HFrEF患者に対する心不全標準治療薬の使用実態



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36202739/ 

タイトル:Heart Failure Drug Treatment-Inertia, Titration, and Discontinuation: A Multinational Observational Study (EVOLUTION HF)

<概要(意訳)>

背景:

ガイドラインは、HFrEF患者の死亡率/再入院を減らすために、複数の標準的心不全治療(GDMT)の早期開始を推奨している。

GDMTの使用実態を理解することは、より良い臨床診療に重要である。

本研究では、日本、スウェーデン、米国におけるGDMTの使用実態を調査した。

方法:

EVOLUTION HF(観察コホート研究)には、心不全による退院から12ヶ月以内にGDMTを開始した患者を含めた。

GDMTは、SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン)、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬(ARNI)、ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)が該当する。

各GDMTの用量と服薬中止の状況は、フォロー開始から12ヶ月間で評価した。

目標用量の定義は、ガイドライン推奨用量の100%以上とした。

結果:

全体で266,589例(日本:130,243例、スウェーデン:26,394例、米国:109,952例)の患者が含まれていた。

 

心不全入院からGDMTによる治療開始までの平均時間は、それぞれ[新規GDMT(SGLT2阻害薬、ARNI)vs その他GDMT ]、

日本:39~44日 vs 12~13日

スウェーデン:33~44日 vs 22~31日

米国:19~33日 vs 18~24日

となり、新規GDMTの治療開始までの平均時間は、その他GDMTよりも長かった。

 

3ヶ国全体における12ヶ月以内のGDMT治療の中断率(ACE阻害薬またはARBからARNIへの切り替えは含まない)は、それぞれ、

SGLT2阻害薬:23.5%

ARNI:26.4%

ACE阻害薬:38.4%

ARB:33.4%

β遮断薬:25.2%

MRA:42.2%

であった。

 

ガイドライン推奨用量を達成したGDMTの達成率は、それぞれ、

SGLT2阻害薬:75.7%

ARNI:28.2%

ACE阻害薬:20.1%

ARB:6.7%

β遮断薬:7.2%

MRA:5.1%

であった。

JACC Heart Fail. 2022 Sep 7;S2213-1779(22)00508-X.

結論:

新規の心不全標準治療薬(SGLT2阻害薬、ARNI)は、他の薬剤よりも治療導入が遅れていた。

ガイドラインの推奨用量まで心不全標準治療薬を漸増された患者は、殆どいなかった。

SGLT2阻害薬の服薬中断率は、他の薬剤よりも高かった。

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