はじめに ―― リレーの“反対側”に立ってみる
お茶でも淹れて、少しだけお付き合いください。
前回の記事⑮(心不全管理料リレー・正解編)では、患者さんを受け取る側――地域のかかりつけ医(心不全再入院予防継続管理料3)の景色を、原典まで降りて確かめました。経験年数の本当のライン、管理栄養士は連携でもいいこと、「主病」をどう持ち替えるか。受け皿の設計図です。
今回は、その反対側です。
患者さんを送り出す側――急性期病院が算定する「心不全再入院予防継続管理料1(1,000点)」。1入院あたり10,000円。決して小さくない点数です。けれど現場で話を聞くと、
- 「うちの病院、そもそも算定できるの?」
- 「チームは一応あるけど、施設基準のどこを満たせばいい?」
- 「DPC病院だから、どうせ包括に飲まれて取れないんじゃ?」
という声が、必ず返ってきます。
結論から言います。1,000点は“増収”ではなく“適正評価”です。 多職種が手間をかけて再入院を防ぐ営みに、ようやく値段がついた。そしてその値段は――後で原典で証明しますが――DPCの包括に飲まれません。
ただし、取るには相応の“設計”が要ります。本記事では、
- 本当の施設基準(中小病院には正直、高い壁がある)
- 取り損ねやすい“セット算定”の落とし穴
- こっそり課された「教える義務」(ここが、ただの算定要件を超えて病院を“地域のハブ”に変える鍵)
- DPCで本当に出来高なのか(令和8年原典で決着)
- 収益シミュレーションと、やってはいけない3つ
を、一次資料ベースで設計図にしていきます。
心不全診療の全体像(再入院率約60%、なぜ多職種管理なのか)は記事⑥(心不全管理料1,000点の衝撃)、CKM(心臓・腎臓・代謝)の文脈でのリレー運用は記事⑩(CKMリレー型運用)で扱っています。本記事は「急性期病院が1を取る」一点に絞ります。
1. 管理料1という“送り出し”――まず点数と棲み分けを固める
点数表のおさらい(✅)
心不全再入院予防継続管理料(B001-10)は、算定する場所によって3段階に分かれます。
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区分 |
主な算定主体 |
点数 |
算定頻度 |
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管理料1 |
急性期病院(送り出し) |
1,000点 |
当該入院中1回限り |
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管理料2 |
急性期病院(外来移行後 等) |
イ 700点/ロ 225点 |
初回算定日から1年・月1回 |
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管理料3 |
地域・かかりつけ医(受け皿) |
イ 400点/ロ 225点 |
初回算定日から1年・月1回 |
急性期病院が入院中に算定するのが管理料1。「入院中1回限り」なので、1入院=1,000点(=10,000円相当) です。✅
(なお管理料2・3の「イ/ロ」は算定回数による区分で、イ=初回から6回目まで、ロ=7回目以降。回数は患者単位で、紹介で別の医療機関にかかっても通算されます〔疑義解釈その5 問9〕✅)
告示の注1は、対象患者をこう定めます。施設基準を満たす病棟に入院している急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)の患者に対し、再入院予防を目的に心不全の計画的な評価・治療等を行った場合に、当該入院中1回算定する。✅
ポイントは「慢性心不全の急性増悪を含む」こと。いわゆる“こじらせて運ばれてきた”慢性心不全の患者さんも、しっかり対象です。
“1を取る病院”は、3を取れない(✅)
ここで最初の重要ルール。管理料1・2を届け出た保険医療機関は、管理料3を届け出ることができません(疑義解釈その2 問55)。✅
これは制度設計の“棲み分け”です。急性期病院は「送り出す1」、地域は「受け取る3」。同じ病院が両方を兼ねることは想定されていません。だからこそ、急性期病院が考えるべきは「1(と2)の施設基準をどう満たすか」の一点に集約されます。
そしてもうひとつ。特別入院基本料を算定する病棟は、管理料1の対象になりません(疑義解釈その2 問56)。✅ 自院の病棟がどの入院基本料かは、出発点として必ず確認してください。
2. ★本当の“チャンバー”――施設基準を原典で読む
ここが本記事の前半の山場です。施設基準を、サイトのまとめではなく通知の原典(特掲診療料の施設基準通知 第7の3)で読みます。
管理料1・2の施設基準(第7の3「1」)の全文構造(✅)
- 病棟要件:院内に、一般病棟入院基本料、7対1入院基本料又は10対1入院基本料(特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る。)又は専門病院入院基本料に限る。)に係る届出病棟を有していること。
- 多職種チーム:心不全の患者の診療を担当する、次のチームが設置されていること。
- ア 心不全患者の診療経験を5年以上有する専任の医師
- イ 心不全患者の看護経験を3年以上有する専任の看護師又は保健師
- ウ 心不全患者の栄養管理経験を3年以上有する専任の管理栄養士
- (2)のア~ウのうちいずれか1人以上は、心不全の予防指導に係る適切な研修を修了していることが望ましい。
- (2)の医師・看護師(保健師)・管理栄養士はいずれも常勤。加えて、常勤の薬剤師及び常勤の理学療法士が配置されていること。
- 心大血管疾患リハビリテーション料の届出を行っていること。
- 院内研修(心不全診療に関する最新の治療及び多職種連携の意義)を年1回以上実施していること。
- 当該地域において、管理料3を算定する医療機関等を対象に、(6)と同様の内容の研修会を年1回以上実施すること。
- 管理料3を算定する医療機関の求めに応じ、栄養食事指導を行うことが望ましい。
届出は様式8の5。新規届出の場合は、1年以内に(6)(7)の研修・研修会を開催する予定であれば、その予定(開催予定日を記した書類を添付)をもって満たすものとみなされます。✅
管理料3(受け皿)と並べると“重さ”が一目でわかる
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項目 |
管理料1・2(急性期・送り出し) |
管理料3(地域・受け皿) |
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医師 |
経験5年以上・専任・常勤 |
経験5年以上 |
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看護師/保健師 |
経験3年以上・専任・常勤 |
経験3年以上(1名以上常勤) |
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管理栄養士 |
経験3年以上・専任・常勤(自院に必置) |
連携でも可(自院必置でない) |
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薬剤師・理学療法士 |
常勤で配置(必須) |
望ましい(必須でない) |
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病棟要件 |
一般/7対1/10対1の届出病棟が必要 |
不要 |
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心大血管リハ届出 |
必要 |
不要 |
|
院内研修 |
年1回以上(必須) |
(参加) |
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地域研修会 |
実施(主催/年1回以上) |
参加 |
管理料3(かかりつけ医側)の詳細は記事⑮で原典確認済みです。本表の管理料1・2列が、本記事で新たに原典確認した部分です。
正直に言います。 急性期病院といえども、「常勤の医師・看護師・管理栄養士の3職種+常勤薬剤師+常勤理学療法士+心大血管リハの届出」 をすべて揃えるのは、特に中小規模の急性期病院にとって決して低くない壁です。逆に言えば、ここを設計しきれた病院だけが1,000点の“チャンバー(薬室)”に弾を込められる、ということです。
壁を越えるための、3つの“原典の助け舟”(✅)
幸い、疑義解釈がいくつかの現実的な逃げ道を用意しています。
- 経験年数は複数施設で合算してよい(疑義解釈その2 問57)。✅ 前の病院での心不全診療経験も通算できます。中途採用のベテランは、立派な戦力です。
- チームに薬剤師・理学療法士が“所属”してもよい(疑義解釈その8 問6)。✅ (4)で常勤配置が必須ですが、彼らをチームの正式メンバーに位置づけて差し支えありません。なお所属する場合、(予防指導に係る)研修修了が望ましいとされています。
- 「望ましい」研修を満たす研修は3パターン(疑義解釈その2 問58)。✅
- 日本看護協会の認定看護師教育課程「慢性心不全看護」又は「心不全看護」
- 日本循環器学会「心不全療養指導士」
- 7時間以上の研修で、次をすべて満たすもの:慢性心不全の一定の知識・経験のある職種を対象/病態・薬物・非薬物治療・療養・食事・運動指導・地域連携を含む/慢性心不全管理の実習を含む/医療関係団体が主催し修了証が発行される
「望ましい」研修を誰に修了させるか――この3パターンから、自院のチーム構成に合う道を選べます。
3. 算定要件の“セット算定”――イとウを取り損ねると1,000点も消える
施設基準(=届け出る資格)をクリアしても、個々の患者で算定要件を満たさなければ1,000点は取れません。ここが2つ目の落とし穴です。
管理料1の算定要件(留意事項 B001-10)(✅)
管理料1は、心不全を主病として病棟に入院した患者について、次のア・イ・ウをすべて満たした場合に算定します。✅
- ア:多職種チームが、ガイドラインに基づき心機能評価・原疾患の精査・リスク評価を行い、薬物治療および療養・食事・運動指導を行うこと。(ガイドライン=日本循環器学会・日本心不全学会「心不全診療ガイドライン」〔その2 問54〕✅)
- イ:当該入院中に、早期離床・リハビリテーション加算(A300救命救急入院料/A301特定集中治療室管理料/A301-2ハイケアユニット/A301-3脳卒中ケアユニット/A301-4小児特定集中治療室の各加算)又は H000 心大血管疾患リハビリテーション料を算定していること。
- ウ:当該入院中に、B001「10」入院栄養食事指導料 又は B008 薬剤管理指導料のいずれか1つを算定していること。
⚠️ 表記の罠:要件ウの「B001の10」は入院栄養食事指導料です。本管理料「B001-10(心不全再入院予防継続管理料)」とは別物。算定漏れ・レセプト記載で混同しないでください。
つまり、1,000点は“単独では立たない”
管理料1は、「リハ(イ)」と「栄養指導 or 薬剤管理指導(ウ)」がセットで初めて算定できる設計です。心不全チーム医療の“あるべき姿”――早期離床と、栄養・薬剤の最適化――を要件に織り込んでいるわけです。
実務上の含意はシンプルです。イ・ウを“算定し忘れない”仕組み(クリニカルパスへの組み込み)が、そのまま1,000点の取りこぼし防止になる。 早期離床リハも栄養指導も薬剤管理指導も、心不全急性期では本来やっているはず。それを確実に算定として残すことが鍵です。
早期リハビリテーション加算もセットで乗る(✅)
要件イで心大血管疾患リハビリテーション料を算定する場合、これに付く早期リハビリテーション加算も忘れずに。2026年改定で起算日が「入院日」となり、点数は1〜3日目が60点/4〜14日目が25点(いずれも1単位につき) です(疑義解釈その2 問70)。✅ これも出来高で別途算定でき、1,000点に上乗せされます。
“検査だけ”の入院では取れない(✅)
もうひとつ重要な縛り。管理料1は、検査を主目的とした入院では算定できません(疑義解釈その9 問5)。✅ あくまで「再入院予防を目的とした、計画的な評価・治療」の管理料です。心臓カテーテル検査目的の短期入院などに安易に付けない、という線引きです。
4. ★こっそり課された「教える義務」――研修会が病院を“地域のハブ”に変える
ここが、本記事でいちばんお伝えしたいところです。
施設基準(6)(7)を、もう一度見てください。
- (6)院内研修を年1回以上
- (7)地域の管理料3医療機関等を対象に、同じ内容の研修会を年1回以上“実施”
――この(7)が、実はとても大きい。
算定要件に“外向きの研修”が埋め込まれている
普通、施設基準は「自院の体制」を問います。しかし管理料1は、「自院の外(地域)に向けて研修会を開く」ことを、算定の条件にしているのです。これは診療報酬としてかなり踏み込んだ設計です。
しかもこの研修会、リレーの両側からきれいに噛み合っています。管理料3(受け皿)の施設基準は、「管理料1・2の医療機関が”主催”する研修会に”参加”すること」(疑義解釈その5 問10)。✅ つまり――
急性期病院(管理料1・2)が“主催・実施“し、地域のかかりつけ医(管理料3)が“参加“する。
教える側と教わる側が、施設基準のレベルで一対になっているのです。急性期病院は、点数を取るために、地域に知識を“配る”立場に置かれます。
そして疑義解釈が、この義務を“逃がしません”。
- 地域に管理料3の医療機関がなくても、研修会の開催は必要(疑義解釈その8 問7)。✅ 「うちの地域には受け皿のクリニックがまだ無いから」は、開催しない理由にはなりません。二次医療圏に参加・連携を呼びかける必要があります。
- 管理料1・2を届け出た医療機関が地域に複数あれば、研修会を合同開催してよい(疑義解釈その9 問4、事前協議・連携が条件)。✅ 近隣の急性期病院と組んで、地域全体で一つの研修会を回す――現実的な運用が認められています。
Donabedianの「構造」が、病院を地域ハブにする
医療の質を「構造(Structure)→過程(Process)→結果(Outcome)」で捉えるDonabedianの枠組みで見ると、この設計の意図がよく見えます。
- 構造(Structure):多職種チーム+心大血管リハ+研修“発信”体制(主催・実施)
- 過程(Process):GDMT(推奨薬物療法)の導入、早期離床、栄養・服薬指導
- 結果(Outcome):再入院の抑制、地域全体の心不全診療レベルの底上げ
管理料1は、単に「自院でいい医療をする(過程・結果)」だけでなく、「地域に知識を配る構造」までを病院に持たせる。これを満たした急性期病院は、自動的に地域心不全診療の“ハブ”になります。
(8)の“供給源”という、もう一つの顔
そして施設基準(8)――「管理料3医療機関の求めに応じ、栄養食事指導を行うことが望ましい」。これは地味ですが、リレーの観点では重要です。
地域のかかりつけ医(管理料3)は、自院に管理栄養士を置かず連携で栄養指導を確保してよい仕組みでした(記事⑮)。その連携先の供給源に、急性期病院がなれる。つまり、かかりつけ医が算定する「外来栄養食事指導料2(連携型)」の受け手として、急性期病院の管理栄養士が機能しうるのです。
「研修会の主催・実施」と「栄養を供給する役割」。この2つで、急性期病院は点数を取りながら、地域の心不全ネットワークの中心に座ることになります。ここが、1,000点という数字の“裏側にある本当の価値”です。
5. リレーは循環する――再入院と算定の“継続性”
心不全は、残念ながら再入院を繰り返す病です。1年以内再入院率は約60%とも言われます(記事⑥)。では、リレーの途中で患者さんが再び急性期に戻ってきたとき、算定はどうなるのか。原典はちゃんと答えています。
- 管理料2または3を算定している最中に再入院した場合、管理料1を“再算定”できる(疑義解釈その5 問8①)。✅ 一度1を取ったら終わり、ではありません。再増悪して入院すれば、また1,000点の出番です。
- ただし、初回算定日から1年以内なら、その1年の窓のまま(初回算定日は変わらない)。1年を超えていた場合は、再入院からの退院後に初めて算定した日が新たな初回算定日になります(疑義解釈その5 問8②)。✅
- 関連して、早期リハビリテーション加算の起算日は、同一医療機関に入院を継続している間はリハの起算日が切り替わっても当初の入院日のまま。一方、いったん退院して“別入院”として再入院した場合は、新たな入院日で起算します(疑義解釈その6 問16)。✅ 要件イの算定に直結するので、再入院時は起算日を取り違えないように。
なお、退院後の外来移行についての細かい注意点が一つ。管理料1を算定した同一月に管理料2を算定できないのは、入院していた同一の(又は特別の関係にある)医療機関の外来に限った話で、それ以外の医療機関であれば同一月に「2」や「3」を算定できます(疑義解釈その5 問7)。✅
リレーは一方通行ではなく、「急性期↔地域」を循環する。その循環を、心不全手帳などで情報を引き継ぎながら回す――これが2026年改定が描く心不全診療の姿です。
6. DPCで本当に“出来高”か――1,000点は包括に飲まれない(✅令和8原典で決着)
さあ、急性期病院がいちばん気にする問いです。「DPC病院だと、1,000点も包括に飲まれて取れないのでは?」
答えは明確にNO。管理料1は出来高(DPC包括の外)で、別途算定できます。 これは推測ではなく、令和8年の厚労省原典で確定しています。
根拠:令和8年「DPC/PDPSの包括範囲」表(✅)
厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要 5.入院(DPC/PDPS)」(保険局医療課)のp.11「DPC/PDPSの包括範囲」には、医科点数表の項目ごとに包括/出来高が整理されています。その「B 管理等(=医学管理等)」の行が決定的です。✅
「B 管理等」のうち包括評価となるのは手術前医学管理料・手術後医学管理料のみ。それ以外はすべて出来高評価。
心不全再入院予防継続管理料(B001-10)は「B 管理等」に属し、手術前・手術後医学管理料ではありません。したがって――出来高評価=DPC包括の外で、まるごと別途算定できる。✅
しかも、要件のイ・ウも同じく出来高側です。
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管理料1パッケージの構成 |
医科点数表の区分 |
DPCでの扱い |
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心不全再入院予防継続管理料1(本体) |
B 管理等 |
出来高 ✅ |
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イ:心大血管疾患リハビリテーション料(+早期リハ加算) |
H リハビリテーション |
出来高 ✅ |
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ウ:入院栄養食事指導料/薬剤管理指導料 |
B 管理等 |
出来高 ✅ |
つまり、1,000点とその“セット”は、DPC病院でもパッケージごと出来高で乗るのです。
包括=ホスピタルフィー的、出来高=ドクターフィー的(✅)
なぜそうなるか。DPCの包括範囲は、考え方として整理されています。✅
- 包括評価部分(ホスピタルフィー的):入院基本料・検査・画像診断・投薬・注射・1,000点未満の処置 等
- 出来高評価部分(ドクターフィー的等):医学管理・手術・麻酔・放射線治療・1,000点以上の処置 等
「人手と判断を要する専門的な営み(ドクターフィー的)」は出来高で正当に評価する――という設計思想です。多職種が手間をかける心不全管理が出来高側に置かれているのは、まさにこの思想の表れと言えます。
だから「増収」ではなく「適正評価」 なのです。DPC病院がこれまで“持ち出し”でやっていた多職種管理に、出来高で値段がつく。
⚠️ 最後の一手は、自院で
ここまで原典で確定していますが、実際の算定可否・レセプト運用は、自院のDPC事務担当および審査支払機関で最終確認してください。⚠️ 高額薬剤判定や個別の運用ルールは医療機関ごとの事情も絡みます。本記事は「制度上、出来高で算定できる」ことの根拠を示すものです。
7. 収益シミュレーション(3段階)💭
ここからは仮定に基づく試算です。月間の心不全入院数は病院ごとに大きく異なるため、すべて💭ラベルで示します。自院の実数に置き換えてご覧ください。
前提(✅):管理料1=1,000点=10,000円/件(入院中1回)。DPC外=出来高なので、これは“実収入”として上乗せされます。
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シナリオ💭 |
管理料1を算定する月間HF入院数 |
管理料1の年間額(本体のみ) |
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控えめ |
5件/月 |
5 × 10,000円 × 12 = 約60万円/年 |
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標準 |
10件/月 |
10 × 10,000円 × 12 = 約120万円/年 |
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積極的 |
20件/月 |
20 × 10,000円 × 12 = 約240万円/年 |
これは管理料1“本体だけ”の試算です。実際には1件あたり、本体1,000点に加えて――
- 要件ウの入院栄養食事指導料・薬剤管理指導料(出来高)💭
- 要件イの心大血管リハ(+早期リハ加算:1〜3日目60点/4〜14日目25点)(出来高)💭
が積み上がります。たとえば標準シナリオ(月10件)で、1件あたりにウ・イを取りこぼさず算定すれば、実収益は本体120万円+αへとさらに上乗せされます。いずれもDPCの外なので、まるごと実収入です。
そして金額以上に大きいのが、再入院そのものの抑制です。退院後の集中的な多職種管理が再入院・死亡の複合エンドポイントを大きく下げたという報告(STRONG-HF, Lancet 2022)もあります💭。再入院が減れば、病床はより重症・新規の患者に回せる――点数表に直接は現れない“筋の良い経営効果”です。💭
⚠️ 上記はあくまで試算です。確定金額として用いず、自院の心不全入院実数・算定状況で再計算してください。
8. やってはいけない、3つのアンチパターン
設計図には「落とし穴マップ」も要ります。現場で起きがちな失敗を3つ。
アンチパターン①:チームが未整備のまま、届出を急ぐ
1,000点に惹かれて届出を先行させ、常勤3職種・常勤薬剤師・常勤PT・心大血管リハ届出のいずれかが欠けたまま――は典型的な返戻リスクです。施設基準(第7の3「1」)は“ぜんぶ揃って”初めて成立します。棚卸し→不足の補充→届出の順を守ってください(→第9章)。
アンチパターン②:検査主目的の入院で算定/イ・ウのセット漏れ
- 検査を主目的とした入院に管理料1を付ける(疑義解釈その9 問5に抵触)。✅ 取ってはいけません。
- イ(リハ)またはウ(栄養指導/薬剤管理指導)の算定が抜けているのに本体だけ算定する――これも要件不充足です。セットで初めて1,000点(→第3章)。
アンチパターン③:研修会(7)を“軽く見る”
「忙しいから研修会は後回し」――これは施設基準そのものの不充足であり、最悪、算定の根拠を失います。加えて、(7)を回せないことは“地域ハブ化”という最大の戦略的価値を捨てることでもあります(→第4章)。研修会は「義務」であると同時に「武器」です。
9. 明日からの実務ToDo
設計図を“着工”に落とすチェックリストです。
☐ チーム経験年数の棚卸し(医師5年/看護師・保健師3年/管理栄養士3年)。複数施設の経験は合算可(疑義解釈その2 問57)✅。中途採用者の前職経験も忘れずに。
☐ 常勤薬剤師・常勤理学療法士の配置と、心大血管疾患リハビリテーション料の届出の有無を確認。未届なら最優先で。
☐ 要件イ・ウをクリニカルパスに組み込む(早期離床リハ加算 or 心大血管リハ+早期リハ加算/入院栄養食事指導料 or 薬剤管理指導料)。“算定し忘れない仕組み”が取りこぼし防止。
☐ 「望ましい」研修(予防指導に係る研修)を誰に修了させるか決める(3パターンから選択:認定看護師教育課程/心不全療養指導士/7時間以上の研修)✅。
☐ 院内研修(6)と地域研修会(7)の年間計画を立てる。新規届出は1年以内の開催予定で可(様式8の5に開催予定日の書類を添付)✅。近隣の管理料1・2病院と合同開催も検討(疑義解釈その9 問4)✅。
☐ 逆紹介先クリニックのリスト化。リレーの“受け皿”(管理料3を算定するかかりつけ医)を地図に落とし、研修会の案内先・栄養連携先にする(記事⑮)。
まとめ ―― 1,000点は「適正評価」、そして“地域の中心”への入口
最後に、設計図の要点を畳んでおきます。
- 管理料1=1,000点/入院中1回。1を取る病院は3を取れない(棲み分け)。✅
- 施設基準は“フル装備”:常勤3職種+常勤薬剤師+常勤PT+心大血管リハ届出+院内研修+地域研修会の実施(主催)。中小病院には高い壁だが、経験の合算など原典の助け舟がある。✅
- 1,000点は単独で立たない。イ(リハ)×ウ(栄養 or 薬剤管理指導)のセット算定が条件。検査主目的では不可。✅
- 「教える義務」(地域研修会)が、病院を地域心不全診療のハブに変える。急性期が主催・実施し、かかりつけ医が参加する――点数の裏にある最大の価値。✅
- DPCでも出来高。令和8年原典(包括範囲表)で確定。“増収”ではなく“適正評価”。✅
心不全のリレーは、急性期が良いバトン(GDMTの導入と多職種管理)を渡し、地域が受け取り、再増悪すればまた急性期へ――と循環します。管理料1は、その第一走者である急性期病院に与えられた、評価であり、責任です。
“取れる病院”になることは、単に10,000円を積むこと以上の意味を持ちます。それは、自院を地域の心不全ネットワークの中心に据えるということ。設計図は、もうあなたの手の中にあります。
本記事の一次資料(ファクトチェックの拠り所)
- 点数・注:診療報酬の算定方法(令和8年厚生労働省告示第69号)医科点数表 B001-10
- 施設基準:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて(保医発0305第8号)第7の3
- 算定要件:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(保医発0305第6号)B001-10
- 疑義解釈(逐語照合済み):その2(問54・55・56・57・58・70)/その5(問7・問8・問9・問10)/その6(問16)/その8(問6・問7)/その9(問4・問5)
- DPC:令和8年度診療報酬改定の概要入院(DPC/PDPS)(厚生労働省保険局医療課)p.11「DPC/PDPSの包括範囲」
※本記事は2026年(令和8年)度診療報酬改定時点の情報に基づきます。算定の最終判断は、必ず最新の通知・疑義解釈および自院の審査支払機関・DPC事務担当にご確認ください。















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