PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32106929/
タイトル:N-terminal Pro B-type Natriuretic Peptide and High-sensitivity Cardiac Troponin as Markers for Heart Failure and Cardiovascular Disease Risks According to Glucose Status (From the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis [MESA])
<概要(意訳)>
背景:
耐糖能異常(pre-DM:空腹時血糖値100-125mg/dL)と糖尿病(DM:インスリン、経口血糖降下薬の使用、または空腹時血糖値126 mg / dL以上)を罹患した場合の心不全(HF)と心血管疾患(CVD)イベント予測に対するNT-proBNPとhs-cTnT(高感度トロポニンT)の範囲は十分に確立されていない。
方法:
アテローム性動脈硬化症の多民族研究(MESA study)に登録されている、45〜84歳のNT-proBNPとhs-cTnTの測定値を持つ5,584人の内、4,090人は正常血糖、799人は耐糖能異常、695人は登録時にDMを罹患しており、12.4±3.8年の間、フォローアップした。
結果:
NT-proBNPの四分位は、Q1:4.90-24.11、 Q2:25.16-54.61、 Q3:56.30-112.60、Q4:116.70-794.00であった。 hs-cTnTの四分位は、Q1:2.99-2.99、 Q2:2.99-4.47、 Q3:4.57-7.59、Q4:7.78-34.64であった。
DM患者における1,000人/年あたりのHFイベントは、NT-proBNPの四分位範囲で、3.2〜24.9(Q1:3.2、Q2:4.6、Q3:9,7、Q4:24.9)、hs-cTnTの四分位範囲で、0.6〜18.2(Q1:0.6、Q2:5.8、Q3:5.2、Q4:18.2)であった。
DM患者における1,000人/年あたりのCVDイベントは、NT-proBNPの四分位範囲で、13.7〜39.4(Q1:13.7、Q2:19.5、Q3:20.6、Q4:39.4)、hs-cTnTの四分位範囲で、13.2〜35.4(Q1:13.2、Q2:12.5、Q3:19.9、Q4:35.4)であった。
耐糖能異常/ 糖尿病における1,000人/年あたりのHFとCVDイベントともに、NT-proBNPとhs-cTnTの中央値(前者:54.6 pg/mL、後者:4.5 pg/mL)よりも上の範囲にある場合が、多変量調整ハザード比(HR:NT-proBNPとhs-cTnTの中央値よりも下の範囲にある場合を1とする)は最高となった[HFのHR:16.70 (5.05 − 55.30) (p <0.01)、CVDのHR:2.10 (1.40 − 3.14) (p <0.01)]。
結論:
正常血糖(空腹時血糖値100 mg/dL未満)、耐糖能異常、糖尿病の被験者に、従来の危険因子バイオマーカーであるNT-proBNPとhs-cTnTを組み合わせることで、多民族集団における心不全(HF)と心血管疾患(CVD)イベントリスクの予測が改善した。
【参考情報】心筋障害マーカー、炎症性マーカー
急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)P20-21
https://www.j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2017_tsutsui_h.pdf