が原典に書いてありました。疑義解釈その8・問7で、厚生労働省はこう述べています。
当該管理料は地域連携による心不全管理を評価するものであり、当該保険医療機関が所在する二次医療圏の保険医療機関に参加や連携を呼び掛けること。✅
「地域連携による心不全管理を評価するもの」。制度の目的が、一文で書かれています。
さらに疑義解釈その2・問55は、管理料1又は2の届出を行っている保険医療機関は、管理料3を届出できないと明言しました✅。つまり管理料1・2を届け出た病院は、自院の外来で受け皿まで兼ねることができない。リレーを自院の中で閉じることが、構造として封じられているわけです。
(誤解のないように補足すると、1→2は自院で完結できます。入院で管理料1、翌月から外来で管理料2――これは同じ病院で構いません。できないのは、その先の「3」まで兼ねることです。)
記事⑩との住み分け
[記事⑩(CKMリレー型運用)]でも「リレー」を扱いました。あちらは同じ医療機関の中で管理料をつなぐ収益設計の話です。今回は医療機関をまたぐ話。似た言葉ですが、別のものです。そしてこの住み分けは、私たちが選んだ切り口ではなく、問55と問7が制度としてそう設計したものです。
先にお伝えしておくこと
- 本記事は算定要件と併算定の設計に絞ります。診療情報提供料・退院時共同指導料・診療情報連携共有料といった連携系の点数は扱いません。記事⑮⑯と重なるうえ、本記事の価値は原典の読み解きにあるためです
- 「算定しない」も立派な選択です。要件を満たさないまま算定して返戻を受けるより、条件を整えてから始めるほうが、結果的に医療機関のためになります。本記事はその判断材料を提供します
H2-1. 心不全リレーの全体地図 ―― まず1枚で見る
「2」の話に入る前に、リレーの全体を1枚にしておきます。制約は、受け渡しの点に住んでいます。自分の段を見つけて、読むべき章へ跳んでください。
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リレーの段 |
管理料 |
点数 |
期間・頻度 |
この段で効く制約 → 読む章 |
深掘り |
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入院 |
1 |
1,000点 |
入院中に1回 |
検査目的入院は算定不可✅(その9問5) |
[記事⑯] |
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↓ 退院 ★制約の集中点 |
― |
― |
― |
同月・自院/特別の関係で「2」不可 → H2-2 |
― |
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外来 |
2 |
イ700点/ロ225点 |
月1回・初回月から1年 |
2つの時計 → H2-3/併算定 → H2-4 |
本記事 |
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↓ 逆紹介 ★もう1つの受け渡し |
― |
― |
― |
回数は患者単位で通算 → H2-7/届出の壁 → H2-5 |
― |
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かかりつけ |
3 |
イ400点/ロ225点 |
月1回・初回月から1年 |
栄養指導の逆流 → H2-6 |
[記事⑮] |
✅ 点数・対象・頻度はすべて告示 B001-10 本文および注1〜注3。イ=6回目まで/ロ=7回目以降です。
ここで2つだけ押さえてください。
1つめ。管理料1と2は、施設基準が同じです。施設基準通知の第7の3の「1」が、1と2の両方を規定しています✅。管理料1を届け出た急性期病院にとって、管理料2は「新しく基準を満たす」話ではなく、すでに満たしている基準で、外来でも算定する話です。
2つめ。7回目以降は、送り手が算定しても受け手が算定しても225点で同じです。後で見るとおり回数は医療機関をまたいで通算されるので、ロの段に入ってからなら、引き継ぎの月を1か月読み違えても金額は変わりません。(イの段では700点と400点で違うので、そちらは効いてきます)
届出は「1及び2」か「3」か
届出様式(様式8の5)の届出区分は、こうなっています。
1.届出区分(該当する届出事項を全て○で囲むこと) 1:心不全再入院予防継続管理料1及び2 2:心不全再入院予防継続管理料3 ✅
「いずれか1つ」ではなく「全て」です。同じ様式の別の項が「該当するいずれか1つを○で囲むこと」と書き分けているため、文面だけ読むと1と2の両方に○を付けられるように見えます。けれども実際は、問55が塞いでいます✅。様式ではなく疑義解釈が境界を引いている、という珍しい構造です。H2-8のアンチパターン③で再掲します。
⚠️ なお逆方向――すでに管理料3を届け出ている医療機関が、あとから1・2を届け出られるか――は問55の射程外で、原典からは決まりません。該当する場合は地方厚生局にご確認ください。
H2-2. 「退院した月に、外来で管理料2は取れますか」★本記事の核心
いちばん多い質問から始めます。月末に退院した患者さんが、翌週に外来へ来た。同じ月です。管理料2は取れるのか。
留意事項通知(6)は、こう書いています。
「1」を算定した患者が退院し、入院していた保険医療機関と同一の保険医療機関又は当該保険医療機関と特別の関係にある保険医療機関の外来を受診した場合について、「1」を算定した同一月において「2」は算定できない。✅
ここだけ読むと「退院した月はダメ」に見えます。が、それは半分です。
答えは「自院ならNO、よそならYES」
疑義解釈その5・問7が、残り半分を書いています。
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問7の設問 |
答 |
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①「1」を算定した同一月に、入院していた医療機関以外(特別の関係にある機関を除く)で「2」を算定できるか |
算定可 ✅ |
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②「1」を算定した同一月に、当該入院医療機関以外で「3」を算定できるか |
算定可 ✅ |
つまり通知(6)は、「同じ月」と「同じ(または特別の関係にある)医療機関」の2つが揃ったときだけ働きます。同じ月でも別の医療機関ならよい。同じ医療機関でも翌月ならよい。塞がれているのは「退院した月に、自院の外来で受けること」という一点です。
同じ月でも、別の医療機関へ紹介すれば算定できる。禁止規定に見えたものは、実は連携へ誘導する装置だった――これが本記事のいちばん大事なところです。冒頭の「地域連携による心不全管理を評価するもの」という一文と、きれいにつながります。
「特別の関係」とは何か
この言葉が効いてくるので、定義を原典から引いておきます(留意事項通知 別添1 第1章 第2部 通則7の(3))✅。
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# |
該当する関係 |
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(イ) |
開設者が同一 |
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(ロ) |
代表者が同一 |
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(ハ) |
代表者が、相手方の代表者の親族等 |
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(ニ) |
役員等のうち、相手方の役員等の親族等が10分の3を超える |
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(ホ) |
(イ)〜(ニ)に準ずる場合(人事・資金等を通じて経営方針に重要な影響を与えうる場合) |
対象となる「保険医療機関等」には、病院・診療所のほか介護老人保健施設と指定訪問看護事業者も含まれます。「親族等」には事実婚関係にある者や、生計を維持されている使用人等も含まれます。同一法人内のグループ、系列クリニック、理事長が親子――「別法人だから大丈夫」とは限りません。
「特別の関係にある診療所で、退院した月に管理料3」は取れるのか
問7の①には「特別の関係にある保険医療機関を除く」という括弧書きがあるのに、②にはありません。詰めておきます。
まず、確認できる事実。「3」を退院同月・特別の関係で禁じる規定は、告示・留意事項通知・施設基準通知・疑義解釈その1〜11・官報訂正5本のいずれにも存在しません✅。禁止規定は通知(6)ただ1つで、名指しされているのは「2」だけです。保険診療の算定は「制限規定に当たらない限り算定できる」という体系ですから、条文の筋では算定可です。
問7の書き分けも、この読みと矛盾しません。①にだけ除外括弧があり、②には無い――この違いがあること自体は原典の観察です✅。💭 なぜ②に括弧が無いのかについて原典は何も述べていませんが、「2」にだけ通知(6)という禁止規定が実在することを踏まえると、除外すべき規定が「3」には無かったから、と読むのが自然だと考えます(これは筆者の読みであって、厚労省の説明ではありません)。
💭 制度趣旨から見ても自然です。「3」への引き継ぎこそが、厚労省の言う「地域連携による心不全管理」の中身だからです。
実務:条文の筋では算定可。ただし問7②が「特別の関係」という語を使って明示的に答えたわけではないので、グループ内でこの運用を定型化する前に一度だけ審査機関に確認しておくと盤石です(なお[記事⑯]では、この論点を原典より保守的に「それ以外の医療機関であれば」と書いています)。
実務への落とし込み
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状況 |
管理料2 |
管理料3 |
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退院と同月・自院の外来 |
✕ |
― |
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退院と同月・特別の関係にある機関 |
✕ |
○※ |
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退院と同月・それ以外の医療機関 |
○ |
○ |
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退院の翌月以降・自院の外来 |
○ |
― |
※禁じる規定なし(前項参照)。定型化の前に一度だけ審査機関へ。
月末退院は、最初から連携先を想定しておく。これが、この章のいちばん実務的な結論です。
H2-3. 「誰に、いつから、いつまで取れますか」―― 時計は2つある
ここでよく混乱が起きます。「6か月」と「1年」という2つの期間が出てくるのですが、性質がまったく違います。
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6か月 |
1年 |
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出所 |
留意事項通知(3)(管理料2)/(4)(管理料3) |
告示 注2(管理料2)/注3(管理料3) |
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数え方 |
初回算定日からさかのぼる |
初回算定日から進む |
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単位 |
日 |
月 |
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役割 |
患者要件(初回に1回だけ判定) |
算定期間の上限 |
6か月=「入口の資格」
通知(3)はこう書いています。
「2」については、初回算定日の6月以内に「1」を算定していた入院中の患者以外の患者であって、心不全を主病とするものに対し…✅
この「初回算定日」は、管理料2自身の初回算定日です。もし「1」の算定日を指すなら「1の算定日の6月以内に1を算定していた」という同語反復になり、文が成立しません✅。管理料2を初めて算定する日から見て、過去6か月以内に管理料1の算定があるか――初回に1回だけ判定する条件です。毎月チェックするものではありません。
さらに同じ通知(3)は、実施内容も定めています。
…療養指導、食事指導又は運動指導(以下「療養指導等」という。)のうちいずれかを1つ以上を個別に合計30分以上実施した場合に算定する ✅
「個別に」「合計30分以上」。この2語が、のちほどH2-4に効いてきます。
1年=「出口の期限」
告示 注2はこうです。
…初回算定日の属する月から起算して1年を限度として、月1回に限り算定する ✅
★ここは表記に注意が必要です。留意事項通知(1)は「初回算定日より1年」と書いており、月起算だと明示していません。上位規範である告示に従い、「初回算定日の属する月から起算して1年」と読むのが正確です。
具体例で見ます。初回算定日が 2026年6月15日 の場合――
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読み方 |
最終算定月 |
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告示どおり(属する月から起算) |
2027年5月 |
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「初回算定日から1年」と読むと |
2027年6月まで含みうる |
1か月ずれます。最終月で過大算定になりかねないので、告示の読みで運用してください。
再入院したらどうなるか
疑義解釈その5・問8が答えています。
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設問 |
答 |
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① 管理料2又は3を算定していた患者が再入院した場合、管理料1を再度算定できるか |
算定可 ✅ |
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② 退院後、管理料2又は3の初回算定日はどう考えるか |
初回算定日が1年以内の場合、初回算定日は再入院後に変更とならない。1年を超えていた場合、再入院からの退院後に初めて算定した日を初回算定日とする ✅ |
つまり1年の窓の中で再入院しても、時計はリセットされません。窓が切れてからの再入院で、初めて新しい時計が立ちます。
「1」と「1又は2」―― 食い違いに見えて、矛盾していません
管理料3の対象者について、原典を並べるとこうなっています。
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文書 |
管理料3の対象 |
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告示 注3 |
「1を算定したもの」 |
|
留意事項通知(4) |
「初回算定日の6月以内に「1」又は「2」を算定していた」 |
一見、通知が告示を広げているように見えます。しかし答えは告示注2自身が持っています。
告示注2は、管理料2の対象を「1を算定したもの」と定めています✅。つまり管理料2を算定した患者は、例外なく管理料1の算定歴を持ちます。したがって通知(4)の「1又は2」が対象にする患者は、全員が告示注3の「1を算定したもの」に含まれる――通知は告示を広げていません✅(前提はすべて告示・通知の明文。推論はこの1段だけです)。
では「又は2」は何のためにあるのか。💭 この語が無いと、管理料2で6か月を超えて管理された患者は、1の算定が6月より前になった時点で3へ移れなくなります。2の窓は1年あるのに、受け渡しは前半6か月しかできない。「又は2」は、2→3のリレーを1年窓の最後まで機能させるための文言と読めます。
実務で受け手のかかりつけ医が確認するのは1つだけ。直近6か月以内に「1」又は「2」の算定があるか。これで告示・通知の両方を満たします。
H2-4. 「同じ月・同じ日に取れないのはどれですか」
併算定の本丸です。4つの層に分けます。混ぜると必ず事故ります。
層1:同じ月に取れないもの
留意事項通知(7)の前段です。
「B000」特定疾患療養管理料(心不全を主病とする場合に限る。)及び「B001-2-9」地域包括診療料(慢性心不全以外の慢性疾患等も有する患者について算定する場合を除く。)は同月内に算定できない。✅
★ここで告示と通知を分けて読む必要があります。
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文書 |
表現 |
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留意事項通知(7)前段 |
「同月内に算定できない」/心不全を主病とする場合に限る |
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告示 注4前段 |
「別に算定できない」/心不全を主病とする患者に限る |
「同月内」という限定は、通知にしか書かれていません。引用するときは、どちらの文書かを明示してください。
なお地域包括診療料については、慢性心不全以外の慢性疾患等も併せ持つ患者であれば同月併算定が可能です✅。多疾患合併のCKM患者では、ここが効いてきます。
層2:同じ日に取れないもの(★「2」限定)
通知(7)の後段を、原文のまま引きます。
また、「2」については、同一の患者につき、「B001」の「9」外来栄養食事指導料、「B001」の「11」集団栄養食事指導料、「B001」の「13」在宅療養指導料に、心大血管疾患リハビリテーション料は、同一日に算定できない。✅
※接続詞(「〜に、」「〜は、」)は原文ママです。読みにくいのですが、同じ4項目について告示 注4後段が「…及び区分番号H000に掲げる心大血管疾患リハビリテーション料を同一の日に算定することはできない」と明確に書いています✅。趣旨は告示側で確認できます(末尾の「原典の表記メモ」参照)。
主語が「2」だけである点に注意してください✅。管理料3について同じ制限があるかは、この条文の射程外です。一般則として「3も同じ」と書くと誤りになります。
層3:30分に「算入できる」もの/「できない」もの ★競合が書いていない論点
通知(3)と通知(7)は、似た顔をして中身が1項目ずれています。
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指導料 |
通知(3)=療養指導等に含まれる(30分に算入可・別途算定不可) |
通知(7)後段=同一日算定不可 |
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外来栄養食事指導料 |
○ |
○ |
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在宅療養指導料 |
○ |
○ |
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心大血管疾患リハビリテーション料 |
○ |
○ |
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集団栄養食事指導料 |
×(記載なし) |
○ |
✅ 通知(3)の3項目・通知(7)後段の4項目とも逐語で確認しています。
集団栄養食事指導料だけが、通知(3)にはなく、通知(7)にはある。つまり――同じ日には算定できず(通知(7))、かといって30分の中身にも使えない(通知(3))。最も不利な組み合わせです。
理由は「(3)に書かれていないから」ではありません。通知(3)が「個別に合計30分以上」と要求しているためです。集団指導は構造的に「個別に」を満たせない。だから最初から算入の対象になりようがない、というのが条文の筋です。
層4:生活習慣病管理料との関係 ―― ★(Ⅰ)も(Ⅱ)も包括されます
最後に、[記事⑮]では⚠️としていた論点を、本記事で✅に格上げします。理由もお示しします。
先に結論から。生活習慣病管理料は、(Ⅰ)を算定した月も(Ⅱ)を算定した月も、心不全再入院予防継続管理料は包括され、別に算定できません。「(Ⅱ)だけ」ではありません。
告示の注2は、それぞれこう定めています。
(Ⅱ)注2:…区分番号A001の注8に掲げる医学管理、第2章第1部第1節医学管理料等(…を除く。)の費用は、生活習慣病管理料(Ⅱ)に含まれるものとする ✅ (Ⅰ)注2:…区分番号A001の注8に掲げる医学管理、第2章第1部医学管理等(…を除く。)、第3部検査、第6部注射及び第13部病理診断の費用は、生活習慣病管理料(Ⅰ)に含まれるものとする ✅
包括する範囲の書き方が違うので、慎重に読む必要があります。
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包括する範囲 |
除外項目 |
B001-10は除外に含まれるか |
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(Ⅰ)注2 |
第2章第1部 医学管理等(=第1部まるごと) |
5項目 |
含まれない ✅ |
|
(Ⅱ)注2 |
第2章第1部 第1節 医学管理料等 |
37項目 |
含まれない ✅ |
そして B001-10 は、告示の「第2章 特掲診療料 → 第1部 → 第1節 医学管理料等」に属します✅。第1節は(Ⅰ)の範囲(第1部全体)にも(Ⅱ)の範囲(第1節)にも入りますから、どちらの包括範囲にもそのまま入り、どちらの除外リストにも載っていない。結論は(Ⅰ)(Ⅱ)で同じになります。
★(Ⅰ)のほうが包括範囲は広いという点に注意してください。「(Ⅱ)は37項目も除外しているのに(Ⅰ)は5項目だけ」という数字を見ると(Ⅰ)のほうが緩そうに見えますが、逆です。除外が少ないうえ、(Ⅰ)の注2は医学管理等に加えて第3部検査・第6部注射・第13部病理診断まで包括します(上の引用の後段)。(Ⅱ)の注2にこの並びはありません。
記事⑮ではこれを「条文の読みは強固だが、疑義解釈で確定したとは言えない」として⚠️にしていました。今回✅へ上げた根拠は、除外リストが閉じた列挙であり、そこにB001-10が無いことを全数確認した――推測ではなく網羅による確認だからです。
なお疑義解釈その1〜その11の全11号を横断検索しましたが、この論点を扱った設問はありませんでした。これは格上げの根拠ではなく、反証を探して見つからなかったという結果です(設問が無いこと自体は、⑮では⚠️の理由に使っていました。同じ事実を✅の根拠にはできません)。
★格上げの根拠は告示であり、通知でも疑義解釈でもありません。
H2-5. 「うちは管理料3を届け出られますか」―― 届出には、越えられない壁がある
病院の立場で、いちばん意外に思われるのがここです。答えは「いいえ」。
疑義解釈その2・問55が、はっきり書いています。
問55 …心不全再入院予防継続管理料1又は2の届出を行っている保険医療機関は、心不全再入院予防継続管理料3を届出できるか。 (答)届出できない。 ✅
管理料1・2を届け出た時点で、その医療機関はリレーの「送り手」に固定されます。自院の外来で受け皿まで兼ねることはできません。
制度は2つの「一意性」を求めている
問55と並べて読みたいのが、疑義解釈その5・問11です。
(答)当該患者の心不全管理を主に担う保険医療機関を評価するものであり、そのような保険医療機関が別に存在する場合は対象とならないため、算定することはできない。✅
同一患者について、複数の医療機関が同じ月に管理料2を算定することはできません(管理料3も同じ)。
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疑義解釈 |
何を一意にしているか |
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その2 問55 |
届け出た医療機関の役割――1・2を届け出たら「送り手」に固定され、受け手は兼ねられない |
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その5 問11 |
1人の患者には、1つの主担当 |
この2つが合わさると、リレーの形が決まります。役割が分かれ、主担当が移っていく。だから施設間ケアリレーなのです。
管理料2の施設基準は、すでに満たしているかもしれません
管理料1と2は施設基準を共有しています(第7の3の「1」)✅。管理料1の届出病院にとって、管理料2は新しく基準を満たす話ではありません。念のため「1」の全8項目を確認しておきます。
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# |
要件 |
ラベル |
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(1) |
一般病棟入院基本料・7対1・10対1(特定機能病院(一般病棟に限る)又は専門病院に限る)の届出病棟であること |
✅ |
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(2)ア |
心不全指導の経験を5年以上有する専任の医師 |
✅ |
|
(2)イ |
心不全指導の経験を3年以上有する専任の看護師又は保健師 |
✅ |
|
(2)ウ |
心不全指導の経験を3年以上有する専任の管理栄養士 |
✅ |
|
(3) |
(2)のいずれかが心不全の予防指導に係る適切な研修の修了者であることが望ましい(=努力義務) |
✅ |
|
(4) |
(2)の3職種は常勤。また、常勤の薬剤師及び理学療法士が配置されていること |
✅ |
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(5) |
心大血管疾患リハビリテーション料の届出を行っていること |
✅ |
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(6) |
院内職員対象の研修会を年1回以上実施 |
✅ |
|
(7) |
地域の管理料3算定機関等を対象とした研修会を年1回以上実施 |
✅ |
|
(8) |
管理料3を算定する保険医療機関の求めに応じて栄養食事指導を行うことが望ましい(=努力義務)→ 詳細はH2-6 |
✅ |
★2点、読み方の注意です。第一に、3職種の経験は「心不全指導の経験」で統一されています✅。診療経験・看護経験・栄養管理経験ではありません。指導に携わった年数で数えてください。届出可否を分ける読み方です。第二に、入院料の要件((1))は施設基準の告示(第71号)にもほぼ同文で置かれています✅。告示=枠、通知=具体という二層構造ですが、この要件だけは両方に明記されています。
施設基準の細部――特別入院基本料の病棟は対象外〔その2問56〕、経験年数は複数施設で合算可〔その2問57〕、「適切な研修」の中身〔その2問58〕、チームへの薬剤師・理学療法士の参加〔その8問6〕✅――は、送り手側の設計として[記事⑯]で詳述しています。
「受け皿がないから研修会は不要」は通りません
施設基準(7)の地域研修会について、厚労省はこう答えています。
地域に管理料3を算定する医療機関がない場合、当該研修会を開催する必要はあるか。 (答)研修を開催することは必要。当該管理料は地域連携による心不全管理を評価するものであり、当該保険医療機関が所在する二次医療圏の保険医療機関に参加や連携を呼び掛けること。 ✅(その8 問7)
読み替えるとこうなります。「受け皿がないなら、作りなさい」。
病院は自院で受け皿を兼ねられない(問55)。だから連携先を育てるしかない。その手段として研修会が施設基準に組み込まれている――制度の設計が一本の線でつながります。
💭 ここは負担ではなく投資と捉えるべき部分です。管理料3を届け出る診療所が地域に増えるほど、逆紹介の受け皿ができ、リレーが機能します。なお、複数の管理料1・2届出病院で研修会を合同開催することも可能です(その9 問4)✅。ただし「心不全治療の地域連携に係る体制について、あらかじめ協議し、連携している必要」があります。丸投げの共催はできません。
新規に届け出るとき
⚠️ これから届け出る場合、研修会をまだ開催していなくても要件を満たせます。
- 管理料1・2側:届出日から1年以内に(6)(7)の研修会を開催することが決まっていれば、開催予定日がわかる書類の添付で可✅(第7の3の3(2))
- 管理料3側:届出日から起算して1年以内に研修会が開催されることが決まっていれば、予定日がわかる書類の添付で可。ただし1年以内に必ず参加すること✅(その5 問10)
H2-6. 「誰が、いつ、何を渡すのか」―― 実は、人も逆流します
リレーというと「患者さんが病院から診療所へ移る」一方通行を想像しがちです。が、施設基準を読むと、逆向きの流れが埋め込まれています。
第7の3の「1」の(8)です。
心不全再入院予防継続管理料3を算定する保険医療機関の求めに応じて、栄養食事指導を行うことが望ましいこと。 ✅
管理料3を算定している診療所から求められたら、病院側が栄養食事指導を行う。患者が移ったあとも、病院の管理栄養士が関与し続ける設計です。
これは管理料3側の基準と対になっています。管理料3では、管理栄養士を自院に置くか、外部(栄養ケア・ステーション又は他の保険医療機関)との連携で確保するかを選べます✅。つまり――
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流れ |
何が動くか |
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病院 → 診療所 |
患者(逆紹介) |
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診療所 → 病院 |
依頼(栄養食事指導の求め) |
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病院 → 診療所 |
専門職の関与(管理栄養士) |
診療所は管理栄養士を雇わなくてよく、病院は退院後も関与を続けられる。双方向です。
⚠️ ただし(8)は「望ましい」=努力義務であり、必須要件ではありません。実際に依頼が来たときに動ける体制があるかは、自院でご確認ください。
記録は何に残すのか
通知(5)が定めています。
心不全再入院予防チームは、心不全のリスク要因に関する評価を行い、その結果に基づいて、指導計画を作成する。…評価結果、指導計画及び実施した指導内容を診療録、療養指導記録又は栄養指導記録に添付又は記載する。 ✅
記録先は診療録に限定されていません。療養指導記録・栄養指導記録への記載でも要件を満たします✅。
★レセプトには、何も書かなくてよい
ここが意外なところです。診療報酬明細書の記載要領のうち、摘要欄への記載事項を定めた別表Ⅰ(医科・2,521行)を全数確認したところ、B001-10の行が存在しません✅。
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区分 |
摘要欄の記載事項 |
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B001-9 療養・就労両立支援指導料 |
あり(項番116) |
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B001-10 心不全再入院予防継続管理料 |
行そのものが存在しない |
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B001-11 遺伝性疾患療養指導管理料 |
あり(項番117) |
※項番116→117は連番で、飛んでいるのは区分番号の側です。B001-10だけが別表Ⅰに現れません。
レセプトに記載するのは略号だけ。「心再予1」「心再予2」「心再予3」を「医学管理」欄に記載します✅。
これが何を意味するか。他院で何回算定されたかを、レセプトに書かせる仕組みが制度上ありません。回数は患者単位で通算される(次章)のに、その回数を伝える公式の経路がレセプトには用意されていない。💭 つまり制度は、回数の引き継ぎを医療機関どうしの情報共有に委ねています。診療情報提供書に書くか、電話で聞くか。運用でカバーするしかない領域です。
H2-7. 「取りこぼしはいくらになりますか」
金額の話です。最初にお断りします。「対象患者が年間何人いるか」を推定できる材料は原典にありません。そこで本記事は、軸を患者数ではなく「取りこぼし要因をいくつ踏むか」に置きます。自院の心不全入院患者数を掛けてお使いください。
まず上限
管理料2を1人の患者に1年間フルに算定した場合です(月1回×12か月、算定漏れなしの前提)。
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回数 |
区分 |
点数 |
小計 |
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1〜6回目 |
イ |
700点 |
4,200点 |
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7〜12回目 |
ロ |
225点 |
1,350点 |
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合計 |
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5,550点=55,500円 ✅ |
制約①:回数は、医療機関をまたいで通算される ★最重要
疑義解釈その5・問9です。
問9 心不全再入院予防継続管理料2及び3について、6回目までと7回目以降で点数が分かれているが、この回数は患者単位として考え、紹介等で別の保険医療機関を受診した場合は通算されるのか。 (答)そのとおり。 ✅
回数のカウンターは、医療機関ではなく患者についています✅。
そして問55により、管理料1・2を届け出た医療機関は、管理料3を届け出できません(H2-1の⚠️のとおり逆方向は未確定ですが、仮に同一機関が両方を持てたとしても、機関が変わらない以上カウントは患者単位でそのまま続くので、結論は変わりません)。ということは、「2及び3」が1人の患者の履歴に両方現れるのは、実質的に医療機関をまたいだ2→3の紹介です。その経路について問9が「通算される」と答えた以上、管理料2で消化した回数は、逆紹介先の管理料3に引き継がれます✅(前提=問9の明文と問55。推論は「『2及び3』が同一患者に現れるのは、実質的に機関をまたいだ2→3の場合である」という1段です)。
|
経過 |
病院(管理料2) |
かかりつけ医(管理料3) |
|
1〜4回目 |
イ 700点×4 |
― |
|
5回目で逆紹介 |
― |
5・6回目はイ 400点 |
|
7回目以降 |
― |
ロ 225点 |
受け手は「1回目から400点」ではありません。5回目から引き継ぐのです。
⚠️ ここは過大請求に直結します。しかも受け手には、消化回数を知る公式の経路がありません(前章のとおり、レセプトに回数を書く欄が制度上ないためです)。確認せずにイ400点で算定し、実際には7回目以降だった場合、過大請求になるのはイで算定したときだけです。したがって、
受け手のかかりつけ医は、紹介元に消化回数を確認する。不明なら保守的にロ(225点)で見積もる。
回数が分からないまま安全側に倒せば、査定を受けることはありません。とはいえ本来は、受け手が調べなくても分かるようにしておくのが筋です。診療情報提供書に「管理料2を○回算定済み」と書き添える運用を、送り手側から始めてください。受け手への実務的な贈り物になります。
試算の前提と、要因ごとの影響額
以下は「退院翌月に管理料2を開始し、7回目の直前(6回算定後)に逆紹介する」という時間軸を仮定します💭。この引き継ぎ点は恣意的ではありません。退院後6か月は再入院リスクが最も高い集中介入期であり([記事⑮]参照)、後述のとおり点数設計上もリレー全体が最大になるタイミングです。
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要因 |
何が起きるか |
影響 |
今月の回避策 |
|
A. 管理料3を届け出ていない先へ逆紹介した |
7回目以降を担うはずの受け手が算定できず、リレー後半(ロ225点×6か月)が消える |
−1,350点 |
病院が第12月まで管理料2を続ける(下記の条件2つを満たす場合)。告示注2は1年・月1回を認めるだけで、逆紹介を義務づけていません✅ |
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B. 30分要件の不備 |
「個別に合計30分以上」を満たせなかった月は算定不可 |
−700点/月(イ期の場合) |
個別指導の記録様式を先に決める。集団指導の日と算定日を分ける |
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C. 退院同月に自院で算定→返戻 |
当該請求は0点 |
−0点(事務コストと査定履歴のみ) |
翌月開始でよい。1年の窓は初回算定日の属する月から立つので、12か月分の枠は失われません✅ |
★要因Aは「地域に受け皿がないこと」の損失ではありません。「受け皿がないのに患者を移したこと」の損失です。原典を読むかぎり、受け皿が育つまで病院が管理料2を続けるという選択肢は制度上ふさがれていません。「移す先がないから詰む」ではないということは、知っておいてください。
ただし、この回避策には原典から出てくる条件が2つあります。
条件1:30分要件は毎月かかります。通知(3)の「療養指導等のいずれかを個別に合計30分以上」は算定のたびの要件です✅。第12月まで続けるとは、あと6か月、毎月30分の個別指導を実施して記録するという意味です。7回目以降はロ225点(2,250円)ですから、原価としてどう見るかは自院でご判断ください。
条件2:病院が実質的に「主に担う」立場であり続けること。疑義解釈その5・問11は、この管理料を「当該患者の心不全管理を主に担う保険医療機関を評価するもの」としています✅(H2-5参照)。患者の管理が実質的にかかりつけ医へ移っているのに病院が算定を続ける形は、この原理と衝突します。通院の実態が病院にあることが前提です。
💭 位置づけとしては、制度上ふさがれていない正規の選択肢だが、到達点ではないと考えます。告示注2が1年を認めている以上これは例外ではありませんが、厚労省自身が「地域連携による心不全管理を評価するもの」と述べている以上、恒久策でもない。今年をしのぎながら、H2-5の研修会で来年の受け皿を作る――そういう時間軸で捉えるのが素直だと思います。
3段階シミュレーション(患者1人あたり・軸=踏む要因の数)
💭 以下の3段階は、上記の前提(退院翌月に開始し6回算定後に逆紹介)を置いた試算です。単価(700点・400点・225点)は✅ですが、組み合わせ方は仮定です。
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段階 |
踏む要因 |
計算 |
リレー全体 |
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積極的 |
なし |
イ700×6 + ロ225×6 |
5,550点=55,500円 |
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標準 |
A |
イ700×6 + 0 |
4,200点=42,000円 |
|
最小限 |
A+B×2か月+C |
イ700×4 + 0 |
2,800点=28,000円 |
★いちばん大きな取りこぼしは「受け皿が無いまま患者を移してしまうこと」です。金額より重いのは、患者さんが継続管理から外れることですが。もっとも、これは連携先が育てば起きません。H2-5の地域研修会が効いてくるのはここです。地域に受け皿を作る活動が、そのまま取りこぼしの解消につながります。
💭 参考までに、引き継ぎを早める場合の式も置いておきます。第k月(k≤7)に逆紹介すると、リレー全体は300k+3,450点。k=7で最大5,550点、即時引き継ぎ(k=1)なら3,750点です。イの単価が管理料2は700点・管理料3は400点であるため、病院がイ期に1か月抱えるごとにリレー全体が300点増える設計になっています。これは取りこぼしではなく制度の設計であり、また偶然か設計か、集中介入期を病院が担うという臨床の要請と同じ方向を向いています。引き継ぎ時期は臨床判断が優先です。
★7回目以降、受け手には生活習慣病管理料(Ⅱ)(333点)へのスイッチという選択肢もあります(その月はB001-10が包括されます・H2-4層4)。損益分岐は[記事⑮]で詳述しています。
⚠️ 未確定の論点:新しい1年窓での回数
1年の窓が切れたあとに再入院し、新たな窓が立ったとき――回数は1回目(イ)に戻るのか、通算されてロのままか。原典に明示がありません。⚠️ 保守的には残り回数に応じた点数(多くはロ)と見るか、地域の審査機関に事前確認するのが安全です。この論点は制約①(窓の内側の話)とは別物なので、混同しないでください。
H2-8. やってはいけない3つと、実務ToDo
❌ アンチパターン① 月末退院 → 同じ月に自院の外来で管理料2
いちばん起きやすい失敗です。通知(6)により、入院していた医療機関と同一(および特別の関係にある)医療機関では、管理料1を算定した同じ月に管理料2を算定できません✅。
正しい対応:翌月から算定を開始する。または、同月中に別の医療機関(特別の関係にない)へ紹介すれば、そちらで算定できます✅(その5問7①)。月末退院は、退院前から連携先を想定しておく。
❌ アンチパターン② 集団栄養食事指導で「30分」を埋める
通知(3)は「療養指導等のうちいずれかを1つ以上を個別に合計30分以上」と定めています✅。集団での指導は「個別に」を構造的に満たせません。しかも集団栄養食事指導料は、通知(7)後段により同じ日に算定することもできません✅。30分にも使えず、同日算定もできない――最も不利な組み合わせです。
正しい対応:個別指導で30分を確保する。集団指導の実施日と、管理料2の算定日を分ける。
❌ アンチパターン③ 届出様式の「全て○で囲むこと」を素直に読む
様式8の5の届出区分は「該当する届出事項を全て○で囲むこと」と書かれており、「1:管理料1及び2」「2:管理料3」が並んでいます。文面だけを読むと、両方に○を付けられるように見えます。が、問55により、管理料1又は2を届け出た医療機関は管理料3を届け出できません✅。「自院で送り手も受け手も兼ねる」という設計は成立しません。
正しい対応:自院の役割を先に決める。受け皿は地域に作る(研修会がその手段です)。
実務ToDoリスト
届出前
□ 管理料1を届出済みか確認する(管理料2は施設基準が共通) □ チーム3職種の経験年数を「心不全指導の経験」で数え直す(診療経験・看護経験ではない) □ 対象病棟が一般病棟入院基本料・7対1・10対1等の届出病棟か確認する(第7の3の1(1)・告示第71号) □ 常勤の薬剤師・理学療法士が配置されているか確認する(1(4)後段) □ 心大血管疾患リハビリテーション料を届出済みか確認する(1(5)) □ 院内研修会(年1回以上)と地域研修会(年1回以上)の開催計画を立てる □ 新規届出なら、1年以内の開催予定がわかる書類を添付する
運用開始前
□ 退院月に自院外来で算定しない運用ルールを、医事課と外来で共有する □ 個別指導30分の記録様式を用意する(診療録/療養指導記録/栄養指導記録のいずれでも可) □ 指導計画の作成手順を決める(通知(5)) □ 生活習慣病管理料(Ⅰ)又は(Ⅱ)を算定している患者を洗い出す(どちらも同月は包括されます) □ 特定疾患療養管理料・地域包括診療料との同月併算定を確認する
連携
□ 逆紹介先が管理料3を届け出ているか確認する □ 届出先が見つからない場合に、病院が第12月まで管理料2を継続するか、時期を待つかの運用を決めておく(継続するなら毎月30分の個別指導が要ります・H2-7条件1) □ 診療情報提供書に「管理料2を○回算定済み」を記載する運用を始める □ 地域研修会に、管理料3を届け出ていない診療所も招く □ 管理料3算定機関から栄養食事指導を求められたときの窓口を決める(第7の3の1(8))
まとめ ―― 制約は、連携への矢印だった
長くなりました。お茶のおかわりはいかがでしょうか。今日わかったことを3つに絞ります。
1つめ。制約は「2」に集中しています。通知(6)の同月制限も、通知(7)後段の同一日制限も、名指しされているのは「2」だけでした。
2つめ。その制約は、禁止ではなく誘導でした。「退院した月は取れない」が働くのは、自院(と特別の関係にある機関)で、その月に限ってです。翌月なら自院でよく、同じ月でも別の医療機関なら算定できます。そして管理料1・2を届け出た医療機関が管理料3を兼ねられないこと(問55)は、それとは別の、より深い層の制約です。厚労省自身が「当該管理料は地域連携による心不全管理を評価するもの」と書いています。
3つめ。回数は患者についてきます。医療機関をまたいでも通算される。受け手が「1回目だから」と思い込むと過大請求になります。送り手が回数を申し送ることが、地域全体の算定精度を上げます。
これでシリーズは、心不全リレーの3区分をすべて扱いました。[記事⑯]が送り出す側、[記事⑮]が受け取る側、本記事がそのあいだ。地図は完成です。
💭 最後に私見を。この管理料の設計は、2028年度改定への布石にも見えます。「1つの医療機関で完結させない」という思想は、地域包括ケアの評価が点数化されていく流れと一致しているからです。次の改定では、連携そのものの実績(逆紹介の実績、研修会の参加機関数など)が評価対象に入ってくる可能性があると考えています。
原典の表記メモ ―― 実務で迷わないために
原典を逐語で読む過程で見つけた、表記の食い違いを4つ記録しておきます。いずれも算定の実質には影響しませんが、条文を検索・引用するときに迷う箇所です。
- 告示 注4の「区分番号B001の13に掲げる在宅療養指導管理料」――同じ告示内の定義は「13 在宅療養指導料」で、留意事項通知(7)も「在宅療養指導料」です。名称と区分番号が食い違っていますが、官報訂正5本のいずれでも訂正されていません。区分番号で読むのが通例です
- 「B001の10」と「B001-10」は別物――前者は入院栄養食事指導料、後者は本管理料。同じ通知の中に同居しています。ハイフンの有無まで見てください
- 通知(7)後段の接続詞――「…在宅療養指導料に、心大血管疾患リハビリテーション料は、同一日に算定できない」。原文ママです。★同じ内容を告示 注4後段は「…外来栄養食事指導料、…集団栄養食事指導料、…在宅療養指導管理料及び…心大血管疾患リハビリテーション料を同一の日に算定することはできない」と、接続を明確に書いています✅(名称の食い違いは上記1のとおりですが、区分番号は双方ともB001の13を指します)。読みにくいと感じたら告示を見てください
- 通知の見出しは「(1日につき)」――告示側にこの語はなく、実際の算定は「1」が入院中1回、「2」「3」が月1回です。見出しの字面で誤読しないでください
本記事の一次資料
すべて厚生労働省の原典で逐語確認しています。
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系統 |
文書 |
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告示 |
診療報酬の算定方法(医科点数表)B001-10、B001-3、B001-3-3、B001-2-9/特掲診療料の施設基準等(令和8年厚労省告示第71号) |
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留意事項通知 |
保医発0305第6号 別添1 B001-10 (1)〜(7)、別添1 第1章 第2部 通則7(3)「特別の関係」 |
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施設基準通知 |
保医発0305第8号 第7の3、様式8の5 |
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疑義解釈 |
その2(問54〜58)/その5(問7〜11)/その8(問6・7)/その9(問4・5) |
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官報訂正 |
保険局医療課事務連絡 5本(0402・0501・0529・0619・0730) |
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記載要領 |
保医発0327第2号 別表Ⅰ・別表Ⅴ |
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