SGLT2阻害薬と他血糖降下薬の急性腎障害リスクの比較



PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32464161/ 

タイトル:Acute Kidney Injury Events in Patients With Type 2 Diabetes Using SGLT2 Inhibitors Versus Other Glucose-Lowering Drugs: A Retrospective Cohort Study

<概要(意訳)>

背景:

SGLT2阻害薬は、慢性腎臓病の進行を遅らせ、心不全イベントを予防する。

しかしながら、急性腎障害(AKI)のリスクを増加させる可能性がある。

本研究では、SGLT2阻害薬は、他の全ての血糖降下薬(oGLD)と比較して、AKIのリスクを増加させるかどうかを評価した。

方法:

世界6カ国 (オーストラリア、カナダ、イスラエル、日本、シンガポール、韓国)の40万例超の2型糖尿病患者を対象としたCVD-REAL 2研究(後ろ向き観察研究)に参加した、カナダのマニトバ州における18歳以上の2型糖尿病患者を対象とした。

2014年6月9日~2017年3月31日の間に、新規でSGLT2阻害薬または他の糖尿病治療薬が処方された2型糖尿病患者のAKI発症リスクを傾向スコアマッチング法により、SGLT2阻害薬群と他の糖尿病治療薬群で比較した。

主要評価項目は、KDIGO分類のAKI定義を満たす血清クレアチニンの増加を示した検査データ、あるいはAKIの診断コード(ICD-9: 584.x、ICD-10: N19)を複合したAKI発症リスクとした。

Am J kidney Dis. 2020 Oct; 76(4): 471-479. e1.

結果:

on treatment解析において、年間で117件のAKIが7,745例の2型糖尿病患者の治療中に発症した。

SGLT2阻害薬群(4,226例)と他の糖尿病治療薬群(3,519例)の平均追跡期間は、それぞれ、0.9±0.7年と0.7±0.6年であった。

117件のAKIの内訳は、SGLT2阻害薬群で47件、他の糖尿病治療薬群で70件であった。

SGLT2阻害薬群のAKI発症(100人/年)は、他の糖尿病治療薬群と比較して、低いことが観察された[1.11(95% CI, 0.79-1.43) vs 1.99(95% CI, 1.52-2.46)]。

これらのAKI発症のほとんどは、薬剤の投与開始≧90日に発生していた。

Am J kidney Dis. 2020 Oct; 76(4): 471-479. e1.

SGLT2阻害薬群のAKI発症リスクは、他の糖尿病治療薬群と比較して、差がないこと(増加傾向ではなく、むしろ低下傾向)が観察された[HR 0.64(95% CI, 0.40-1.03)、p=0.06]。

また、RAS系阻害剤(p=0.9)、または利尿薬(p=0.8)の使用による、AKI発症リスクの影響は示されなかった。

Am J kidney Dis. 2020 Oct; 76(4): 471-479. e1.

結論:

SGLT2阻害薬による2型糖尿病の治療は、急性腎障害(AKI)のリスクを増加させないことが示され、大規模臨床試験や観察研究で実証しているSGLT2阻害薬の腎保護効果を補完するだろう。

副作用を懸念してSGLT2阻害薬を回避することは、心腎保護の長期的ベネフィットを失うリスクとなることが示唆される。

Am J kidney Dis. 2020 Oct; 76(4): 471-479. e1.

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