PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33081531/
タイトル:Effect of Empagliflozin on the Clinical Stability of Patients With Heart Failure and a Reduced Ejection Fraction: The EMPEROR-Reduced Trial
<概要(意訳)>
背景:
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)は、糖尿病の有無に関わらず、駆出率の低下した心不全(HFrEF)患者の心血管死または心不全による入院リスクを軽減する。
しかしながら、入院患者および外来患者の心不全の悪化を反映するイベントに対する薬剤の効果については、追加のデータが必要である。
方法:
心不全患者3,730例(NYHA分類Ⅱ~Ⅳ度、EF≦40%)に、心不全の推奨治療に加えて、プラセボまたはSGLT2阻害薬(エンパグリフロジン10㎎/日)を無作為に割り付けた(中央値16ヶ月)。
心不全の悪化を反映した入院患者と外来患者のイベントに関する情報を前向きに収集し、個々のエンドポイントと複合エンドポイントにおける分析を事前に指定した。
結果:
20ヶ国の520施設で3,730例の心不全患者が、プラセボ(n=1,867)またはエンパグリフロジン(n=1,863)に無作為に割り付けられた。
各群のベースライン特性は、バランスがとれていた。
「全ての原因による死亡(全死亡)または心不全による入院」イベントは、それぞれ、
プラセボ群で、512例(23.3/100人・年)
SGLT2阻害薬群で、407例(17.8/100人・年)
となり、エンパグリフロジン治療により24%のリスク低下が示された[HR 0.76(95%CI 0.67-0.87); p<0.0001]。
「全ての原因による死亡(全死亡)または心血管系による入院」イベントは、それぞれ、
プラセボ群で、674例(33.4/100人・年)
SGLT2阻害薬群で、556例(26.1/100人・年)
となり、エンパグリフロジン治療により22%のリスク低下が示された[HR 0.78(95%CI 0.70-0.87); p<0.0001]。
「全ての原因による死亡(全死亡)または全ての入院」イベントは、それぞれ、
プラセボ群で、860例(47.3/100人・年)
SGLT2阻害薬群で、743例(38.4/100人・年)
となり、エンパグリフロジン治療により19%のリスク低下が示された[HR 0.81(95%CI 0.74-0.90); p<0.0001]。
「昇圧剤または陽性変力薬または機械的または外科的介入を必要とする初発の心不全による入院」イベントは、それぞれ、
プラセボ群で、120例(5.0/100人・年)
SGLT2阻害薬群で、91例(3.8/100人・年)
となり、エンパグリフロジン治療により25%のリスク低下が示された[HR 0.75(95%CI 0.57-0.98); p=0.03]。
また、これらのイベント総数では、36%のリスク低下が示された[HR 0.64(95%CI 0.47-0.87); p=0.005]。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):326-336.
「CCU(冠疾患集中治療室)/ICU(集中治療室)を必要とする初発の心不全による入院」イベントは、それぞれ、
プラセボ群で、139例(5.7/100人・年)
SGLT2阻害薬群で、89例(3.7/100人・年)
となり、エンパグリフロジン治療により35%のリスク低下が示された[HR 0.65(95%CI 0.50-0.85); p=0.002]。
また、これらのイベント総数では、33%のリスク低下が示された[HR 0.67(95%CI 0.50-0.90); p=0.008]。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):326-336.
「全ての原因による死亡(全死亡)、心不全による入院、または心不全悪化による緊急治療(昇圧剤または陽性変力薬または機械的または外科的介入による緊急治療を必要とした心不全)」イベントは、それぞれ、
プラセボ群で、519例(23.7/100人・年)
SGLT2阻害薬群で、415例(18.2/100人・年)
となり、エンパグリフロジン治療により35%のリスク低下が示された[HR 0.76(95%CI 0.67-0.87); p<0.0001]。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):326-336.
また、エンパグリフロジン治療による、「割り付け後40日間における初発の全ての原因による死亡(全死亡)、心不全による入院、または心不全悪化による緊急治療」イベントのリスク低下は、
12日目[HR 0.42 (95% CI 0.19-0.92);p=0.029]で認められ、
34日目[HR 0.67 (95% CI 0.44-1.00);p=0.048]以降も持続していることが示された。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):326-336.
エンパグリフロジン治療により、心不全の重症度(NYHA分類)を改善する可能性は20%~40%高くなり、悪化する可能性は20%~40%低くなった。
無作為化28日後に、統計的有意性が示され52週間維持していた。
NT-proBNPは、プラセボと比較して、4週間後にわずかな減少し、その差は時間経過とともに増加を示した。
Circulation. 2021 Jan 26;143(4):326-336.
結論:
SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)は、駆出率が低下した心不全(HFrEF)の入院と外来患者における心不全イベントとそのリスクを低下する効果が治療開始早期に認められ、その効果は長期にわたり持続していることが示された。