CVRDのない日本人2型糖尿病患者の心腎リスク比較_SGLT2阻害薬 vs その他



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33835641/ 

タイトル:Lower heart failure and chronic kidney disease risks associated with sodium-glucose cotransporter-2 inhibitor use in Japanese type 2 diabetes patients without established cardiovascular and renal diseases

<概要(意訳)>

背景:

日本の糖尿病治療ガイドラインは、2型糖尿病患者に特定の薬剤を推奨しない代わりに、患者背景と臨床状態に基づいて治療法を選択することを推奨している。

本研究では、医療費請求データを利用して、2,500万人以上のCVRD(心血管腎疾患)の既往がない日本人2型糖尿病患者において、SGLT2阻害薬が他の糖尿病治療薬、またはDPP-4阻害薬と比較して、心腎疾患リスクを低下させるかを調査した。

方法:

診療データベースのメディカル・データ・ビジョン(mdv)を使用して観察コホート研究を実施した。

2014年4月1日~2018年9月30日の間に、CVRD(心血管腎疾患)を含まない2型糖尿病患者(合計609,862例)を特定した。

 

「SGLT2阻害薬およびDPP-4阻害薬」、「SGLT2阻害薬および他の糖尿病治療薬(DPP-4阻害薬を含む)」の新規治療患者を傾向スコアマッチング法(1:1 caliper matching)を使用して、それぞれ、「心腎疾患(HFおよび/またはCKD)、HF、CKD、脳卒中、心筋梗塞(MI)、全死亡」のハザード比(HR)を算出した。

結果:

全ての変数の標準化差は5%未満であり、各グループのベースライン特性は同様であった。

「SGLT2阻害薬vs 他の糖尿病治療薬(oGLD)[各n=54,181]」グループと「SGLT2阻害薬vs DPP-4阻害薬[各n=17,232]」グループの平均追跡期間は、それぞれ、1.50年(162,970例/年)と1.48年(51 ,083例/年)であった。

 

SGLT2阻害薬では、6つの異なる薬剤が使用されており、エンパグリフロジン(25.0%)とダパグリフロジン(22.3%)が多く占めていた。

他の糖尿病治療薬(oGLD)では、「メトホルミン(17.0%)、DPP-4阻害薬(19.1%)、SU薬(11.7%)、チアゾリジン薬(14.2%)、グリニド薬(7.0%)、α-グルコシダーゼ阻害薬(9.5%)、GLP-1受容体作動薬(4.8%)、インスリン(16.7%)」が使用されていた。

DPP-4阻害薬では、9つの異なる薬剤が使用されていた。

 

他の糖尿病治療薬(oGLD)と比較した、SGLT2阻害薬の心血管転帰のハザード比は、それぞれ、

心腎疾患(HFおよび/またはCKD):HR 0.55(95%CI 0.49-0.61)、p<0.001

HF:HR 0.55(95%CI 0.49-0.61)、p<0.001

CKD:HR 0.73(95%CI 0.61-0.87)、p<0.001

脳卒中:HR 0.45(95%CI 0.39-0.52)、p<0.001

心筋梗塞(MI):HR 1.00(95%CI 0.72-1.40)、p=0.980

全死亡:HR 0.52(95%CI 0.46-0.58)、p<0.001

となり、心筋梗塞を除き、SGLT2阻害薬で大きなリスク低下が示された。

 

サブグループ分析では、年齢[65歳≧:HR 0.73(95%CI 0.62-0.86)、65歳<:HR 0.46(95%CI 0.39-0.53)、交互p<0.001]と、ACE阻害薬およびARBを含むRAAS阻害薬[あり:HR 0.50(95%CI 0.44-0.58)なし:HR 0.65(95%CI 0.54-0.78)、交互p=0.034]の使用において、「心腎疾患」リスクの有意な交互作用が認められた。

 

DPP-4阻害薬と比較した、SGLT2阻害薬の心血管転帰のハザード比は、それぞれ、

心腎疾患(HFおよび/またはCKD):HR 0.45(95%CI 0.37-0.55)、p<0.001

HF:HR 0.86(95%CI 0.63-1.18)、p=0.342

CKD:HR 0.29(95%CI 0.22-0.38)、p<0.001

脳卒中:HR 0.54(95%CI 0.40-0.73)、p<0.001

心筋梗塞(MI):HR 1.97(95%CI 0.95-4.06)、p=0.067

全死亡:HR 0.64(95%CI 0.51-0.80)、p<0.001

となり、心不全と心筋梗塞を除き、SGLT2阻害薬で大きなリスク低下が示された。

 

サブグループ分析では、年齢[65歳≧:HR 0.68(95%CI 0.51-0.92)、65歳<:HR 0.34(95%CI 0.26-0.45)、交互p<0.001]と、ACE阻害薬およびARBを含むRAAS阻害薬[あり:HR 0.32(95%CI 0.24-0.42)なし:HR 0.68(95%CI 0.51-0.90)、交互p<0.001]の使用において、「心腎疾患」リスクの有意な交互作用が認められた。

Diabetes Obes Metab. 2021 Apr;23 Suppl 2:19-27.

結論:

実臨床において、CVRD(心血管腎疾患)の既往がない日本人2型糖尿病患者は、他の糖尿病治療薬(メトホルミン、DPP-4阻害薬、SU薬、チアゾリジン薬、グリニド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、GLP-1受容体作動薬、インスリン)と比較して、SGLT2阻害薬で治療を開始する方が、「心腎疾患、脳卒中、全死亡」のリスクが低いことが示された。

ゆえに、1次予防の2型糖尿病患者に対する早期のSGLT2阻害薬の治療介入は、有用であることが示唆された。

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