PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33853998/
タイトル:Clinical Characteristics and Outcomes of Hospitalized Patients With Heart Failure From the Large-Scale Japanese Registry Of Acute Decompensated Heart Failure (JROADHF)
<概要(意訳)>
背景:
人口の高齢化に伴い、心不全(HF)の有病率と発症率は世界中で増加している。
しかしながら、高齢化時代の日本におけるHF患者の臨床的特徴と転帰は十分に調査されていない。
方法:
JROAD HF研究(多施設共同後向き観察研究、2013年にJROAD-DPCに登録された心不全入院患者13,238例を対象)において、日本の急性心不全患者の臨床的特徴と転帰を調査した。
Circ J. 2021 Apr 15. doi: 10.1253/circj. CJ-20-0947.
結果:
クラスターランダムサンプリングにより、全国128施設の病院が選択され、13,238例の心不全入院患者が特定された。
登録された患者の平均年齢は78.0±12.5歳、52.8%は男性であった。
女性(80.8±11.3歳)は男性(74.0±12.8歳)より高齢であった(p<0.001)。
心不全入院の主な病因は、「虚血性心疾患:26.7%、心臓弁膜症:18.5%[僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症):37.0%、大動脈弁狭窄症:36.0%、その他:27.0%]、不整脈:17.3%、高血圧:16.5%、心筋症:12.4%」であった。
34.7%は心不全入院の既往があった。
併存疾患は、「高血圧:71.2%、心臓弁膜症:35.3%[僧帽弁閉鎖不全症:46.4%、大動脈弁狭窄症:25.3%、その他:28.3%)、糖尿病:34.3%、脂質異常症:30.1%、CKD:38.9%、貧血:21.2%、脳卒中:13.7%、COPD:6.4%」であった。
HFrEF(LVEF<40%)、HFmrEF(LVEF 40–49%)、HFpEF(LVEF≥50%)の患者割合は、それぞれ、37.4%、17.5%、45.1%であった。
退院時に処方された薬剤は、それぞれ、利尿薬(90.1%)、ACE阻害薬またはARB(65.9%)、β遮断薬(63.8%)、MRA(50.9%)であった。
入院期間の中央値は、18(IQR 12-28)日であった。
院内死亡率は7.7%であり、その内訳は、心血管死(6.0%)、非心血管死(1.7%)であった。
心血管死の内訳は、「心不全(5.1%)、不整脈(0.4%)、心筋梗塞(0.3%)、脳卒中(0.1%)、その他(0.2%)」であった。
非心血管死の内訳は、「肺炎(0.7%)、悪性腫瘍(0.2%)、その他(0.7%)」であった。
退院後、11,120例の長期転帰を調査した。
追跡期間の中央値は、4.3(IQR 3.8-4.7)年であった。
フォローアップ率は、退院後1年で92%、3年で84%であった。
イベント発生率(100人/年)は、心血管死または心不全入院(24.1)、心血管死(7.1)、心不全の再入院(21.1)、全死亡(14.9)であった。
退院後の無イベント生存率(EFS)は、心血管死または心不全入院[46.2%(IQR 45.1–47.2%)]、心血管死[75.9%(IQR 75.0–76.8%)]、心不全の再入院[51.6%(IQR 50.5–52.7)]、全死亡[55.7%(IQR 54.7–56.7%)]であった。
※Fig3のA(心血管死)、D(全死亡)は逆の可能性あり。
Circ J. 2021 Apr 15. doi: 10.1253/circj. CJ-20-0947.
結論:
JROADHF研究は、日本の他の心不全レジストリと比較して、より高齢(75歳超え68.9%)で、より女性(47.2%)が多く、HFpEF(45.1%)が増加していた。
不整脈または心臓弁膜症によって引き起こされる心不全の発症率は、心不全患者の加齢により増加する可能性がある。
これらの知見は、効果的かつ効率的に将来の心不全管理の発展に寄与するだろう。
Circ J. 2021 Apr 15. doi: 10.1253/circj. CJ-20-0947.