PubMed URL:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32636061/
タイトル:Clinical analysis of risk factors for severe COVID-19 patients with type 2 diabetes
<概要(意訳)>
背景:
2型糖尿病合併COVID-19患者の臨床的特徴と糖尿病集団における重症COVID-19患者の危険因子を分析する研究は限られている。
本研究では、武漢大学中南病院に入院した2型糖尿病合併COVID-19患者の臨床的特徴と糖尿病集団における重症COVID-19患者の危険因子を分析した。
方法:
2020年1月3日から4月14日までに、武漢大学中南病院に入院し、退院または死亡した2型糖尿病合併COVID-19患者74例における、人口統計、合併症、症状、検査所見、治療、転帰の情報を収集し分析した。
結果:
全体における年齢の中央値は、62(四分位範囲[IQR] 58–81)歳であり、男性は36例(48.6%)で、女性は38例(51.4%)であった。
合計74例の内、55例(74.3%)は、糖尿病以外に少なくとも1つの慢性疾患を合併しており、最も一般的な3疾患は、高血圧(47.3%)、冠動脈心疾患(17.6%)、続発性肺結核(16.2%)であった。
臨床症状では、発熱(77.0%)、呼吸器疾患(70.3%:咳、胸部圧迫感、または呼吸困難感等)、消化器症状(28.4%:吐き気、下痢、腹痛)と倦怠感(24.3%)が一般的であった。
合計74例の内、27例(36.5%)は重症であり、10例(13.5%)は死亡した。
重症COVID-19患者の年齢の中央値72(58–81)歳であり、18例(66.7%)は男性であった。
糖尿病以外の合併症有病率は、重症COVID-19患者の方が非重症患者より多い傾向にあった[22例(81.5%)vs 33例(70.2%)、 p=0.285]。
冠動脈疾患の有病率は、重症COVID-19患者の方が非重症患者より多く[8例(29.6%)vs 5例(10.6%)、p=0.042]、冠動脈疾患を併発する2型糖尿病患者は、COVID-19感染が重症化しやすいことが示唆される。
高血圧の有病率は、非重症患者と重症COVID-19患者で差はなかった[15例(55.6%)vs 20例(42.6%)、p=0.281)]。
合計74例の内、過体重症例(BMI≧23)は58例(78.4%)で、重症群と非重症群の間に差はなかった[20例(74.1%)vs 38例(80.9%)、p=0.495]。
空腹時血糖値(FBG)、血清アミロイドA(SAA)、高感度CRP、インターロイキン-6(IL6)、好中球絶対数(ANC)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、血清シスタチンC、eGFR、β2-マイクログロブリン、クレアチンキナーゼMB分画蛋白(CK-MB)、高感度心筋トロポニンI(hsTnI)、乳酸脱水素酵素(LDH)、D-ダイマーのレベルは、重症COVID-19患者の方が非重症患者より有意に高かった(p<0.05)。
一方で、アルブミン、コレステロール、HDL、超悪玉コレステロール(sd-LDL)、CD4 +リンパ球数、リンパ球絶対数のレベルは、重症COVID-19患者の方が非重症患者より有意に低かった(p<0.05)。
さらに、尿検査による、尿蛋白、尿糖、尿ケトンの陽性率は、重症COVID-19患者の方が非重症患者より有意に高かった(p<0.05)。
ロジスティック回帰分析により、CD4 +リンパ球数(CD4)の減少[オッズ比(OR)=0.988、95%信頼区間(95%CI)0.979–0.997]、および血清アミロイドA蛋白(SAA)レベルの増加[OR=1.029、(95%CI)1.002–1.058)]は、2型糖尿病合併COVID-19患者の重症化危険因子として特定された(p<0.05)。
結論:
糖尿病患者は、COVID-19に対する感受性が高く、高齢(年齢中央値72歳)や冠動脈疾患を合併する場合、重症化する可能性が高いことが示唆された。
高血糖と脂質異常症は、ウイルスに対する感受性の向上、および免疫力の低下に関連しているかもしれない。
重症化の危険因子であるCD4(CD4 +リンパ球数)の減少とSAA(血清アミロイドA蛋白)が上昇した2型糖尿病合併COVID-19患者には、より厳格な血糖管理や栄養補給などの積極的な治療が推奨されるだろう。
【参考情報】
血清アミロイドA蛋白 (SAA)の臨床意義
https://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/011790702
CD4 陽性 T リンパ球数(CD4)の臨床意義